(遂にやってしまった。遂に僕はAランクアーティファクトを召喚出来るまでに――)

 わなわなと体を震わせるアーサーは感動している。少し前の自分からは全く想像できない現状に。そして自分の偉業を他でもない自分自身が1番感極まり、アーサーは天を向きながら涙を流す。

「何故泣いてるのですかアーサー」
「ゔゔ……自分に起きてる事が未だに信じられなくて……」
「よしよしアーサー様。モルナが慰めてあげるね。頑張ったねぇ☆」

 どさくさに紛れてモルナの胸に顔を埋めるアーサー。勿論これはモルナがアーサーの頭を撫でる為に勝手に取った行動。しかしアーサーにしてみれば予定外の“ラッキー”展開。

 アーサーは「やめろ……!」と恥ずかしそうにモルナを離そうとするが、その言葉とは裏腹に、引き離そうとする腕にはそれほど力が込められていなかった。

「なぁ、それって何回でも出来るのか?」

 アーサーがわちゃわちゃしているのをガン無視し、グリムが淡々と話を進める。

「あ、はい! 一応回数には上限があって、1日に召喚出来る回数が決まってます」
「へぇ。それ何回?」
「えーと、今ででは30回だったんですけど……」
「は!? 今の反則技が日に30回! どんなスキルだよマジで」

 やはりグリム程のハンターでもアーサーのスキルは特殊なのか、食い気味に反応をしてみせる。

「ハハハ……ありがとうございます。でも今レベルが上がったんで多分上限の回数が増えてると」
「おいおい、マジかよ。見せてみろ」

 そう言ってグリムがアーサーのステータスを確認する。


====================

アーサー・リルガーデン

【スキル】召喚士(A): Lv40
・アーティファクト召喚(39/35+5)
・ランクアップ召喚(9/10)
・スキルP:82,017

【サブスキル】
・召喚士の心得(召喚回数+5)

【装備アーティファクト】
・スロット1:『エルフソード(B):Lv3』
・スロット2:『エルフの草冠(B):Lv3』
・スロット3:『エルフの羽(B):Lv3』
・スロット4:『エルフの腕輪(B):Lv3』
・スロット5:『エルフアンクル(B):Lv3』

【能力値】
・ATK:15『+5200』
・DEF:18『+2600』
・SPD:21『+2600』
・MP:25『+2600』

====================


「この上限ってのが可能回数か?」
「はい。今1回使いましたけど、やっぱ上限が40回までに増えてます」
「こっちのランクアップ召喚ってのはなんだ?」
「これはアーティファクトのランクを上げられる召喚です」
「「――!?」」

 アーサーが放ったその一言に、グリムとマリアの目つきが明らかに変わった。

「成程……。これがバアさんが言っていた召喚スキルの真髄か」
「アーティファクトを召喚するだけでも前代未聞なのにまさかランクまであげられるなんてねぇ」

 一瞬で雰囲気が変わったグリムとマリア。場に緊張感が漂い、アーサーも何事かと少し困惑気味だ。

「あの……何かマズい事言いましたかね僕……?」

 アーサーがバツの悪そうな顔をしていると、直後グリムが肩に腕を回してグッと自分の方へとアーサーを引寄せた。

「俺のアーティファクトでもやってみてくれ」
「あ、え? はい、全然いいですけど……」

 突然のグリムの申し出に何故か一瞬「殺される」と勘違いしたアーサー。グリムの目つきが悪いせいもあるが、反射的にそんな事を思ってしまったアーサーはただただグリムに申し訳ないなと思うのであった。

「どれなら出来るんだ?」

 そう言いながらグリムは自分のステータスをアーサーに見せる。


====================

グリム・セントウキョー

【スキル】剣士(A):Lv82
・剣術(ランク:上級 剣装備時ATK+30%)
・剣の領域(自分の半径5m以内は全能力値+20%)
・剣鬼乱舞
・狂人斬り
・スキルP:650,000

【サブスキル】
・剣豪の風格(剣術スキルのランクが上がりやすくなる)
・二刀流(二刀流時ATK+10%)
・狂人・極(本物の狂人の証。狂う程に全能力値アップ)

【アーティファクト】
・スロット1:『ドラゴンバスター(A):Lv5』
・スロット2:『エルフの草冠(B):Lv9』
・スロット3:『金剛力士の鎧(A):Lv4』
・スロット4:『獣王の牙剣(A):Lv5』
・スロット5:『エルフアンクル(B):Lv9』

【能力値】
・ATK:38,000『+19000』
・DEF:29,000『+9000』
・SPD:32,000『+3800』
・MP:17,000『+3800』

====================


「何ですかこのでたらめなレベルと能力値はッ!? あなたまさかモンスターッ!?」
「殺すぞテメェ」

 グリムの強さは嫌と言う程このフロアで見せつけられていたアーサー。しかし、そんなアーサーの想定の遥か上をいく異次元なグリムの能力値。それは思わずグリムを人間ではなくモンスターではないのかと思ってしまうぐらいの恐ろしい能力値であった。

「う、う、う、う、嘘ですよね……こんなステータス……。(シェリルでさえ化け物染みた能力値だったのに、更に上を行ってるなんて有り得ない。何ですかこの桁。見た事ないんだけど僕――!)」
「うは~凄いねグリム! 見た目が悪いだけじゃなかったんだね☆」
「成程。これだけのレベル差があれば仕方ないですね。これはフェアではありません。私が同じレベルなら勝っていました」
「お前らいい加減にしろよ」

 アーサー、シェリル、モルナが好き放題言っていると、グリムから鋭い殺気が飛ばされた。いちいち話が逸れる事に苛立つグリムはアーサーに一睨み。するとそれを受けたアーサーが直ぐにアーティファクトの話へと戻すのだった。

「大丈夫です! どのアーティファクトでもレベルアップ出来ます! ランクアップも出来ます! 多分!」

 そう元気に返事をしたアーサーはそのまま早速召喚の準備に入る。

「ランクアップ召喚ってのはアーティファクトのランクを上げられると言ったな。なら俺のAランクを更に上の“Sランク”にしてくれ」
「「――!?」」