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~ダンジョン・フロア79~

 バットが水面下で暗躍する一方、アーサー達もまた変化を見せる。

「“剣鬼乱舞”――」

 ――キィン。
 グリムがスッと剣を鞘に納める。
 するとほぼ同時、ここフロア79に出現していたボス「ハイベヒーモス」の大きな頭部が地面にベチャりと転がり落ちた。

「うし。じゃあ上のフロア行くか」
「ハイベヒーモスも一撃で!? もう意味分かんないだけど!」

 アーサー達が天Bランクに上がったのはほんの小一時間前のお話。
 それなのにもう天Bランクのフロア70~79を攻略し、たった今最後のボスであるハイベヒーモスを倒してしまったアーサー達。いや……正確には全て1人で片付けてしまったのがグリム。というのが正しいだろう。

「モルナ、最終的な数は?」
「はいはい! 今倒したハイベヒーモスを入れてグリムの討伐数は“1200”体! 一方のシェリルの討伐数は21体! その差1,179体でグリムの圧倒的勝利☆」
「ハーハッハッ! まぁ当然の結果だな。もっと腕を磨けシェリル!」
「非常に悔しいです……!」
「シェリル達はシェリル達で何をしてるんだよ全く……」

 アーサーはフロア70~79の道中で何もしていない――。

 何もしていないのに天Bランクの全フロア攻略が完了した。
 そんなアーサーはこのフロアのモンスターの強さと出現数にひたすら圧倒され続け、更にそのモンスターをゴミのように狩るグリムの異常な強さにも圧倒され続け、極めつけはいつからか始まったグリムとシェリルによる“モンスター狩り大会”に終始圧倒され続けた。

 そのお陰か、何もしていないアーサーは今誰よりも疲れ切った顔をしている。

「おいアーサー、スキルPどれだけ溜まった?」
「スキルPですか? えーと……え!? なんか一気に120,000P超えてるんだけど! なんじゃこれ!」

 破格のスキルP獲得に思わず声が大きくなるアーサー。だが素っ頓狂な声を出して驚いているのも最早アーサーだけであった。

「なんだそんなもんか」
「今回は5人だから5等分だね。つまりフロア70~79のトータルは600,000Pを超える獲得か☆ グリムとシェリルの討伐したモンスターの総数は1221体だから、平均すると1体500Pぐらい稼げてるね! やっぱ凄いねフロア70は!」
「流石会計士のモルナちゃん、計算が早いわね」
「スキルPよりもう一勝負したいのですが」

 全員が各々通常運転。驚いている自分が可笑しいのかと疑いたくなる現状に、アーサーは1人取り残された気分になっている。

「チマチマした計算はよく分からねぇけどよ、結局それでどれだけお前のレベル上げれるかやってみろよ」
「あ、分かりました……!」

 グリムに促されたアーサーが早速溜まったポイントでスキルレベルを上げる。


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アーサー・リルガーデン

【スキル】召喚士(B): Lv38
・アーティファクト召喚(30/25+5)
・ランクアップ召喚(10/10)
・スキルP:120,017

【サブスキル】
・召喚士の心得(召喚回数+5)

【装備アーティファクト】
・スロット1:『エルフソード(B):Lv3』
・スロット2:『エルフの草冠(B):Lv3』
・スロット3:『エルフの羽(B):Lv3』
・スロット4:『エルフの腕輪(B):Lv3』
・スロット5:『エルフアンクル(B):Lv3』

【能力値】
・ATK:15『+5200』
・DEF:18『+2600』
・SPD:21『+2600』
・MP:25『+2600』

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「なんだこのカスな能力値は」
「うわ!? ちょ、ちょっと急に見ないで下さいよ!」

 アーサーがウォッチでステータスを確認していると、そんなアーサーのステータスを覗き込む様に見たグリム。彼はアーサーの能力値を見て鼻で笑うのだった。

「お前その力なかったら余裕で死んでるな。つうかこの低さダンジョン立入禁止だろ。よく生きてたな。アーティファクト様々じゃねぇか」
「それは自分が1番身に染みてますよ……。そこまでハッキリ言われると傷つくんですけど」

 アーサーはそんな愚痴を零しながらも、スキルPを割り振ってレベルを上げる。

『スキルPを18,000使用。召喚士Lv39になりました』

 いつも通りにレベルが上がる。そしてアーサーは立て続けにレベルアップ。今まで通りのパターンならLv40で変化が起こる筈。

 アーサーが狙うのは勿論……。

『スキルPを20,000使用。召喚士Lv40になりました。上限に達しましたので、召喚士ランクがBから“A”にアップします。
ランクアップ召喚の可能ランクがBランクから“Aランク”にアップとなります』

 何度聞いても全身に鳥肌が立つ無機質の祝福――。
 アーサーが両手でガッツポーズをすると同時に、皆の気持ちも高揚する。

「成功か? これで本当にAランクアーティファクトをレベルアップ出来るんだろうな」
「大丈夫です。アーサーの召喚スキルに間違いはありません」
「やったねアーサー様☆」
「噂には聞いていたけど、やっぱり実物を見てみたいわね」

 アーティファクト召喚をもう知っているシェリルとモルナは確信していたが、まだアーサーのそのスキルを見た事がないグリムとマリアは半信半疑の様子。

「分かりました。僕も本当にAランクが出来るかどうか試してみたいので……!」

 そう言ってアーサーは唯一自分が持っていたAランクアーティファクト『アンデット獣の毛皮(A):Lv1』を取り出した。

「それは確か……」
「はい。この前リバースフロアで皆さんに助けてもらった時の報酬です」

 アーサー達が精霊の宴会と出会ったのはあの時が始めて。あの時から今のようになると誰も想像だにしていなかっただろう。

「召喚!」

 ――ブワァァン。
 アーサーの召喚の掛け声と同時に出現した『アンデット獣の毛皮(A):Lv1』は2つ揃った瞬間合体。見事『アンデット獣の毛皮(A):Lv2』となり、Aランクアーティファクトの召喚に成功した。

「やった! 出来た!」
「流石ですアーサー」
「ほぉ。マジでアーティファクトを召喚出来んのかお前」
「これは凄いわね。驚いちゃった」
「ね! ね! どうよグリムにマリア! 私のアーサー様凄いっしょ☆ 天才でしょ☆」

 天上天下、数多く存在するハンターの中でも“特質”なアーサーのスキル。
 
 それは最強と謳われる『精霊の宴会』メンバーのグリムとマリアでさえアーサーのアーティファクト召喚というスキルに度肝を抜かれた瞬間であった。