「おいバット……。お前まさかエレインに何かしたんじゃないだろうな」
アーサーはこの瞬間ほど人生で殺意が込み上げてきた事はない。
エレインの現状を一刻も早く知りたいと思うと同時に、バットがエレインに何をしたのか正直聞きたくないという気持ちも生じていた。
僅か数秒の沈黙が永遠の長さに感じる。
次の言葉が聞きたいが聞きたくない。
一瞬で様々な事が脳裏を駆け巡ったアーサーであったが、そんなアーサーを無視するかの如く、バットはモニター越しに不愉快な高笑いを響かせた。
<ギャーハッハッハッハッ! そうそう! それだよそれッ! お前のその絶望するアホ面を見たかったんだよ俺は! ハッハッハッハッ!>
「おい! いい加減にしろよお前! エレインに何かしたら殺すからな!」
<殺すぅ? お前如きか俺を? ギャーハッハッハッ、強がるんじゃねぇよボケが。無能召喚士のスキルしかねぇ最弱のお前じゃ100%無理だよそんな事! そんなに俺に歯向かいたいなら口だけじゃなくて行動で示してみろ。哀れなクソ兄貴よ!>
そう言ったバットが突然モニターから顔を消すと、次の瞬間、そこに映し出されたのは手足を縛られ椅子に拘束されたエレインの姿だった。
「ッ……! エレイン!?」
<ん゛ん゛んーッ!>
モニターの向こうで拘束されているエレインと友達のサラ。猿ぐつわを付けられたエレインは言葉を発せなかったが、アーサーにはしっかりと「お兄ちゃんッ!」と助けを求めるエレインの言葉が聞き取れた。
「何してんだよお前ッ! 早くエレイン達を解放しろッ!」
<ハッハッハッハッ! 奇遇だな。俺もそろそろ彼女達を解放してやろうと思っていたんだがな、他の連中がお前の妹達に完全に興奮しちまって抑えられねぇみたいなんだよ。
だからいっその事これから皆で楽しもうかなと思ってな! 一応兄貴に乱交許可もらおうと思って連絡したんだわ! ギャハハハハハ!>
余程体を震わせてバカ笑いしているのだろうか、バットのモニター画面は激しく揺れている。奥からは助けを求めるエレイン達の声とバットの連れ達の下衆な笑い声も聞こえ、ウォッチから発せられるその無機質な音声は今しがた、アーサーの中の“何か”をキレさせた――。
<おいアーサー! 俺達が何処にいるかはもう分かっているな? 妹の体をこれ以上露出させたくなかったら今すぐ来い! 今までのふざけた態度を反省して俺に詫びを入れに来やがれッ!
土下座で靴でも舐めたら大事な妹達を返してやるよ。ギャーハッハッハッ! じゃあそういう事だからよ。待たせるんじゃねぇぞボケカス!>
こうして、バットとの通話は突如終わった。
ウォッチから発せられる音が消え、辺りは耳鳴りが聞こえる程の静寂に包まれる。
居ても立っても居られない激しい怒りを抱いているアーサー。
だが彼はそれに反するぐらいの妙な落ち着きと冷静さも抱いていた。
嵐の前の静けさ――。
今の状況を表す言葉はこれ以外にないだろう。
(エレイン……バット……)
グッと握り締めた拳を解き、大きく深呼吸をしたアーサーは直ぐにダンジョンを出た。
そして彼は向かう。
場所は勿論、バットがエレイン達を拘束している『黒の終焉』のギルド。
アーサーが黒の終焉に行くのは追放されたあの日以来。だが今のアーサーは微塵も当時の事など思い出していなかった。今の彼の心に宿るはバット達への凄まじい怒りのみ。一心不乱に走るアーサーは瞬く間に黒の終焉ギルドへと辿り着く。
**
~ギルド・黒の終焉~
「あ~面白かった! 久々にアイツのアホ面を拝めたぜ。ハッハッハッ」
「バット君。アーサーのやつ来るかな?」
「ああ。あの無能は必ず来るよ。だって無能だからな」
「ヒヒヒヒ! 何だその意味分からない理由は」
「なぁ、俺もう我慢出来ねぇんだけど! 先ヤッていい?」
ウォッチでの通話をし終えた後でも、黒の終焉ではバット達の下衆な会話が続いていた。拘束するエレインとサラに我慢が出来ない様子の男達はどんどんエレイン達に寄っていく。
「おい! 手ぇ出すんじゃねぇぞお前ら!」
「何でだよ。別にもういいだろ。減るもんじゃないし」
バットはそう言って他の男達を止めた。
当然これは彼の優しさなんかではない。寧ろバット自身がもっと状況を楽しみたいだけであった。
「そう慌てるんじゃねぇよ。楽しみは何処にも逃げないんだ。まぁ見てろって。アイツをボコボコにしたら、奴の前で皆で楽しもうじゃねぇか!」
冷酷な表情から一転、再び不敵な笑みを浮かべたバット。
「うっわ~、流石バット。考えが最低だな。アーサーが詫び入れても許す気ないじゃん」
「ハッハッハッハッ。当たり前だろうが。最近の奴の態度は余りにもふざけてやがったからな。ただボコるだけじゃ俺の気が済まねぇ。徹底的に追い詰めてやる」
そう宣言したバットは徐にエレインの元へと近付き、彼女の顎をクイっと持ち上げた。
「クハハハ、待ってろよ。後でたっぷり楽しもうぜ」
「ん゛ん゛ん゛ーッ!」
――ドガァァァァァンッ。
「「……!?」」
次の瞬間、ギルド内の下衆な空気を一掃するかの如く、凄まじい衝撃音と共にギルドの出入口の扉がバット達の足元に勢いよく吹き飛んでくる。
そして。
砂埃が舞う向こうから、鬼の形相を浮かべたアーサーがバット達の前に姿を現した。
「全員僕の前に跪け。土下座で靴を舐めたら全殺しで許してやる――」
アーサーはこの瞬間ほど人生で殺意が込み上げてきた事はない。
エレインの現状を一刻も早く知りたいと思うと同時に、バットがエレインに何をしたのか正直聞きたくないという気持ちも生じていた。
僅か数秒の沈黙が永遠の長さに感じる。
次の言葉が聞きたいが聞きたくない。
一瞬で様々な事が脳裏を駆け巡ったアーサーであったが、そんなアーサーを無視するかの如く、バットはモニター越しに不愉快な高笑いを響かせた。
<ギャーハッハッハッハッ! そうそう! それだよそれッ! お前のその絶望するアホ面を見たかったんだよ俺は! ハッハッハッハッ!>
「おい! いい加減にしろよお前! エレインに何かしたら殺すからな!」
<殺すぅ? お前如きか俺を? ギャーハッハッハッ、強がるんじゃねぇよボケが。無能召喚士のスキルしかねぇ最弱のお前じゃ100%無理だよそんな事! そんなに俺に歯向かいたいなら口だけじゃなくて行動で示してみろ。哀れなクソ兄貴よ!>
そう言ったバットが突然モニターから顔を消すと、次の瞬間、そこに映し出されたのは手足を縛られ椅子に拘束されたエレインの姿だった。
「ッ……! エレイン!?」
<ん゛ん゛んーッ!>
モニターの向こうで拘束されているエレインと友達のサラ。猿ぐつわを付けられたエレインは言葉を発せなかったが、アーサーにはしっかりと「お兄ちゃんッ!」と助けを求めるエレインの言葉が聞き取れた。
「何してんだよお前ッ! 早くエレイン達を解放しろッ!」
<ハッハッハッハッ! 奇遇だな。俺もそろそろ彼女達を解放してやろうと思っていたんだがな、他の連中がお前の妹達に完全に興奮しちまって抑えられねぇみたいなんだよ。
だからいっその事これから皆で楽しもうかなと思ってな! 一応兄貴に乱交許可もらおうと思って連絡したんだわ! ギャハハハハハ!>
余程体を震わせてバカ笑いしているのだろうか、バットのモニター画面は激しく揺れている。奥からは助けを求めるエレイン達の声とバットの連れ達の下衆な笑い声も聞こえ、ウォッチから発せられるその無機質な音声は今しがた、アーサーの中の“何か”をキレさせた――。
<おいアーサー! 俺達が何処にいるかはもう分かっているな? 妹の体をこれ以上露出させたくなかったら今すぐ来い! 今までのふざけた態度を反省して俺に詫びを入れに来やがれッ!
土下座で靴でも舐めたら大事な妹達を返してやるよ。ギャーハッハッハッ! じゃあそういう事だからよ。待たせるんじゃねぇぞボケカス!>
こうして、バットとの通話は突如終わった。
ウォッチから発せられる音が消え、辺りは耳鳴りが聞こえる程の静寂に包まれる。
居ても立っても居られない激しい怒りを抱いているアーサー。
だが彼はそれに反するぐらいの妙な落ち着きと冷静さも抱いていた。
嵐の前の静けさ――。
今の状況を表す言葉はこれ以外にないだろう。
(エレイン……バット……)
グッと握り締めた拳を解き、大きく深呼吸をしたアーサーは直ぐにダンジョンを出た。
そして彼は向かう。
場所は勿論、バットがエレイン達を拘束している『黒の終焉』のギルド。
アーサーが黒の終焉に行くのは追放されたあの日以来。だが今のアーサーは微塵も当時の事など思い出していなかった。今の彼の心に宿るはバット達への凄まじい怒りのみ。一心不乱に走るアーサーは瞬く間に黒の終焉ギルドへと辿り着く。
**
~ギルド・黒の終焉~
「あ~面白かった! 久々にアイツのアホ面を拝めたぜ。ハッハッハッ」
「バット君。アーサーのやつ来るかな?」
「ああ。あの無能は必ず来るよ。だって無能だからな」
「ヒヒヒヒ! 何だその意味分からない理由は」
「なぁ、俺もう我慢出来ねぇんだけど! 先ヤッていい?」
ウォッチでの通話をし終えた後でも、黒の終焉ではバット達の下衆な会話が続いていた。拘束するエレインとサラに我慢が出来ない様子の男達はどんどんエレイン達に寄っていく。
「おい! 手ぇ出すんじゃねぇぞお前ら!」
「何でだよ。別にもういいだろ。減るもんじゃないし」
バットはそう言って他の男達を止めた。
当然これは彼の優しさなんかではない。寧ろバット自身がもっと状況を楽しみたいだけであった。
「そう慌てるんじゃねぇよ。楽しみは何処にも逃げないんだ。まぁ見てろって。アイツをボコボコにしたら、奴の前で皆で楽しもうじゃねぇか!」
冷酷な表情から一転、再び不敵な笑みを浮かべたバット。
「うっわ~、流石バット。考えが最低だな。アーサーが詫び入れても許す気ないじゃん」
「ハッハッハッハッ。当たり前だろうが。最近の奴の態度は余りにもふざけてやがったからな。ただボコるだけじゃ俺の気が済まねぇ。徹底的に追い詰めてやる」
そう宣言したバットは徐にエレインの元へと近付き、彼女の顎をクイっと持ち上げた。
「クハハハ、待ってろよ。後でたっぷり楽しもうぜ」
「ん゛ん゛ん゛ーッ!」
――ドガァァァァァンッ。
「「……!?」」
次の瞬間、ギルド内の下衆な空気を一掃するかの如く、凄まじい衝撃音と共にギルドの出入口の扉がバット達の足元に勢いよく吹き飛んでくる。
そして。
砂埃が舞う向こうから、鬼の形相を浮かべたアーサーがバット達の前に姿を現した。
「全員僕の前に跪け。土下座で靴を舐めたら全殺しで許してやる――」