「うおおおおお! とんでもなく力が漲っている! ……気がする」
一生手にする事が出来ないと思っていたCランクアーティファクト。それも最上物のオーガアーティファクトを装備したアーサーの能力値は優に人Dランクを超えるものとなった。
====================
アーサー・リルガーデン
【スキル】召喚士(C): Lv20
・アーティファクト召喚(15/15+5)
・ランクアップ召喚(0/5)
・スキルP:7
【サブスキル】
・召喚士の心得(召喚回数+5)
【装備アーティファクト】
・スロット1:『オーガの鋼剣(C):Lv1』
・スロット2:『オーガバイザー(C):Lv1』
・スロット3:『オーガの鎧(C):Lv1』
・スロット4:『オーガの籠手(C):Lv1』
・スロット5:『オーガブーツ(C):Lv1』
【能力値】
・ATK:15『+400』
・DEF:18『+200』
・SPD:21『+200』
・MP:25『+200』
====================
改めて自分のステータスを見て固まるアーサー。嬉しさと驚きでもう言葉も出ない。自分の装備が全てオーガアーティファクトである事に加え、これでCランクアーティファクトも続けて召喚出来る。それも後15回も。
もう迷う事なく、アーサーは残りの召喚を全て使ってアーティファクトをレベルアップさせる。
(とりあえず均等にレベルアップさせておこう)
『オーガの鋼剣(C):Lv1』→『オーガの鋼剣(C):Lv4』
『オーガバイザー(C):Lv1』→『オーガバイザー(C):Lv4』
『オーガの鎧(C):Lv1』→『オーガの鎧(C):Lv4』
『オーガの籠手(C):Lv1』→『オーガの籠手(C):Lv4』
『オーガブーツ(C):Lv1』→『オーガブーツ(C):Lv4』
この召喚により更にアーサーの能力値が上がり、ATKが+1000。その他もそれぞれ+500という驚異的なステータスとなった。炎Cランクの上位ハンターの者達が一般的に“一流ハンター”と呼ばれる部類に入るのだが、今のアーサーはステータスだけみれば間違いなくその領域に踏み込んだだろう。
スキルとアーティファクトが全てのこの世界。
まだ誰にも知られる事もなく、この静かなフロア19で、アーサー・リルガーデンという1人の少年は世界を揺るがす絶対的な奇跡を起こしていた――。
彼の存在が世界に轟くのはそう遠い日ではない。
全ては稼ぎの為、母親の病気を治す為、妹との暮らしを豊かにする為……そしてバットを見返す為。そんな彼の地道な下準備は整った。
争いは争いしか生まない。
憎しみからは憎しみしか生まれない。
そんな事は当然頭で理解している。
だが本能は決して理屈では抑えられない。
目には目を。
力には力を。
アーティファクトにはアーティファクトを。
バット達から受けた屈辱を怒りというエネルギーに変え、それを原動力に前だけを見て進み続けたアーサーの反撃の狼煙が上がる。
「これで遂にバットにも勝てるぞ……! 奴のアーティファクトはCランクだけど、僕は同じCランクの中でもモンスターネームのオーガだ。1つもオーガを持っていないバットを僕は完全に上回った!」
喜ぶアーサーはそのままフロア19を出てメインフロアへと向かった。今、この喜びを唯一伝えられるリリアの元へと。
**
~ダンジョン・メインフロア~
「リリアさん!」
この上なく元気に彼女の名を呼ぶアーサー。彼のその屈託ない笑顔と可愛さにリリアの涎が垂れたのはほんの一瞬のお話。勿論そんな事に一切気付かないアーサーは、自身の喜びを全てリリアに伝える。話を聞いたリリアはとんでもない偉業を成し得ているアーサーに驚いて目を見開いた。
アーティファクトを召喚するだけでも前例のない特殊スキル。
それに加えてたった1人の――若干17歳の少年が己のスキルのみでCランクアーティファクトを生み出しているのだから無理もないだろう。
本来であればCランクアーティファクトはフロア50よりも上で初めて入手可能となる代物。ハンターランクでいえば炎Cランク。その炎Cランクのハンター達でさえ、Cランクアーティファクトが手に入るかはその時の運にも左右されるもの。
このCランクアーティファクト1つを手に入れる為に命を落としてしまったハンターも数え切れない。一流ハンターと呼ばれる選ばれた者達でも入手は困難とされているのだ。きっと……いや、彼のこの最強スキルは確実に世界のパワーバランスを覆すに違いない――。
最早自分では到底計り知れないスケールの話に、リリアもどう対応した良いかと頭を抱え出した。しかし、そんな事を考えたところで自分には関係ない。そう思ったリリアは今までと何ら変わりなく、ひたすら獲物に狙いを定める狡猾な猛獣の如き視線でアーサーを見る。そしてアーサーはこのタイミングで、ハンターランクの昇格テストを受けたいとリリアに告げたのだった。
「あら、やっと受ける気になったのね。分かったわ。じゃあ昇格テストの申請を出しておくわね」
「ありがとうございます」
「今のアーサー君なら力を持て余すわね。その上の炎Cランクも受ける? とは言っても人Dランクに合格してフロア20~49を攻略してからになっちゃうけど」
炎Cランク――。
正直今のアーサーならば昇格テストを受けても余裕で受かるレベル。だが現状、アーサーが最も優先しようとしているのは他ならぬバットへの反撃。下準備が整ったアーサーは今すぐにでも『黒の終焉』に乗り込んでやろうと思っていたが、ふと冷静になった彼はある事を思いつく。
(そうか。折角ここまで強くなったんだから、どうせならハンターランクもバットと同じにして目にもの見せてやる。散々見下していた僕と同列になった挙句、力でもぶっ飛ばされたら相当なダメージになるだろう。よし、決めた!)
1人大きく頷いたアーサーは再びリリアに伝える。
「リリアさん。そうしたら先ずはやっぱり人Dランクの昇格テストを受けます。それで1週間に以内に全フロア攻略して、そのまま炎Cランクの昇格テストを受ける事にします!」
バットとの因縁にケリを着けるのは1週間後。
全てが完璧に整った状態で、今度こそ全てを終わらせる。
アーサーはそう決心したのだった。
「了解。明日にでも昇格テストを受けられると思うから頑張ってね。受かったらお姉さんが思いっ切り抱き締めてあ・げ・る」
単純な手法だと分かっていながらも、やはり凄まじい破壊力の色気と妖艶なバイオレンスさで攻撃されたアーサーは危うく昇天しかけた。だが紙一重で正気を保ったアーサーはブンブンと頭を振って雑念を取っ払うと、突然何かを思い出す。
「あ! 忘れるところだった」
「どうしたの?」
そう言ったアーサーは何やら鞄から小包を取り出すと、それをリリアへと渡した。
「ん? なにかしら」
「いや、なんて言うか……。僕がハンターになった頃からずっとリリアさんにはお世話になっていたし、お祝いも貰ってこのスキルの事についても相談に乗ってもらっていたので、大した物ではないですけど僕からの感謝の気持ちです!」
そう。リリアに渡した物はアーサーからのささやかな御礼の気持ち。
女性に贈り物などした事がないアーサーはここ数日ずっと悩み、結果普段から使える日用品と、リリアが以前から好きだと言っていた甘い食べ物を選んだ。
何でも高価な物であれば良いとは限らないが、それでもアーサーはここ1カ月フロア周回で手に入れた魔鉱石と召喚したアーティファクトを換金し続け、当初の想定を遥かに上回る2,000,000Gという大金を稼ぎ出していた。
だからこそ誰よりも1番お世話になっているリリアに対し、今まででのアーサーであれば絶対に買えなかった少し贅沢な値段の物をリリアに贈った。少しでも恩返しが出来ればと。
(やだ……。これってもうアーサー君も私を“そういう対象”として見てるって事よね? もう我慢できないかも――)
危険な妄想を広げるリリアを他所に、無事感謝の気持ちを渡したアーサーは彼女に手を振ってダンジョンを後にするのだった。
**
しかし。
アーサーは後に強く自身を恨む事となる。
今日のこの決断が間違っていたと――。
アーサーが虎視眈々と“奴”を狙う裏で、“奴”もまたアーサーの知らないところで不穏な動きを見せていた。
何故あの時動かなかったのだろう……。
何故こんな事になってしまったのだろう……。
何故“エレイン”がこんな目に遭ってしまったのだろう。
「もうアイツはマジで許さない。僕を本気で怒らせたな……“バット”――!」
一生手にする事が出来ないと思っていたCランクアーティファクト。それも最上物のオーガアーティファクトを装備したアーサーの能力値は優に人Dランクを超えるものとなった。
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アーサー・リルガーデン
【スキル】召喚士(C): Lv20
・アーティファクト召喚(15/15+5)
・ランクアップ召喚(0/5)
・スキルP:7
【サブスキル】
・召喚士の心得(召喚回数+5)
【装備アーティファクト】
・スロット1:『オーガの鋼剣(C):Lv1』
・スロット2:『オーガバイザー(C):Lv1』
・スロット3:『オーガの鎧(C):Lv1』
・スロット4:『オーガの籠手(C):Lv1』
・スロット5:『オーガブーツ(C):Lv1』
【能力値】
・ATK:15『+400』
・DEF:18『+200』
・SPD:21『+200』
・MP:25『+200』
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改めて自分のステータスを見て固まるアーサー。嬉しさと驚きでもう言葉も出ない。自分の装備が全てオーガアーティファクトである事に加え、これでCランクアーティファクトも続けて召喚出来る。それも後15回も。
もう迷う事なく、アーサーは残りの召喚を全て使ってアーティファクトをレベルアップさせる。
(とりあえず均等にレベルアップさせておこう)
『オーガの鋼剣(C):Lv1』→『オーガの鋼剣(C):Lv4』
『オーガバイザー(C):Lv1』→『オーガバイザー(C):Lv4』
『オーガの鎧(C):Lv1』→『オーガの鎧(C):Lv4』
『オーガの籠手(C):Lv1』→『オーガの籠手(C):Lv4』
『オーガブーツ(C):Lv1』→『オーガブーツ(C):Lv4』
この召喚により更にアーサーの能力値が上がり、ATKが+1000。その他もそれぞれ+500という驚異的なステータスとなった。炎Cランクの上位ハンターの者達が一般的に“一流ハンター”と呼ばれる部類に入るのだが、今のアーサーはステータスだけみれば間違いなくその領域に踏み込んだだろう。
スキルとアーティファクトが全てのこの世界。
まだ誰にも知られる事もなく、この静かなフロア19で、アーサー・リルガーデンという1人の少年は世界を揺るがす絶対的な奇跡を起こしていた――。
彼の存在が世界に轟くのはそう遠い日ではない。
全ては稼ぎの為、母親の病気を治す為、妹との暮らしを豊かにする為……そしてバットを見返す為。そんな彼の地道な下準備は整った。
争いは争いしか生まない。
憎しみからは憎しみしか生まれない。
そんな事は当然頭で理解している。
だが本能は決して理屈では抑えられない。
目には目を。
力には力を。
アーティファクトにはアーティファクトを。
バット達から受けた屈辱を怒りというエネルギーに変え、それを原動力に前だけを見て進み続けたアーサーの反撃の狼煙が上がる。
「これで遂にバットにも勝てるぞ……! 奴のアーティファクトはCランクだけど、僕は同じCランクの中でもモンスターネームのオーガだ。1つもオーガを持っていないバットを僕は完全に上回った!」
喜ぶアーサーはそのままフロア19を出てメインフロアへと向かった。今、この喜びを唯一伝えられるリリアの元へと。
**
~ダンジョン・メインフロア~
「リリアさん!」
この上なく元気に彼女の名を呼ぶアーサー。彼のその屈託ない笑顔と可愛さにリリアの涎が垂れたのはほんの一瞬のお話。勿論そんな事に一切気付かないアーサーは、自身の喜びを全てリリアに伝える。話を聞いたリリアはとんでもない偉業を成し得ているアーサーに驚いて目を見開いた。
アーティファクトを召喚するだけでも前例のない特殊スキル。
それに加えてたった1人の――若干17歳の少年が己のスキルのみでCランクアーティファクトを生み出しているのだから無理もないだろう。
本来であればCランクアーティファクトはフロア50よりも上で初めて入手可能となる代物。ハンターランクでいえば炎Cランク。その炎Cランクのハンター達でさえ、Cランクアーティファクトが手に入るかはその時の運にも左右されるもの。
このCランクアーティファクト1つを手に入れる為に命を落としてしまったハンターも数え切れない。一流ハンターと呼ばれる選ばれた者達でも入手は困難とされているのだ。きっと……いや、彼のこの最強スキルは確実に世界のパワーバランスを覆すに違いない――。
最早自分では到底計り知れないスケールの話に、リリアもどう対応した良いかと頭を抱え出した。しかし、そんな事を考えたところで自分には関係ない。そう思ったリリアは今までと何ら変わりなく、ひたすら獲物に狙いを定める狡猾な猛獣の如き視線でアーサーを見る。そしてアーサーはこのタイミングで、ハンターランクの昇格テストを受けたいとリリアに告げたのだった。
「あら、やっと受ける気になったのね。分かったわ。じゃあ昇格テストの申請を出しておくわね」
「ありがとうございます」
「今のアーサー君なら力を持て余すわね。その上の炎Cランクも受ける? とは言っても人Dランクに合格してフロア20~49を攻略してからになっちゃうけど」
炎Cランク――。
正直今のアーサーならば昇格テストを受けても余裕で受かるレベル。だが現状、アーサーが最も優先しようとしているのは他ならぬバットへの反撃。下準備が整ったアーサーは今すぐにでも『黒の終焉』に乗り込んでやろうと思っていたが、ふと冷静になった彼はある事を思いつく。
(そうか。折角ここまで強くなったんだから、どうせならハンターランクもバットと同じにして目にもの見せてやる。散々見下していた僕と同列になった挙句、力でもぶっ飛ばされたら相当なダメージになるだろう。よし、決めた!)
1人大きく頷いたアーサーは再びリリアに伝える。
「リリアさん。そうしたら先ずはやっぱり人Dランクの昇格テストを受けます。それで1週間に以内に全フロア攻略して、そのまま炎Cランクの昇格テストを受ける事にします!」
バットとの因縁にケリを着けるのは1週間後。
全てが完璧に整った状態で、今度こそ全てを終わらせる。
アーサーはそう決心したのだった。
「了解。明日にでも昇格テストを受けられると思うから頑張ってね。受かったらお姉さんが思いっ切り抱き締めてあ・げ・る」
単純な手法だと分かっていながらも、やはり凄まじい破壊力の色気と妖艶なバイオレンスさで攻撃されたアーサーは危うく昇天しかけた。だが紙一重で正気を保ったアーサーはブンブンと頭を振って雑念を取っ払うと、突然何かを思い出す。
「あ! 忘れるところだった」
「どうしたの?」
そう言ったアーサーは何やら鞄から小包を取り出すと、それをリリアへと渡した。
「ん? なにかしら」
「いや、なんて言うか……。僕がハンターになった頃からずっとリリアさんにはお世話になっていたし、お祝いも貰ってこのスキルの事についても相談に乗ってもらっていたので、大した物ではないですけど僕からの感謝の気持ちです!」
そう。リリアに渡した物はアーサーからのささやかな御礼の気持ち。
女性に贈り物などした事がないアーサーはここ数日ずっと悩み、結果普段から使える日用品と、リリアが以前から好きだと言っていた甘い食べ物を選んだ。
何でも高価な物であれば良いとは限らないが、それでもアーサーはここ1カ月フロア周回で手に入れた魔鉱石と召喚したアーティファクトを換金し続け、当初の想定を遥かに上回る2,000,000Gという大金を稼ぎ出していた。
だからこそ誰よりも1番お世話になっているリリアに対し、今まででのアーサーであれば絶対に買えなかった少し贅沢な値段の物をリリアに贈った。少しでも恩返しが出来ればと。
(やだ……。これってもうアーサー君も私を“そういう対象”として見てるって事よね? もう我慢できないかも――)
危険な妄想を広げるリリアを他所に、無事感謝の気持ちを渡したアーサーは彼女に手を振ってダンジョンを後にするのだった。
**
しかし。
アーサーは後に強く自身を恨む事となる。
今日のこの決断が間違っていたと――。
アーサーが虎視眈々と“奴”を狙う裏で、“奴”もまたアーサーの知らないところで不穏な動きを見せていた。
何故あの時動かなかったのだろう……。
何故こんな事になってしまったのだろう……。
何故“エレイン”がこんな目に遭ってしまったのだろう。
「もうアイツはマジで許さない。僕を本気で怒らせたな……“バット”――!」