♢♦♢
アーサーがひたすらフロア周回する事早1ヵ月――。
Dランクの最上物であるゴブリンアーティファクト、それも全てがLv9であるアーサーの能力値では最早この新Eランクフロアは容易過ぎた。
しつこいと言うのか、ある意味持続力があると言うのか。
あれからもアーサーは変わらずアカデミーでバット達に嫌がらせを受ける日々を過ごしていが、バット達の嫌がらせ自体はもうアーサーも気にしていない。ここまでくると日常だ。
しかし、そんなバット達の嫌がらせよりも彼の心を揺さぶったのが母親の容体。
不治の病にかかってしまった母親は当然体調が思わしくないのだが、「ここ1ヵ月でまた体が弱ってきている」とお見舞いに行っているエレインから伝えられたアーサーはどうしようもない虚無感を覚えていた。
母親の容体を聞いた翌日、アーサーはこれまで全く気にしていなかったバット達の嫌がらせに猛烈に苛立ってしまった。だが今の実力で歯向かった所で結果は以前と同じ。そう思ったアーサーは再びその怒りを全てエネルギーに変え、ただひたすらダンジョンにストレスをぶつける。
毎日、毎日、毎日。
休みの日は朝から晩までずっと。アーサーは愚直に前だけを見て日々乗り越えていた。
そして。
遂にそんな彼の努力が実を結ぶ瞬間が訪れた――。
**
~ダンジョン・フロア19~
『ギギャッ!?』
今日も流れ作業かの如くフロア19のビッグゴブリンを倒したアーサー。
「よ~し、これでどうなるか……頼む! 奇跡よ起きてくれ!」
アーサーは自分しかいなフロア19で大きく叫ぶ。彼は自らのウォッチを確認した後、溜まったスキルPを使用した。
『スキルPを1,500使用。召喚士Lv20になりました。召喚士Lv20になった事によりランクが上がります』
『召喚士のランクが上がったので、ランクアップ召喚の可能ランクがDランクから“Cランク”にアップしました』
『ランクアップ召喚の上限回数が上がります』
彼の世界が180度変わったあの日――。
そしてあの日と全く同じ、ウォッチから流れたこの無機質な祝福が再びアーサーの世界をも上のランクへと押し上げた。
「や、やったぁぁぁぁぁッ……!」
両手でガッツポーズをしながら大興奮するアーサー。
そう。彼は遂にやり遂げた。
この1ヵ月ひたすらフロア周回をしたアーサーは毎日アーティファクトとスキルPを着実に溜めていた。
溜めて溜めて溜めて。召喚して召喚して召喚して。
数え切れない程地道な作業を繰り返したアーサーは、あれから召喚士としてのレベルを確実に上げていき今日遂にスキルがLv20に達した。しかもその瞬間ウォッチから流れた音声は、アーサーが何よりも期待を抱いて待ち望んでいたものであった。
「キタキタキタキタキターーー! ヤバいぞこれは……!」
ウォッチの音声を聞いたアーサーの体は次第に小刻みに震える。溢れ出る興奮に、思わず呼吸の仕方を忘れて息苦しくなるアーサー。
まさかという可能性に懸けていた彼は、まだ今日分の召喚を1度も使っていない。そしてゴクリと生唾を呑み込んだアーサーが次に取った行動。それは勿論。
「ランクアップ召喚――!」
元気よく叫んだアーサーの声が、彼しかいない静かなフロアに木霊する。
既に装備しているDランクアーティファクトは全てLv9の状態。更なる上のランクアップ召喚が可能と分かった今、別にどのアーティファクトからランクアップをしても構わなかった。
ただアーサーは初めて『普通の剣(E)』を『良質な剣(D):Lv9』にランクアップさせた時と同様、無意識に手に持っていた武器である『ゴブリンの棍棒(D)』にランクアップ召喚を使用した。
『ランクアップ召喚を使用しました。『ゴブリンの棍棒(D):Lv9』は『オーガの鋼剣(C):Lv1』になりました』
「よぉぉぉぉぉぉぉしッ! よしよしよぉぉぉし!」
淡い輝きに包まれたゴブリンのグローブは、見事Cランクアーティファクトへと昇華。それも最上物のモンスターネーム、『オーガの鋼剣』へとその姿を変えた。これを見たアーサーは言葉にならない歓喜と共に連続でガッツポーズを繰り出していた。
「うぉぉ。やばい。喜びと感動で涙が出てきた」
まるで神様にお供え物をするかの様に、アーサーは人生で初めて手にするCランクアーティファクトを両手の平に大事に乗せて天に掲げる。そしてそんなアーサーを更に祝福するかの如く、ウォッチから再び驚きの音声が流れた。
『Cランクアーティファクトの召喚に成功しました。新しく“サブスキル”が解放されます』
アーサーの耳に、そして脳に、一気に流れ込んできたウォッチの無機質な音声。アーサーはその音声に驚きつつ、気が付けば彼はウォッチで自分のステータスを確かめていた。
====================
アーサー・リルガーデン
【スキル】召喚士(C): Lv20
・アーティファクト召喚(20/15+5)
・ランクアップ召喚(5/5)
・スキルP:7
【サブスキル】
・召喚士の心得(召喚回数+5)
【装備アーティファクト】
・スロット1:『オーガの鋼剣(C):Lv1』
・スロット2:『ゴブリンの帽子(D):Lv9』
・スロット3:『ゴブリンアーマー(D):Lv9』
・スロット4:『ゴブリンのグローブ(D):Lv9』
・スロット5:『ゴブリンの草履(D):Lv9』
【能力値】
・ATK:15『+350』
・DEF:18『+150』
・SPD:21『+150』
・MP:25『+150』
====================
自分の新たなスキルを確認するアーサー。
「は……? サブスキル解放……!? うわ、なにこれ、なんか一気に召喚の上限回数が上がってるんだけど。召喚士の心得……? これで召喚の上限回数が5回もプラスされているじゃん。凄ッ!」
この世界でも唯一無二であろう最強スキルが次なる高みへと進化する。
今更ながら、日々フロア周回をしていたアーサーには一抹の不安があった。それはスキルがLv10から今のLv20に至るまで、レベルを上げても上げても何も変化が見られなかったからである。スキルPを使用してどれだけレベルを上げようと、召喚回数どころか能力値が1も変化しない。分かってはいたが、やはり見る度に心の何処かでショックを受けていた。
でもプラスに考えれば召喚士スキルのレベルは“まだMAXではない”。必ず“次レベルまでの必要P”が毎回表示されていたのだ。だからアーサーは僅かな希望を抱いて今日までがむしゃらに頑張る事が出来た。
そして。
その努力が実を結んだ。
「ランクが上がった事で回数がリセットされてる上に、ランクアップ召喚を5回使っても更に普通のアーティファクト召喚が15回も出来る!」
興奮冷めやらぬアーサーはランクアップ召喚を立て続けに使用。淡い輝きに包まれたアーティファクトは全てその姿を変えた――。
『ゴブリンの帽子(D):Lv9』→『オーガバイザー(C):Lv1』
『ゴブリンアーマー(D):Lv9』→『オーガの鎧(C):Lv1』
『ゴブリンのグローブ(D):Lv9』→『オーガの籠手(C):Lv1』
『ゴブリンの草履(D):Lv9』→『オーガブーツ(C):Lv1』
ランクアップ召喚によりアーサーの装備は全てCランクアーティファクトに。それもCランクの最上物であるオーガアーティファクトで揃えられたのだった。
アーサーがひたすらフロア周回する事早1ヵ月――。
Dランクの最上物であるゴブリンアーティファクト、それも全てがLv9であるアーサーの能力値では最早この新Eランクフロアは容易過ぎた。
しつこいと言うのか、ある意味持続力があると言うのか。
あれからもアーサーは変わらずアカデミーでバット達に嫌がらせを受ける日々を過ごしていが、バット達の嫌がらせ自体はもうアーサーも気にしていない。ここまでくると日常だ。
しかし、そんなバット達の嫌がらせよりも彼の心を揺さぶったのが母親の容体。
不治の病にかかってしまった母親は当然体調が思わしくないのだが、「ここ1ヵ月でまた体が弱ってきている」とお見舞いに行っているエレインから伝えられたアーサーはどうしようもない虚無感を覚えていた。
母親の容体を聞いた翌日、アーサーはこれまで全く気にしていなかったバット達の嫌がらせに猛烈に苛立ってしまった。だが今の実力で歯向かった所で結果は以前と同じ。そう思ったアーサーは再びその怒りを全てエネルギーに変え、ただひたすらダンジョンにストレスをぶつける。
毎日、毎日、毎日。
休みの日は朝から晩までずっと。アーサーは愚直に前だけを見て日々乗り越えていた。
そして。
遂にそんな彼の努力が実を結ぶ瞬間が訪れた――。
**
~ダンジョン・フロア19~
『ギギャッ!?』
今日も流れ作業かの如くフロア19のビッグゴブリンを倒したアーサー。
「よ~し、これでどうなるか……頼む! 奇跡よ起きてくれ!」
アーサーは自分しかいなフロア19で大きく叫ぶ。彼は自らのウォッチを確認した後、溜まったスキルPを使用した。
『スキルPを1,500使用。召喚士Lv20になりました。召喚士Lv20になった事によりランクが上がります』
『召喚士のランクが上がったので、ランクアップ召喚の可能ランクがDランクから“Cランク”にアップしました』
『ランクアップ召喚の上限回数が上がります』
彼の世界が180度変わったあの日――。
そしてあの日と全く同じ、ウォッチから流れたこの無機質な祝福が再びアーサーの世界をも上のランクへと押し上げた。
「や、やったぁぁぁぁぁッ……!」
両手でガッツポーズをしながら大興奮するアーサー。
そう。彼は遂にやり遂げた。
この1ヵ月ひたすらフロア周回をしたアーサーは毎日アーティファクトとスキルPを着実に溜めていた。
溜めて溜めて溜めて。召喚して召喚して召喚して。
数え切れない程地道な作業を繰り返したアーサーは、あれから召喚士としてのレベルを確実に上げていき今日遂にスキルがLv20に達した。しかもその瞬間ウォッチから流れた音声は、アーサーが何よりも期待を抱いて待ち望んでいたものであった。
「キタキタキタキタキターーー! ヤバいぞこれは……!」
ウォッチの音声を聞いたアーサーの体は次第に小刻みに震える。溢れ出る興奮に、思わず呼吸の仕方を忘れて息苦しくなるアーサー。
まさかという可能性に懸けていた彼は、まだ今日分の召喚を1度も使っていない。そしてゴクリと生唾を呑み込んだアーサーが次に取った行動。それは勿論。
「ランクアップ召喚――!」
元気よく叫んだアーサーの声が、彼しかいない静かなフロアに木霊する。
既に装備しているDランクアーティファクトは全てLv9の状態。更なる上のランクアップ召喚が可能と分かった今、別にどのアーティファクトからランクアップをしても構わなかった。
ただアーサーは初めて『普通の剣(E)』を『良質な剣(D):Lv9』にランクアップさせた時と同様、無意識に手に持っていた武器である『ゴブリンの棍棒(D)』にランクアップ召喚を使用した。
『ランクアップ召喚を使用しました。『ゴブリンの棍棒(D):Lv9』は『オーガの鋼剣(C):Lv1』になりました』
「よぉぉぉぉぉぉぉしッ! よしよしよぉぉぉし!」
淡い輝きに包まれたゴブリンのグローブは、見事Cランクアーティファクトへと昇華。それも最上物のモンスターネーム、『オーガの鋼剣』へとその姿を変えた。これを見たアーサーは言葉にならない歓喜と共に連続でガッツポーズを繰り出していた。
「うぉぉ。やばい。喜びと感動で涙が出てきた」
まるで神様にお供え物をするかの様に、アーサーは人生で初めて手にするCランクアーティファクトを両手の平に大事に乗せて天に掲げる。そしてそんなアーサーを更に祝福するかの如く、ウォッチから再び驚きの音声が流れた。
『Cランクアーティファクトの召喚に成功しました。新しく“サブスキル”が解放されます』
アーサーの耳に、そして脳に、一気に流れ込んできたウォッチの無機質な音声。アーサーはその音声に驚きつつ、気が付けば彼はウォッチで自分のステータスを確かめていた。
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アーサー・リルガーデン
【スキル】召喚士(C): Lv20
・アーティファクト召喚(20/15+5)
・ランクアップ召喚(5/5)
・スキルP:7
【サブスキル】
・召喚士の心得(召喚回数+5)
【装備アーティファクト】
・スロット1:『オーガの鋼剣(C):Lv1』
・スロット2:『ゴブリンの帽子(D):Lv9』
・スロット3:『ゴブリンアーマー(D):Lv9』
・スロット4:『ゴブリンのグローブ(D):Lv9』
・スロット5:『ゴブリンの草履(D):Lv9』
【能力値】
・ATK:15『+350』
・DEF:18『+150』
・SPD:21『+150』
・MP:25『+150』
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自分の新たなスキルを確認するアーサー。
「は……? サブスキル解放……!? うわ、なにこれ、なんか一気に召喚の上限回数が上がってるんだけど。召喚士の心得……? これで召喚の上限回数が5回もプラスされているじゃん。凄ッ!」
この世界でも唯一無二であろう最強スキルが次なる高みへと進化する。
今更ながら、日々フロア周回をしていたアーサーには一抹の不安があった。それはスキルがLv10から今のLv20に至るまで、レベルを上げても上げても何も変化が見られなかったからである。スキルPを使用してどれだけレベルを上げようと、召喚回数どころか能力値が1も変化しない。分かってはいたが、やはり見る度に心の何処かでショックを受けていた。
でもプラスに考えれば召喚士スキルのレベルは“まだMAXではない”。必ず“次レベルまでの必要P”が毎回表示されていたのだ。だからアーサーは僅かな希望を抱いて今日までがむしゃらに頑張る事が出来た。
そして。
その努力が実を結んだ。
「ランクが上がった事で回数がリセットされてる上に、ランクアップ召喚を5回使っても更に普通のアーティファクト召喚が15回も出来る!」
興奮冷めやらぬアーサーはランクアップ召喚を立て続けに使用。淡い輝きに包まれたアーティファクトは全てその姿を変えた――。
『ゴブリンの帽子(D):Lv9』→『オーガバイザー(C):Lv1』
『ゴブリンアーマー(D):Lv9』→『オーガの鎧(C):Lv1』
『ゴブリンのグローブ(D):Lv9』→『オーガの籠手(C):Lv1』
『ゴブリンの草履(D):Lv9』→『オーガブーツ(C):Lv1』
ランクアップ召喚によりアーサーの装備は全てCランクアーティファクトに。それもCランクの最上物であるオーガアーティファクトで揃えられたのだった。