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~ダンジョン・フロア5~

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アーサー・リルガーデン

【スキル】召喚士(D): Lv10
・アーティファクト召喚(9/10)
・ランクアップ召喚(3/3)
・スキルP:333

【装備アーティファクト】
・スロット1:『良質な剣(D):Lv9』
・スロット2:『ゴブリンの帽子(D):Lv9』
・スロット3:『ゴブリンアーマー(D):Lv9』
・スロット4:『ゴブリンのグローブ(D):Lv9』
・スロット5:『ゴブリンの草履(D):Lv9』

【能力値】
・ATK:15『+300』
・DEF:18『+150』
・SPD:21『+150』
・MP:25『+150』

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 これが現状のアーサーのステータス。

(とにかく行ける所まで進もう。アーティファクトがちょっと強くなったからといっても油断は禁物だ)

 気を引き締めたアーサーは遂にフロア5から上のフロアに足を進める。出現するモンスターは変わらずスライムとゴブリンばかり。だが出現数や個体の強さが徐々にではあったが確実に増していた。

 しかし、新たに手に入れたDランクアーティファクトもまた確実にアーサーの力を高めている。順調にスライムとゴブリンを倒しまくったアーサーが辿り着いたのはフロア10。今彼の目の前には重厚な石の扉が立ち塞がっていた。

「ここが最初のボスのギガスライムか。まさか本当に来てしまうとは。以前の僕なら考えられない」

 一呼吸置き、気持ちを固めたアーサーは力一杯石の扉を開く。待っていたのは広く空けた空間と大きな松明の炎。そしてそんな広い空間の丁度中央に、そいつはいた。

「あれがギガスライム――」

 そこにいたのは今まで散々倒してきた最弱のスライム。だが明らかに今までのスライムとは様子が違う。大きさも一回り以上大きく、感じる魔力も普通のスライムより強い。部屋に入ってきたアーサーに気が付いたのか、徐に目が合ったギガスライムは部屋中に響く鳴き声を上げてそのままアーサー目掛けて突撃してきたのだった。

『ピピーッ!』

 ギガスライムはその青いボディで勢いよく体当たりを狙う。対するアーサーは剣でギガスライムの攻撃を受け止めた。

 流石はボス。やはり普通のスライムと比べてパワーもスピードも上。

 しかし。

 やはりアーサーはそれ以上に強くなっていた――。

「これがフロア10のギガスライムの力……。思っていた以上に強くないかも」

 ギガスライムの体当たりを受け止めたアーサーはそこから剣を振るってギガスライムを弾き飛ばす。そしてグッと地面を蹴って距離を詰めたアーサーはその勢いのまま剣を振り下ろした。

『ピギィィィ……!』
「よし、これならいける」

 フロア10のギガスライムを一刀両断したアーサー。
 決して敵が弱かった訳ではない。ギガスライムを見くびったハンター達がEランクアーティファクトのまま挑んで帰らぬ人となった事案も数多い。

 アーティファクト召喚――。
 無能と謳われた彼の唯一無二にして最強のスキルが、誰にも知られず静かにであるが確かにその真価を発揮した瞬間であった。

『フロア10のギガスライムを討伐しました。魔鉱石(中)を獲得。スキルPが20P追加されました』な

(うおー。一気に20Pも増えた! やっぱ上のフロアは凄い。確か次のレベルアップに必要なのが1,100Pぐらいだったから、まだ半分にも達していないか。でもこれなら後40回も周回すれば余裕で集められるぞ)

 ギガスライムを倒したアーサーはまだ余力がある。嘘みたいにテンポよく進んでいた彼はこのまま更に上のフロアに進む事を決める。

 優先するはフロアの攻略とスキルPの獲得。正直まだCランクまでランクアップ召喚が可能なのかも分からないが、それでもスキルレベルが上げられるのなら上げる他ない。その後もアーサーはフロア11、12、13……と快調に攻略を重ね、あれよあれよという間に遂に新Eランク最終となる“フロア19”まで上り詰めたのだった。

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~ダンジョン・フロア19~

「やば。遂にこんな所まで辿り着いてしまった」

 今アーサーの目の前にはフロア10の時よりも更に大きな扉が待ち構えていた。この先にいるのはビッグゴブリン。まだ対峙していないにも関わらず、扉の向こうから感じてくる魔力をアーサーはしかと感じ取れた。

(本来ならDランクアーティファクトを装備していても比較的複数人のパーティを組んで挑むのが無難なボス。いくら装備がランクアップしたとはいえ、やっぱここを1人で行くのは無茶か……?)

 扉を前にアーサーは一旦冷静に。

 “約束はちゃんと守ってね”。

 リリアとの会話も頭に過り、やはり誰かとパーティを組んで確実に討伐を狙った方がいいなと思いついたアーサー。

 だが。

「どうしよう。ここまで来て調子に乗ってるのかな……? ワクワクが抑えられない――」

 アーサーは目の前の扉を見て僅かに口角が上がる。

 もっと稼ぎたい。
 もっと上のフロアに挑みたい。
 もっともっと自分が見た事のない景色を見てみたい。
 もっともっと先の可能性に辿り着きたい。

(ごめんなさいリリアさん。やっぱり僕はここまで来て引き下がれません。無茶ではなくて、確実に超えられる自信があればリリアさんも許してくれますよね? 絶対に生きて帰りますから)

 アーサーは自分に言い聞かせる様に決意を固めると、いざ力強く前へ進み扉を開けた。

「さぁ。勝負だビッグゴブリン!」

 部屋はフロア10の雰囲気と大して変化はない。目の前にいるボスがただギガスライムがビッグゴブリンに変わっただけ。しかしギガスライムの時よりも明らかに空気が殺伐としていた。

『グアァァァ!』

 鋭い目つきでアーサーを捉えたビッグゴブリン。
 優に3メートルは超えるであろう体格と、手には岩をも簡単に砕きそうな巨大な棍棒が握られていた。

 過去に『黒の終焉』に所属していた際、アーサーは数回だけフロア40前後に行った事もある。そしてその時にギガスライムやビッグゴブリンよりも強いモンスターと遭遇した経験もある。

 しかしその時とは違い、今は複数人のパーティでもなければ荷物持ちでも雑用枠でもない。自分1人であり最前線。目の前に対峙するビッグゴブリンはアーサーにとって間違いなく今までの中で最強の敵であった。

「すげぇ圧……。ワクワクしてるのかビビってるのか自分でも分からなくなってきた」

 そして。

 ビッグゴブリンが再び激しい咆哮を上げると、その巨体に似つかない速さで一瞬でアーサーとの間合いを詰めて振り上げた巨大な棍棒を勢いよく振り下ろす。

 ――ドゴォォン。
「ぐッ!? 想像以上の速さと威力……!」

 紙一重でビッグゴブリンの棍棒を躱したアーサー。棍棒が地面を捉えると、その衝撃によって砕かれた地面が辺りに飛び散った。

 だがピンチはこれで終わり。

 次の瞬間、棍棒を躱して瞬時に態勢を立て直したアーサーはそのままビッグゴブリンの丸太の様な太い腕を斬りつける。

『グギャ……!?』

 切り口から人間とは違う色の血飛沫が舞い、アーサーは今の攻撃で怯みを見せたビッグゴブリンに対し更に追撃。これまで何百体と倒したゴブリンとの戦闘経験が功を奏し、アーサーは流れる様な動きでビッグゴブリンの首を斬り落とす事に成功するのだった――。