♢♦♢
~リューティス王国王都・城~
「改めて、3人共昨日はご苦労であった。そして騎士団への入団おめでとう。君達のような実力者が入ってくれて私も大変嬉しく思う」
城での実力テストから一夜明けた今日、エレン達は再びレイモンド国王に城に呼ばれていた。
「今日来てもらったのは他でもない、昨日も話した君達の配属先についての決定を発表する」
そう。エレン達が国王に呼ばれた理由はこれ。
リューティス王国の騎士団は数千人以上が所属する大組織であり、騎士団内では色々な役割や部隊が幾つも分かれている。エレン達のような新米はどこかの部隊に配属されるのが決まりとなっている。
「エレン・エルフェイム、アッシュ・フォーカー、エドワード・グリンジ。以上3名は本日をもって王国騎士団への入団を正式に認められた騎士団員となり、今日付けで“護衛隊”への配属を任命する――」
「「はい!」」
レイモンド国王から配属先を告げられたエレン達は力強く返事をした。
**
「マジか。俺が用あるのは“戦線部隊”だったのによ」
「ちょっと、そんな事絶対にマリア王女とかレイモンド国王の前で言わないでよ!」
「落ち着いて下さいアッシュ。まだ幾らでもチャンスはありますよ」
配属先を伝えられたエレン達一行。
彼らは護衛隊の“ダッジ団長”に案内され、護衛隊が寝泊まりする宿舎へと向かっている。
「改めて、俺の名前はダッジ・マスタング。一応お前達が今日から配属する護衛隊の団長を務めている。宜しくな」
ダッジ団長はスキンヘッドに髭を蓄えたかなり強面の男性。体も大きく筋骨隆々なせいか、余計に見た目の強面感を強めている。だが話す口調や態度からはとても優しを感じるエレンだった。
宿舎は広大な城の敷地の一角に存在するらしく、向かうまでの道中でダッジ団長が簡単に騎士団の事を説明してくれた。
「王国騎士団は俺らの護衛隊、戦線部隊、憲兵隊と大きく3つに分かれていてな、まぁ簡単に説明すると、憲兵隊は主に王都や王国全体の安全や治安維持に努める部隊。
戦線部隊って言うのは言葉通り戦線に出て戦う者達の部隊だ。戦線部隊は紛争や戦争といった類の戦いには最前線に行くのが決まりだ。
そしてこの護衛隊。
これもまた言葉通り、主な役割は国王や王族の護衛だ。中でも俺達“王女護衛隊”はマリア王女の命を最優先に守る隊となる」
ダッジ団長の簡易的な説明を聞いたエレンは安堵の表情で第一に胸を撫で下ろした。
(よかった~。戦線部隊なんかに配属されたら逃げ出すしかなかったよな)
そんな事を思うエレンの隣で、アッシュは不満そうな顔でダッジ団長に尋ねた。
「この配属部隊って変更は可能なのか?」
「出来る事は出来るが、それには申請が必要だ。そこで通れば問題なく部隊の変更は出来るぞ」
「だったら今すぐその申請とやらをするか」
「こらこら。また何を自分勝手な事ばっかり言ってるんだよ君は!(本当にどういう神経しているんだこの男)」
エレンとアッシュのやり取りを見たダッジ団長は急に笑い出す。
「ハッハッハッハッ! やっぱり若いってのは勢いがあって良いな。お前達の強さは昨日聞いた。そっちの可愛い顔した坊やはあのローゼン総帥と手合わせしたらしいな。
生憎、騎士団は今人手不足。戦争が休戦しているからこそ戦線部隊の奴らも動けるが、これでまた戦争が始まったらヤバいだろうな。
だからお前達みたいな強い奴は、戦線部隊よりもここぞという時に強さを求められる護衛隊に配属されたのさ。
(まぁ国王に聞いた話じゃ、配属の理由の半分はマリア王女の強い希望を断り切れなかったという事らしいが……こっちの2人はまだしも、この青髪の坊主は面倒くさそうだから本当の事は黙っておくか)」
団長にまで上り詰めた者はその実力は当然の事ながら、プラスα人を束ねたり統括する能力が必要となる。そういった面でダッジは人を見る力があると言えよう。
「さて、ここがお前達も生活する護衛隊の宿舎だ」
案内されたエレン達の前には、小汚いイメージのある傭兵部隊とは全然違う立派で綺麗な宿舎が建てられていた。本当にここが団員の宿舎なのかと確認したくなる程の外観。
「じゃあ中もサラッと案内するから付いて来てくれ」
宿舎の中は外観同様大きく綺麗。
最低限の生活の為なのか物は少ない。だから余計に空間が広く見える。
「1階は共用のリビング、食堂、大浴場などがある。全部で6階あるが、俺達王女護衛隊は3階。残りの階は他の王族の護衛隊達が使ってる。
先にお前達の部屋に案内しよう」
ダッジ団長に続き、エレン達は階段を登って3階へとやって来た。
「ほら、ここがお前達の部屋だ」
そう言ったダッジ団長の視線の先には部屋が2つ。
(ん? 2つだけ……?)
エレンは真っ先に嫌な気配を感じ取った。
「えーと、たしかこっちは既に1人使っているから……残り1人とそっちの部屋が1つだな。好きに分かれてくれていいぞ」
(やっぱり。最悪だ……!)
嫌な予感は見事に的中した。
ダッジ団長の言葉を聞いたエレンは絶句の表情。
(うわああ……! あり得ないあり得ないあり得ないッ! これって相部屋って事でしょ!? どっちに転んでも詰んでるじゃん!)
まさかの男2人の相部屋。
言葉を失ったエレンはみるみるうちに青ざめていくのだった――。
~リューティス王国王都・城~
「改めて、3人共昨日はご苦労であった。そして騎士団への入団おめでとう。君達のような実力者が入ってくれて私も大変嬉しく思う」
城での実力テストから一夜明けた今日、エレン達は再びレイモンド国王に城に呼ばれていた。
「今日来てもらったのは他でもない、昨日も話した君達の配属先についての決定を発表する」
そう。エレン達が国王に呼ばれた理由はこれ。
リューティス王国の騎士団は数千人以上が所属する大組織であり、騎士団内では色々な役割や部隊が幾つも分かれている。エレン達のような新米はどこかの部隊に配属されるのが決まりとなっている。
「エレン・エルフェイム、アッシュ・フォーカー、エドワード・グリンジ。以上3名は本日をもって王国騎士団への入団を正式に認められた騎士団員となり、今日付けで“護衛隊”への配属を任命する――」
「「はい!」」
レイモンド国王から配属先を告げられたエレン達は力強く返事をした。
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「マジか。俺が用あるのは“戦線部隊”だったのによ」
「ちょっと、そんな事絶対にマリア王女とかレイモンド国王の前で言わないでよ!」
「落ち着いて下さいアッシュ。まだ幾らでもチャンスはありますよ」
配属先を伝えられたエレン達一行。
彼らは護衛隊の“ダッジ団長”に案内され、護衛隊が寝泊まりする宿舎へと向かっている。
「改めて、俺の名前はダッジ・マスタング。一応お前達が今日から配属する護衛隊の団長を務めている。宜しくな」
ダッジ団長はスキンヘッドに髭を蓄えたかなり強面の男性。体も大きく筋骨隆々なせいか、余計に見た目の強面感を強めている。だが話す口調や態度からはとても優しを感じるエレンだった。
宿舎は広大な城の敷地の一角に存在するらしく、向かうまでの道中でダッジ団長が簡単に騎士団の事を説明してくれた。
「王国騎士団は俺らの護衛隊、戦線部隊、憲兵隊と大きく3つに分かれていてな、まぁ簡単に説明すると、憲兵隊は主に王都や王国全体の安全や治安維持に努める部隊。
戦線部隊って言うのは言葉通り戦線に出て戦う者達の部隊だ。戦線部隊は紛争や戦争といった類の戦いには最前線に行くのが決まりだ。
そしてこの護衛隊。
これもまた言葉通り、主な役割は国王や王族の護衛だ。中でも俺達“王女護衛隊”はマリア王女の命を最優先に守る隊となる」
ダッジ団長の簡易的な説明を聞いたエレンは安堵の表情で第一に胸を撫で下ろした。
(よかった~。戦線部隊なんかに配属されたら逃げ出すしかなかったよな)
そんな事を思うエレンの隣で、アッシュは不満そうな顔でダッジ団長に尋ねた。
「この配属部隊って変更は可能なのか?」
「出来る事は出来るが、それには申請が必要だ。そこで通れば問題なく部隊の変更は出来るぞ」
「だったら今すぐその申請とやらをするか」
「こらこら。また何を自分勝手な事ばっかり言ってるんだよ君は!(本当にどういう神経しているんだこの男)」
エレンとアッシュのやり取りを見たダッジ団長は急に笑い出す。
「ハッハッハッハッ! やっぱり若いってのは勢いがあって良いな。お前達の強さは昨日聞いた。そっちの可愛い顔した坊やはあのローゼン総帥と手合わせしたらしいな。
生憎、騎士団は今人手不足。戦争が休戦しているからこそ戦線部隊の奴らも動けるが、これでまた戦争が始まったらヤバいだろうな。
だからお前達みたいな強い奴は、戦線部隊よりもここぞという時に強さを求められる護衛隊に配属されたのさ。
(まぁ国王に聞いた話じゃ、配属の理由の半分はマリア王女の強い希望を断り切れなかったという事らしいが……こっちの2人はまだしも、この青髪の坊主は面倒くさそうだから本当の事は黙っておくか)」
団長にまで上り詰めた者はその実力は当然の事ながら、プラスα人を束ねたり統括する能力が必要となる。そういった面でダッジは人を見る力があると言えよう。
「さて、ここがお前達も生活する護衛隊の宿舎だ」
案内されたエレン達の前には、小汚いイメージのある傭兵部隊とは全然違う立派で綺麗な宿舎が建てられていた。本当にここが団員の宿舎なのかと確認したくなる程の外観。
「じゃあ中もサラッと案内するから付いて来てくれ」
宿舎の中は外観同様大きく綺麗。
最低限の生活の為なのか物は少ない。だから余計に空間が広く見える。
「1階は共用のリビング、食堂、大浴場などがある。全部で6階あるが、俺達王女護衛隊は3階。残りの階は他の王族の護衛隊達が使ってる。
先にお前達の部屋に案内しよう」
ダッジ団長に続き、エレン達は階段を登って3階へとやって来た。
「ほら、ここがお前達の部屋だ」
そう言ったダッジ団長の視線の先には部屋が2つ。
(ん? 2つだけ……?)
エレンは真っ先に嫌な気配を感じ取った。
「えーと、たしかこっちは既に1人使っているから……残り1人とそっちの部屋が1つだな。好きに分かれてくれていいぞ」
(やっぱり。最悪だ……!)
嫌な予感は見事に的中した。
ダッジ団長の言葉を聞いたエレンは絶句の表情。
(うわああ……! あり得ないあり得ないあり得ないッ! これって相部屋って事でしょ!? どっちに転んでも詰んでるじゃん!)
まさかの男2人の相部屋。
言葉を失ったエレンはみるみるうちに青ざめていくのだった――。