さて、一夜明けて朝が来た。

俺は2日酔いとは縁がないので、気分良く起きれた。

今のところ、2日酔いになったことはない。

叔父上は今頃、きっと頭を抱えて唸っているだろう。

仕方ないので、起きたら回復魔法をかけてあげよう。

昨夜叔父上と飲んだおかげで、スッキリしたしな。

とりあえずは、色々なことを受け入れることにした。

親父のこと、兄貴のこと、これからのことなどを。

すると、ノックが聞こえた。

「ユウマ様、起きていらっしゃいますか?」

「ああ、セバスか。起きてるよ」

ドアを開け、セバスが入ってくる。

「ユウマ様、おはようございます。本日のご予定は、いかがしますか?」

「ああ、おはよう。今日も仲間達が来るから、食事の準備を頼めるか?」

「ええ、畏まりました。昨夜は遅いこともあり、すぐにお帰りになられましたからね。今日は、食事会を兼ねた親睦会ということで、よろしいですか?」

「ありがとう。話が早くて助かるよ。そうゆうことだ、よろしく頼む」

「畏まりました。では、準備をいたします。失礼します」

そう言い、部屋を出ていった。

「相変わらず、優秀な人だなぁ。セバスがいなかったら、今頃うちは潰れていただろうな……」

俺は、しみじみ思う。

「さて、今日は王城に継承についての手紙を出すだろ。あとは……」

継承自体は各々の家で出来るが、形式的に国王様の許可がいる。

なので手紙を出し、城に行く日を決めなくてはならない。





朝食を済ませた俺は、手紙を書くことにする。

「あー、言葉使いが難しい……」

「ユウマ様、ここはこのような書き方がよろしいかと」

「あ、なるほど。ありがとう、セバス。いや、本当に助かるよ」

「ふふ、これから慣れていきましょう」


セバスの手伝いもあり、午前中のうちに書き終えることが出来た。

その手紙を王家専用の配達人に渡したところで、仲間達がやってきた。

「おう、いらっしゃい。ついでだ、そのまま付いてきてくれ」

俺は仲間を引き連れ、食堂に向かった。

中に入ると、バイキング形式になっていた。

俺が親睦会と言ったので、こういう形式にしたのだろう。

「じゃあ、各々好きな物を取って席についてくれ。そして、それぞれ交流を深めてくれ」

仲間達は頷き、それぞれ散って行く。

俺も好きな物を取って、どこに座ろうかなと思っていると、声をかけられる。

「お兄ちゃんー!こっちこっち!」

俺がそちらを見ると、エリカとシノブが座るところだった。

「どういう組み合わせだ、これは?」

俺も、同じ席に着く。

「昨日は時間がなくて聞けなかったけど、結局お兄ちゃんとシノブさんはどんな関係なの?妹としては気になるよ!」

すると、いつの間にか母上も来て、席に着く。

「あら、母としても気になるわね」

「うーん……俺とシノブの関係ね。難しいな」

「団長と私は乱れた関係で」

「お前はちょっと黙ってろ」

「はいはい、わかりましたよー」

すると、シノブがポテトをつまみながら話しはじめる。
あれ?おかしいな?黙れと言わなかったっけ?

「そうですねー……私が団長に子作りを迫っているけど、スルーされてる感じですねー」

2人がまあ!と声を合わせた。

「ユウマ!女の子にそんなこと言わせるなんて……母は、貴方をそんな子に育てた覚えはありませんよ!」

母上はとても厳しい顔だ。
母上は、怒ると怖い。

「お、お、お兄ちゃん!?」

エリカは内容を理解したのか、挙動不審だ。
うん、相変わらず可愛い。

「いやいや!ちょっと待って!それには、事情があるんだよ!ていうか、色々端折りすぎだろ!?そんでもって、さっきからポテトばっか食べてんじゃねえ!!」

モグモグ、ゴックン、ズズズー。

「はぁ、団長なんですか?そんなに怒鳴って。身体に悪いですよ?」

「お前のせいだよ!!まったく……話が進まんから、黙ってろよ?フリじゃないからな?」

「はーい、わかりましたよー」

「話すと、ちょっと長くなるな……。まずは、シノブの出身は亜人国エデンだ。その国の中で、古代真祖ヴァンパイアの血を受け継ぐ、忍者の里と呼ばれる少数部族の出身だ。この種族は特殊でな、何故か8割ほどの確率で女の子が生まれるらしい。しかも、あらゆる能力が女性の方が高いのが特徴だ。そこで近親婚を避けるために、初潮を迎えた女性は婿探しの旅に出るらしい。それで、人によっては子種だけ貰い帰る人もいる。本人の了承が得られれば、婿として連れて行くらしい。ここまで、いいか?」


「あら、そんな種族がいるのね」

「わたしぐらいの年齢で、出て行くなんてスゴい!」

「それで、俺が16の時にこいつに絡まれてな。そのまま戦うことになって、ギリギリで俺が勝ったのだが……その後いきなり子種ください!と言われた訳よ。俺はヤバイ奴だと思い、逃げたんだよ……それで、今日《こんにち》に至る」

「団長、仕方ないじゃないですかー。2年放浪して、同世代で自分より強い人を見つけたんですからー」

「いや、俺より強い奴はいくらでもいるぞ?」

「団長は、シグルドさんが身近にいるから気づいていないだけで、かなり強いですよー」

「それこそ、シグルドじゃダメだったの?独身だし」

「それが難しいところでして、強ければ良いって訳ではないんですよー。うーん……優秀なのは大前提です。でも、大事なのは直感なんですよ。多分、本能的にわかっているのかと。この人の子なら強くなると。シグルドさんには会いましたけど、しっくりこなかったので」

「それは同じ女性として、理解出来るわ。私も夫はタイプじゃなかったけど、なんか不器用で放っておけなかったのよね。まあ、あんな風にになってしまうとは、思ってもいなかったけど」

「へー、そういうものなんだ?わたしには、まだわかんないや」

「エリカは、わからんでいい!!」

「でた、団長のシスコン発言!ずっと妹が可愛いって言ってたもんね」

その発言を受けたエリカは、恥ずかしそうに俯いてしまった……尊い。

「本当に昔からそうなのよ。えっと、シノブさん?そうなると、ユウマは当主になるから連れていかれると困るのだけれど……」

「あ、それはもうないので安心してください。今は1人の忍びとして、団長に命を捧げましたから。それに何だかんだ言っても、今の生活を気に入ってますし。もちろん団長と、そういう関係になれれば嬉しいですよー。でも、その場合妾でも何でもいいので。ただ、側にいられたら満足です」

「そう、なら母としては言うことはないわ。我が国は甲斐性さえあれば、一夫多妻でも問題ありませんし。こんな楽しくて、可愛らしい子なら大歓迎よ」

「わたしも!話してて楽しいし、可愛いもん!」

「団長ー!家族公認ですよ?これは、もうチェクメイトじゃないですかー?」

俺は外堀が埋められるのを見ながらも、抵抗する!

「いや、まだだ!まだいける!俺は諦めない!」

ちなみに、俺はシノブを憎からず思っている。

なのに頑なに手を出さないのには、《《ある理由があった》》。

だが親父が死んだことで、断る理由がなくなった。

兄貴より先に子供を作ると、お家騒動に発展する可能性があったからだ。

しかし、その心配はもうしなくてもいい。

でも、俺は思う。

散々断っておきながら、今更どうすればいいんだ?と。

「もう、強情ですねー。まあ、気長に待ちますねー」

俺は形勢が不利見て、立ち去ろうとする。

すると、女性陣から言われる。


「逃げたわ」「にげたね」「逃げましたねー」

俺は戦略的撤退だ!と自分に言い聞かせ、その場を離れる。

だが、さっきの妾の話で気がついた。

あれ?そうか、俺当主だから嫁さんとらなきゃなのか。