突然だが、デュラン王国は剣の国だ。

剣が強いことが、一種のステータスになる。

なので我が国には、初代国王が定めた、剣のみ使用可能な大会がある。

その大会は3年に1回で、15歳から参加可能である。

そこで優勝した者は、剣聖の称号を与えられる。

そして、初代国王の遺言がある。

優勝者は、次の大会がある3年後まで衣食住を与えられ、伯爵相当の扱いを受ける。

だが、次の大会の優勝者との戦いに負ければ剥奪、勝てば防衛となる。

そして大会を三連覇した者には偉業を称え、永世剣聖の称号と、一代限りだが名誉伯爵を名乗ることを許される。

ちなみに、建国500年の間に、それを成し遂げた者は5人しかいない。

もし三連覇を達成した者が現れた場合にも、遺言が残されている。

三連覇する程の人物を腐らせてはいけないと言うことで、三連覇をした者には命令拒否権が与えられる。

それは、たとえ国王であろうとも例外はない。

俺の親父もそうだったが、剣1本で生きてきた人が政治の腐敗した部分や、軍内部の闘争に巻き込まれて、歪んでしまうのを防ぐためだと思われる。

さて、何故長々と話したかというと、理由がある。

今、俺の目の前にいる人こそ歴代最強の永世剣聖であり、初代国王デュランの再来と言われる、俺の叔父上でもあるシグルドその人だからだ。

身長は185ほどで、年齢は30歳。

無駄な筋肉などない、筋肉隆々の身体の持ち主だ。

黒髪黒目で、髪は腰よりも長いのを、一本に縛っている。

シグルド叔父上は入ってくるなり、怒鳴りだす。

「ランド兄貴とバルスが死んだって!?たく、兄貴は弱いくせに無茶するからだ……馬鹿野郎が!」

「叔父上落ち着いてください。今の今まで寝てたんですか?」

「すまん、今日の朝まで飲んでいてな。さっき起きたら、手紙が入っててよ。それ見て、飛んできた」

俺はため息を吐く。

「叔父上?酒好きもほどほどにと、申し上げましたよね?とりあえず、そこを動かないでください」

俺は叔父上に近づき、呪文を唱える。

「かの者に宿る異物を取り除け、リムーブ」

「おー!スッキリした!相変わらず、お前の回復魔法は便利だな!」

「いや、本来の用途とは全然違うのですけど?」

「ハハ!良いじゃねえか!細かいことは気にすんな!」

「叔父上は、もう少し気にしてください!」

「わかった、わかった。で、これからどうなる?」

「とりあえず、俺が爵位を継ぐ予定です。叔父上代わります?一応叔父上にも、権利はありますよ?」

「勘弁してくれ、俺には向かん。お前に任せる!お前なら安心だ!」

「……ただ、面倒なだけでしょ?」

「……そうとも言う。しかし、散々継がせないと言われていたお前が継ぐことになるとは、人生はわからないものだ……」

「そうですね……まさかこうなるとは、予想もつかなかったです」

「で、どうした?なにか暗い顔に見えるが?」

「……叔父上には誤魔化せないですね」

「当たり前だ。何年お前の師匠をやっていると思ってるんだ」

「はは、敵わないな……。いや、俺さ……2人が死んでも全く悲しくなくてさ。エリカや母上が泣いているのを見て、俺は冷たい人間なのかなって」

「まあ、お前の境遇を考えれば無理もないと思うがな」

「あと、どちらかが生き残らなくて良かったとも思ってしまってさ……」

「ふむ、それはどうしてだ?」

「だって親父が残るにしろ、兄貴が残るにしろ、家は揉めることになる」

「家臣は、ユウマに継がせようとするだろうな。お前は人気あるからな」

「俺はいたって、普通のことしかしてないんだけどね。挨拶をする、お礼を言う、謝るくらいだし」

俺は、いつも思っていた。
何故、家臣におはようございますと言われても、返事をしないのかと。
家臣が助けてくれたのに、何故お礼を言わないのかと。
自分がミスをしたのに、何故謝らないのかと。


「それが出来ない奴が、貴族には多いからな。だから俺は、そういうのとは縁を切ったんだ」

「でしょうね。俺に務まるかな?」

「逆に、お前以外には務まらん。俺はもう家を追い出されて軽く10年以上経つ。今更だ。お前はちょくちょく顔を出していたし、好感度高いから問題ないだろ」

そうなのだ、叔父上は親父から絶縁状を渡されている。

理由は簡単だ。
次男である叔父上の才能に嫉妬した親父が、自分の地位が脅かされると思い、そうしたんだ。
なんとも、情けない話である。

まあ、それこそが俺が親父に嫌われた原因でもあるのだけど。
俺も次男なのに、兄貴より剣の腕が良かったので、被って見えたのだろう。
叔父上には、特別可愛がってもらってたしな。

ちなみに、そのことで叔父上を恨んではいない。
むしろ、親父の器の小ささを申し訳なく思うくらいだ。


でもまさか親父も、絶縁した弟が5年後に剣聖になるとは、思ってもみなかっただろう。

「わかりました。とりあえずやってみます」

「まあ、悲しめない点については気にするな。俺とエリス義姉さんは、兄貴とバルスの優しかった頃を知っている。エリカも小さい頃は可愛がってもらってただろう?ただ、お前は物心ついた時には、親父とバルスから虐げられていた。だから、無理もない。それに俺にも責任はあるしな……」

「叔父上は悪くありません!悪いのは、あのクソ親父です!俺は、叔父上には感謝しかしていません!叔父上は、親父や兄貴に虐げられていた俺に、色々なものを与えてくれました!叔父上がいなければ、俺は間違いなく歪んでいた!」

「ユウマ……へへ、そうか。俺の罪も、少しはマシになったかね」

「叔父上……」

「よし!今日は2人で飲むか!そんで、お互いに嫌なもの吐き出して、明日からは前を向いて生きるぞ!」

「いや、さっきまで酔っ払ってましたよね!?また飲むんですか!?」

「馬鹿野郎!飲まずに話せるか!ほら、行くぞ!」

叔父上はそう言い、部屋を出ていく。

俺は、慌ててついていく。

そして、その背中を見ながら思う。

照れ臭くて絶対に言えないけど、父親の愛情を知らない俺は、貴方を父親のように思っていると。