皆が、それぞれノイズに言葉をかけている。

「では、また会いましょう!」

「おう!気をつけて帰ってくれ。また、会おう!」

こうして、ノイズは去って行った。

「さて、寂しいが仕方ないよな。よし、行くぞ」





俺が仲間を引き連れ、家に帰るとセバスが待っていた。

「ユウマ様、お帰りなさいませ。そしてお仲間の皆様も、ようこそいらっしゃいませ」

「ああ、ただいま。皆は、揃っているかな?」

「シグルド坊ちゃん以外は、揃っております」

「まあ、叔父上はまだ寝ているかもな。仕方ない。皆、付いてきてくれ」

俺は、家の中を興味深そうに眺めている仲間達を引き連れ、会議室の中に入る。

「すまない、待たせたな」

「大丈夫よ。こちらも使用人などに、説明を終えたところだから」

「母上、ありがとうございます。本来なら、俺の仕事なのに……」

「いいのよ。私も何かしていないと、落ち着かなくて……じゃあ、紹介してくれる?」

「そうですか……。ええ、紹介します。皆、好きな所に座ってくれ」

皆が座る中、シノブは何故か動かない。

「おい?どうした?」

「私は、団長の隣が良いです!」

「はいはい、好きにしてくれ」

「んー!団長のデレ期はいつ来るんですか?」

「知らん、そんなもん」

俺が上座に位置に座ると、シノブは横に座る。

そして、そのやりとりを見ていた身内から、声が聞こえてくる。

「凄い可愛い人だけど、お兄ちゃんの彼女かな?」

「あら?もう、お嫁さんを連れてきたのかしら?」

俺はとりあえず、聞こえないふりをする。

「皆忙しい中、集まってくれてありがとう。俺自身まだ実感はないのだが、このミストル男爵家を継ぐことになった。で、とりあえず自己紹介をしていこう。必要なのは名前、年齢、俺との関係性、あとは任せる」


「では、ユウマの身内から順番にしましょう。まずは私からね。私の名前はエリス。ユウマの母です。年齢は……内緒よ」

母上は身長165ほどの、メリハリのある体型の美女だ。
腰まである銀髪と、碧い目が特徴的だ。
ちなみに、銀髪は回復魔法に適性ありの証だ。

「すげー美女だなぁ」

「団長に似ていますね!」

「将来のお義母様?」

最後になんか聞こえたけど、気にしない。

それを聞いた母上は、背筋を伸ばし微笑む。
うん、相変わらず綺麗な母上だ。
とても、40を……ゲフン、ゲフン。
いけない、危うく叱られるところだった。

「じゃあ、次はわたしかな?わたしの名前はエリカです!12歳です!ユウマお兄ちゃんの妹です!いつも、お兄ちゃんがお世話になってます!」

「あれが、噂の……」

「ああ、団長が溺愛しているっていう……」

「確かに、可愛らしいですわね」

「あの子が、将来の義妹かー」

最後にまた何か聞こえたが、気にしない。
気にしたら、負けである。

エリカは身長150ほどの美少女だ。
大事だからもう一度言おう、美少女だ。
母上に似て、将来は間違いなく美女になるだろう。
ただ髪と目の色は、親父似の黒だ。

ちなみに冒険者仲間の発言を聞き、耳まで真っ赤で俯いている。
なんだ、ただの天使か。
ふ、相変わらず可愛い妹だ。


「次は、私でございますね。私の名前はセバス。年齢は60歳で、執事長を務めております。ユウマ様が生まれた頃から、お世話をしていた者でございます」

セバスは身長180ほどで、白髪の似合う、とてもダンディな人である。
髪はきっちりしたオールバックで、いつも執事服を綺麗に着こなしている。
ちなみに、おねしょを隠蔽してもらったことがあるので、頭が上がらない。
まだ6歳だったから、セーフなはず……セーフだよね?

「私で最後ですね。私の名前はクリス。年齢は60歳で、メイド長を務めております。私もセバスと同じで、ユウマ坊ちゃんをお世話していた者でございます。ちなみに、セバスの妻でございます」

クリスは身長155ほどで、手入れの行き届いた白髪を一本に束ねている。
笑顔がとても素敵で、みんなのおばあちゃん的存在だ。

ちなみに俺が物心ついた時には、祖父母は亡くなっていた。
なので、セバスとクリスは俺とエリカにとって、祖父母のような存在である。

「じゃあ、次は俺の仲間の紹介だな」

「え?お兄ちゃんはしないの?」

「え?俺もするの?」

「私お兄ちゃんの職業とかランクとか、よく知らないもん」

「あー……言われてみれば、そうだな。わかった」

俺は若干照れ臭いが、自己紹介をすることにする。

「えー知っているとは思うが、今回男爵の爵位を継承することになるユウマ-ミストルだ。年齢は20歳。職業は冒険者兼貴族ってことかな。冒険者ランクは4級で、得意なのは剣と回復魔法だな。このパーティーの団長で、役割は前衛ヒーラーと言ったところだ。これから色々迷惑をかけるだろうが、よろしく頼む」

「母は、息子が立派に成長して嬉しいわ……」

「ユウマ坊ちゃん……ご立派になられて……」

「よ!バーサクヒーラー!」

最後のは、俺の二つ名みたいなものだ……どうにかならんかね?


ちなみに俺の容姿は、母上そっくりらしい。
身長175くらいで、母上譲りの銀髪に碧い目。
体型は、細く引き締まった感じかな。
昔は、女の子に間違われるくらいだった。

……嘘をついた。今でも、たまに間違われる。
なので、俺は男らしい人に憧れている。
そう、叔父上のような。


「よし、俺の家族の紹介は終わったな。では、冒険者仲間の紹介をしよう。ますは、アロイス」

さて、誰も余計なことは言うなよ?……シノブが不安だ。

「へい、了解です。俺の名前はアロイス。年齢は30歳。職業は冒険者で、4級だ。このパーティーの副団長で、前衛をしていやす。団長とは、5~6年の付き合いですかね。年は離れていますが、おれみたいな見た目の奴にも分け隔てなく接したり、身を呈して仲間を守る姿に惚れ込みやした」

「確かに、厳ついわね……」

「でも、お兄ちゃんが一番頼りになるって言ってたよ!」

 まあ、アロイスは見た目で誤解されやすいからなぁ……。
 アロイスを一言で表すなら、山賊風の男だ。
 身長190越え、筋肉隆々、黒髪の角刈り、背中には斧を背負っている。

 俺も初めて見た時は、恐怖したものだ。
 だが、中身は男前で優しく、みんなが頼りにしている兄貴的存在だ。

「はいはーい!次は、私ですね!名前はシノブで、年齢は18歳です。職業は冒険者で、ランクは3級です。このパーティでは、諜報、斥候、探索を担当してますよー。団長とは4年くらいの付き合いで、生涯を捧げた相手かなー」

「え!?やっぱり!?」

「あらあら」

「ユウマ様もー隅に置けませんな」

 俺は心を落ち着かせ、突っ込んだら負けだと自分に言い聞かせる!

 ちなみにシノブは身長160ほどで、均整のとれた顔とスタイルの持ち主だ。
 常に、黒装束を身に纏っている。
 黒髪ロングのポニーテールで、通常は《《黒目》》である。

 まあ見ての通りのお調子者だが、俺のパーティで唯一の3級だけあって、その腕は一流の域に達している。


「じゃあ、次はアタイかね。アタイの名前はアテナ。年齢は25歳。職業は冒険者で、ランクは4級だよ。このパーティで、斥候、狙撃を担っているよ。団長とは、3年くらいの付き合いなるかね。よくある話で、仕事でヘマをした時に助けてもらってね。そんなに長居するつもりはなかったんだけど、居心地が良くて、結局そのまま居ついているよ」

「え!?全然見えない!?」

「わたしくらいに見える!」

 アテナは必死に怒りを抑えている。
 すまん!アテナ!良く耐えた!

 まあ、母上とエリカがそう思うのも無理はない。

 アテナの容姿は、本人に言えば命が危ないが……幼児体型だ。
 身長150ほどで、顔自体は整っているが童顔。
 スタイルもツルペタである。
 髪は燃えるような赤色で、長い髪をサイドテールにしている。

 見た目とは裏腹に面倒見が良く、姉御的存在だ。


「次はオイラかなー。オイラの名前は、イージスです。年齢は23歳です。職業は冒険者で、ランクは5級、このパーティでは盾役を担っています。団長とは5年くらいの付き合いですかね。団長は、他所のパーティで役立たずと言われていたオイラを褒めてくれて、パーティに誘ってくれた恩人です!団長のためなら、命を張れます!!」

「あら、良い子そうね」

「凄いね!あの装備重くないのかな!?」

 こいつは、本当に命を張りかねないからなぁ……。
 俺が自分の命を大事にしろと言っても、聞きゃしない。

 イージスは身長180ほどで、容姿は平凡だ。
 黒髪黒目で刈り上げた短髪。
 パーティの盾役だけあって、鍛え抜かれた鋼の身体と精神の持ち主だ。
 いつも、ニコニコしてみんなを癒してくれる。

「ワタクシが最後ですわね。ワタクシの名は、ホムラ。年齢は19歳ですわ。職業は冒険者で、ランクは5級ですわ。このパーティでは、攻撃魔法を担当しておりますわ。団長とは付き合い自体は長いですが、パーティに入ったのは2年ほど前ですわ。ユウマは、ワタクシのライバルですわ!」

「いかにも、魔法使いって感じね」

「わー!綺麗な人!しかも、縦ロールだよ!」

 こいつは高圧的な態度で、あちこちのパーティで問題を起こしていた。
 とある事情から、ギルドマスターに頼まれ、俺が引き取った。

 ホムラは身長170ほどで、女性としては高い方だ。
 容姿は、人形のように整っている。
 スタイルも、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでるタイプである。

 常に黒いローブを身に纏い、金髪ロングの縦ロールである。
 ものすごい偉そうな態度だが、実は只の人見知りだ。
 めちゃくちゃ打たれ弱い。
 そして、コミュ障である。


「さて、こんなものでいいか。質問ある人ー?」

「お兄ちゃん、ちょっといい?」

「はい、可愛いエリカ。どうした?」

「つまり、皆がお兄ちゃんを慕って集まったパーティってことだよね?」

「……そういうことに、なるのかな?」

 物凄く、照れくさいのだが……。

「ええ、エリカさん。団長は尊敬に値する人ですぜ」

「えっと、アロイスさんですよね。何かエピソードでもあるんですか??」

「うーん……沢山あって数え切れませんが……あれがいいか。とある依頼を受けた時のことです。敵の数が多いことによりパーティは分断され、俺は取り残されてしまいやした。これは、いよいよ死を覚悟した時です。団長が全身血塗れになりながら、助けに来てくれやした。自分も傷だらけなのに、まずは俺に回復魔法をかけてくれやした。あの時に、俺はこの人について行こうと決めやした」

「わー!お兄ちゃん!カッコイイ!!」

「ええ、その通りです!」

「……そろそろ止めにしない?俺、恥ずいのだが?」

「ふふふー、お兄ちゃん照れてるー」

「ぐぬぬ!否定が出来ない!」

 その後は、皆がそれぞれに交流をした。

 そして冒険者仲間を帰し、俺は会議室で1人で考え込んでいた。

 さて、これからどうしたらいいものか?

 すると、ドアが物凄い音を立てて開いた!

 俺は驚き、なんだ!?と思いつつ見ると、そこには叔父上がいた。

「ユウマ!!兄貴が死んだっていうのは本当か!?」

 あ、忘れてた。

 そうだ、叔父上にも説明をしなくては。

 ていうか、酒臭いのだが?