そして次の日、俺は家族や仲間に少佐になることと準子爵になることを告げた。
ちなみに、子爵になることは言ってはいない。
まだ正式でないので、混乱を避けるためである。
まあ……シノブあたりは、もしかしたら気づいているかもしれんが。
準子爵になることは皆も予想をしていたので、そこまでの反応はなかった。
とりあえず、お祝いはしたけどな。
あとホムラについては、皆に告げた。
さすがに公爵令嬢とは思わなかったらしく、皆驚いていた。
だが、これまで通りに接してくれと頼んだ。
まあ、どっかのお嬢さんというのは、皆気づいていたので問題はなかった。
そして俺は、今朝届いた国王様の手紙に頭を悩ましていた。
大まかな内容は2つ。
1つが、エデンに行く前に冒険者ランクを三級に上げること。これは1か月ほどあるので無茶ではあるが、無理ではない。俺はすでに、4級上位まできているからだ。
その理由はエデンは冒険者ギルドが盛んで、ランクの高いものはそれだけで一定の敬意を得られるからだそうだ。
まあ、これに関しては俺も上げておきたいと思っていたから丁度良かった。
もう一つが、準子爵になったので騎士爵を2人任命すること。
我が国は準子爵から、2名まで継承権がない騎士爵を任命することができる。
準子爵になると仕事の幅が広がり、自分一人では手に負えなくなるかららしい。
そして自分の代わりに任せられる人材に、任命するということだ。
そして俺は、邪魔をしないよう静かに背後にいたシノブに話しかけた。
「なあ、シノブ」
「はい?どうかしましたか?」
「俺が頼んだんだが、此間アロイスのデート見てきたんだよな?」
「ええ。アロイスさんに気づかれぬよう、細心の注意を払って」
「正直、良い感じ立ったんだよな?」
「そりゃもう!アロイスさんなんかデレデレしちゃって!あちらのお嬢さんも、楽しそうでしたよ?」
「うーん……そうなると、上手くいくためには障害が多いな。よし!決めた!アロイスを騎士爵にする!」
「お、なるほど。そうすれば、準男爵の娘さんといい仲でもおかしくはないですねー」
「そういうことだ」
「でも、古参の家臣から批判されないですかー?まだ正式に家臣でもない人に与えて」
「ふふふ。シノブ、俺が何のためにアロイスをここにしばらく通わせていたと思っている?」
「うーん……は!そういうことですか!?」
「ああ、古参の家臣の前で俺はアロイスと今後の話をしていた。そして、訓練にも参加させていた。なので、アロイスが有能な奴というのは知っている。しかもあいつは、兄貴肌だからな。すぐ皆、好きになったよ。男限定だが。だから、家臣の間ではいつ家臣に迎えるのかと聞かれるくらいだ」
「団長、賢いですねー」
「いや、まあ結果論なんだが」
「でしょうねー」
「でも、とりあえず決まったな。後は説得するだけだ」
「もう1人はどうするんですかー?」
「それはとっくに決まっている。イージスだな。今回の戦の戦功者だから、文句もでまい」
「そうですねー。イージスさんいなかったら、団長とはいえ危なかったですもんね」
「ああ。ソロでオーガに勝てないとは言わないが、リスクがあるしな」
「では、その2人で決まりですねー」
「ああ、では早速2人を呼び出すかね」
俺は翌日、2人を呼び出した。
そして、騎士爵に任命すると告げた。
「はぁ!?団長、正気ですかい!?」
「お、オイラが騎士爵に?」
「ああ、2人とも俺が最も信頼している男達だ。受けてくれるな?」
二人は突然のことに、戸惑っている様子。
俺はしばらく、黙ったまま待つ。
そして待つこと2、3分ほどだろうか?2人とも決心がついたよう。
2人は顔を見合わせて、同時に姿勢を正して言った。
「「はい!!よろしくお願いします!!」」
「ああ、これからもよろしく頼むな。さて、アロイス。これで障害はなくなった。あとはおまえの覚悟次第だ。わかったか?」
「は?なんのことですかい?……あ!そうゆうことか!」
「ああ。これで、あちらのお宅からは文句は出ないはずだ」
「団長、アンタってお人は……どうしていつも。俺のためにここまで……」
「何を言っている?お前から受けた恩に比べたら、なんてことはない。お前は俺みたいな青臭い餓鬼に、渋い顔をしつつもいつも付き合ってくれた。感謝している」
「団長……はは、あのガキンチョも大きくなりやしたね?」
「ああ、おかげさまでな」
「へへ、アロイスさん良かったです!」
「おい、イージス?なにを他人事みたいに言っている?」
「え?どういうことですか?」
「お前は仕送りも大分済んだし、騎士爵にもなった。だったら、もうアテナに気持ちを伝えても良いだろう?」
「え!?だ、団長!?何を言ってるんですか!?オイラは別にアテナさんのこと……」
そこでイージスは、俺とアロイスとシノブがニヤニヤしてることに気がついた。
「も、もしかして皆知っていたんですか?」
「ああ。多分、アテナとホムラ以外は知っていると思う」
「そ、そうでしたか」
「で、どうだ?お前は自分に自信がないから言えないようだから、逃げ道を塞いでやったぞ?妹も良い学校に入れたようだし、手柄をたてて騎士爵になるんだから自信もつくだろ」
「いや、それは……すみません。少し考えさせてください」
「ああ、それはお前に任せる。もし、お膳立てして欲しければ言うと良い」
「で、団長。俺らは何をすればいいんで?」
「ああ、それだな。まず俺は、国王様からの命令でエデンに行かなくてはならなくなった」
「やっぱり、そうなりますかー。ウィンドルがキナ臭いですもんねー」
「ああ、シノブの言う通り。同盟を結ぶことにしたから、俺が密書を届けることになった。なので俺が居ない間、アロイスには俺の代わりにここに居て仕事をしてもらう」
「はぁ!?いや、そんなのよくわからないですぜ?」
「大丈夫だ。難しい案件は置いていかないから安心しろ。それに仕事に関しては、わからなければセバスに聞けば良い。俺がお前に頼むのは、俺の代わりに皆のことを頼むということだ」
「家族のことですかい?」
「ああ。準子爵になったことで、良い意味でも悪い意味でも色々変化があるだろうからな。アロイスは見かけによらず、気配り上手で臨機応変に対応できるから任せたい」
「一言余計ですが……まあ、了解です。俺に任しといてくだせえ」
「さて、イージスは俺の護衛としてついてきてくれ。今回は、シノブは付いてこないからな」
「はい!任せてください!ところで、シノブさんはなんでですか?」
「わたしはエデン出身ですからねー。色々、ややこしくなるじゃないですかー。うちの国は、亜人達の集落が集まって1つの国ですから。わたしの里と仲の良いところもあれば、仲の悪いところもあるので」
「まあ、そういうことだ。一応国王はいるが、基本的には集落ごとに暮らしているらしい。で、俺らは集落ごとに回らなきゃならんからな」
「あ、なるほど。理解できました。シノブさん!団長のことは任せてください!」
「ええ!イージスさん!貴方なら任せられます!団長を頼みました!」
2人は、がっしりと握手をしていた。
「えーと、団長?こいつらこんなに仲良かったでしたっけ?」
「此間の戦争で、距離が縮まったんだろ。なんつーか表はイージスが、裏はシノブがみたいな感じらしい」
「あーわかりやすいですな。なるほど」
「ちなみに、お前には背中を預けるからな?」
「はは、こりゃ手を抜けませんね」
そうして話し合いは済み、俺は国王様宛に手紙を出した。
そして俺はシノブも連れず、1人である墓に来ていた。
「なあ、親父、兄貴。俺は、子爵になるんだってさ。人生っていうのは、わからないものだな。2人が生きていたら、一体どうなっていたのかな?」
誰も答えてなどくれないが、俺はしばらく墓の前で立ちつくしていた。
ちなみに、子爵になることは言ってはいない。
まだ正式でないので、混乱を避けるためである。
まあ……シノブあたりは、もしかしたら気づいているかもしれんが。
準子爵になることは皆も予想をしていたので、そこまでの反応はなかった。
とりあえず、お祝いはしたけどな。
あとホムラについては、皆に告げた。
さすがに公爵令嬢とは思わなかったらしく、皆驚いていた。
だが、これまで通りに接してくれと頼んだ。
まあ、どっかのお嬢さんというのは、皆気づいていたので問題はなかった。
そして俺は、今朝届いた国王様の手紙に頭を悩ましていた。
大まかな内容は2つ。
1つが、エデンに行く前に冒険者ランクを三級に上げること。これは1か月ほどあるので無茶ではあるが、無理ではない。俺はすでに、4級上位まできているからだ。
その理由はエデンは冒険者ギルドが盛んで、ランクの高いものはそれだけで一定の敬意を得られるからだそうだ。
まあ、これに関しては俺も上げておきたいと思っていたから丁度良かった。
もう一つが、準子爵になったので騎士爵を2人任命すること。
我が国は準子爵から、2名まで継承権がない騎士爵を任命することができる。
準子爵になると仕事の幅が広がり、自分一人では手に負えなくなるかららしい。
そして自分の代わりに任せられる人材に、任命するということだ。
そして俺は、邪魔をしないよう静かに背後にいたシノブに話しかけた。
「なあ、シノブ」
「はい?どうかしましたか?」
「俺が頼んだんだが、此間アロイスのデート見てきたんだよな?」
「ええ。アロイスさんに気づかれぬよう、細心の注意を払って」
「正直、良い感じ立ったんだよな?」
「そりゃもう!アロイスさんなんかデレデレしちゃって!あちらのお嬢さんも、楽しそうでしたよ?」
「うーん……そうなると、上手くいくためには障害が多いな。よし!決めた!アロイスを騎士爵にする!」
「お、なるほど。そうすれば、準男爵の娘さんといい仲でもおかしくはないですねー」
「そういうことだ」
「でも、古参の家臣から批判されないですかー?まだ正式に家臣でもない人に与えて」
「ふふふ。シノブ、俺が何のためにアロイスをここにしばらく通わせていたと思っている?」
「うーん……は!そういうことですか!?」
「ああ、古参の家臣の前で俺はアロイスと今後の話をしていた。そして、訓練にも参加させていた。なので、アロイスが有能な奴というのは知っている。しかもあいつは、兄貴肌だからな。すぐ皆、好きになったよ。男限定だが。だから、家臣の間ではいつ家臣に迎えるのかと聞かれるくらいだ」
「団長、賢いですねー」
「いや、まあ結果論なんだが」
「でしょうねー」
「でも、とりあえず決まったな。後は説得するだけだ」
「もう1人はどうするんですかー?」
「それはとっくに決まっている。イージスだな。今回の戦の戦功者だから、文句もでまい」
「そうですねー。イージスさんいなかったら、団長とはいえ危なかったですもんね」
「ああ。ソロでオーガに勝てないとは言わないが、リスクがあるしな」
「では、その2人で決まりですねー」
「ああ、では早速2人を呼び出すかね」
俺は翌日、2人を呼び出した。
そして、騎士爵に任命すると告げた。
「はぁ!?団長、正気ですかい!?」
「お、オイラが騎士爵に?」
「ああ、2人とも俺が最も信頼している男達だ。受けてくれるな?」
二人は突然のことに、戸惑っている様子。
俺はしばらく、黙ったまま待つ。
そして待つこと2、3分ほどだろうか?2人とも決心がついたよう。
2人は顔を見合わせて、同時に姿勢を正して言った。
「「はい!!よろしくお願いします!!」」
「ああ、これからもよろしく頼むな。さて、アロイス。これで障害はなくなった。あとはおまえの覚悟次第だ。わかったか?」
「は?なんのことですかい?……あ!そうゆうことか!」
「ああ。これで、あちらのお宅からは文句は出ないはずだ」
「団長、アンタってお人は……どうしていつも。俺のためにここまで……」
「何を言っている?お前から受けた恩に比べたら、なんてことはない。お前は俺みたいな青臭い餓鬼に、渋い顔をしつつもいつも付き合ってくれた。感謝している」
「団長……はは、あのガキンチョも大きくなりやしたね?」
「ああ、おかげさまでな」
「へへ、アロイスさん良かったです!」
「おい、イージス?なにを他人事みたいに言っている?」
「え?どういうことですか?」
「お前は仕送りも大分済んだし、騎士爵にもなった。だったら、もうアテナに気持ちを伝えても良いだろう?」
「え!?だ、団長!?何を言ってるんですか!?オイラは別にアテナさんのこと……」
そこでイージスは、俺とアロイスとシノブがニヤニヤしてることに気がついた。
「も、もしかして皆知っていたんですか?」
「ああ。多分、アテナとホムラ以外は知っていると思う」
「そ、そうでしたか」
「で、どうだ?お前は自分に自信がないから言えないようだから、逃げ道を塞いでやったぞ?妹も良い学校に入れたようだし、手柄をたてて騎士爵になるんだから自信もつくだろ」
「いや、それは……すみません。少し考えさせてください」
「ああ、それはお前に任せる。もし、お膳立てして欲しければ言うと良い」
「で、団長。俺らは何をすればいいんで?」
「ああ、それだな。まず俺は、国王様からの命令でエデンに行かなくてはならなくなった」
「やっぱり、そうなりますかー。ウィンドルがキナ臭いですもんねー」
「ああ、シノブの言う通り。同盟を結ぶことにしたから、俺が密書を届けることになった。なので俺が居ない間、アロイスには俺の代わりにここに居て仕事をしてもらう」
「はぁ!?いや、そんなのよくわからないですぜ?」
「大丈夫だ。難しい案件は置いていかないから安心しろ。それに仕事に関しては、わからなければセバスに聞けば良い。俺がお前に頼むのは、俺の代わりに皆のことを頼むということだ」
「家族のことですかい?」
「ああ。準子爵になったことで、良い意味でも悪い意味でも色々変化があるだろうからな。アロイスは見かけによらず、気配り上手で臨機応変に対応できるから任せたい」
「一言余計ですが……まあ、了解です。俺に任しといてくだせえ」
「さて、イージスは俺の護衛としてついてきてくれ。今回は、シノブは付いてこないからな」
「はい!任せてください!ところで、シノブさんはなんでですか?」
「わたしはエデン出身ですからねー。色々、ややこしくなるじゃないですかー。うちの国は、亜人達の集落が集まって1つの国ですから。わたしの里と仲の良いところもあれば、仲の悪いところもあるので」
「まあ、そういうことだ。一応国王はいるが、基本的には集落ごとに暮らしているらしい。で、俺らは集落ごとに回らなきゃならんからな」
「あ、なるほど。理解できました。シノブさん!団長のことは任せてください!」
「ええ!イージスさん!貴方なら任せられます!団長を頼みました!」
2人は、がっしりと握手をしていた。
「えーと、団長?こいつらこんなに仲良かったでしたっけ?」
「此間の戦争で、距離が縮まったんだろ。なんつーか表はイージスが、裏はシノブがみたいな感じらしい」
「あーわかりやすいですな。なるほど」
「ちなみに、お前には背中を預けるからな?」
「はは、こりゃ手を抜けませんね」
そうして話し合いは済み、俺は国王様宛に手紙を出した。
そして俺はシノブも連れず、1人である墓に来ていた。
「なあ、親父、兄貴。俺は、子爵になるんだってさ。人生っていうのは、わからないものだな。2人が生きていたら、一体どうなっていたのかな?」
誰も答えてなどくれないが、俺はしばらく墓の前で立ちつくしていた。