俺は、その言葉の意味がわからなかった。

「どういうことですか?」

「我々もまだ半信半疑なのですが、あの周辺を隈なく調べたところ、わずかに魔力の残滓があったのです。そこを調べたら、魔法陣の跡が見つかりました。おそらく、失われた古代魔法である転移魔法の可能性があると結論がでました。見たこともない魔法陣でしたしね。王都の専門家に来てもらわなければわかりませんが、それ以外にあそこにいきなりオークとオーガが現れる理由が見つかりませんでした」

そしてその説明で、俺の頭に電気が走った。

もしや……俺が王都の近くで見た魔法陣もそれだったのでは?

「そうですか。ちょっと信じられないですが、事実だとしたらマズイですね。ちなみに近くに潰れたオークなどいませんでしたか?」

「ええ、非常に。潰れたオークですか?そういう報告は、受け取ってませんね」

俺達がそんな会話をしていると、兵士がすごい剣幕でやってきた。

「中佐!すいません!来てください!なんか潰れたオークが発見されたとか!幹部の皆さん集まっています!」

俺とルイベ中佐は、顔を見合わせた。

そして無言でうなずき合い、俺はシノブとイージスも伴ってその場所へ行った。

そしてそこには、俺が前に見たのと同じ光景があった。

「ユウマ殿、これは一体なんでしょうか?先程聞いた通りのものが……」

「ええ、実は……」

俺は、一通り事情を話した。

「では、私がそのようにお伝えしておきますね」

「はい、よろしくお願いします」

ルイベ中佐は、幹部が集まるところへ走っていった。

「団長、これまえに依頼で見たのと同じです……」

「へー、そんなことがあったんですねー」

「そうだ。だが、何故こうなっているかは相変わらずわからん」

そうなのだ。
もし転移魔法を実現できていたとしても、このオークの死骸の意味がわからなかった。
俺達は不気味に思いながらもその場を去り、テントへ戻った。

そして皆が寝静まった頃、昼間寝すぎた俺は焚き火の前で考えていた。

俺にも魔法の知識はあるが、失われた古代魔法はさすがに知らない。

だが、推測ならできるはずだ。

そしてそのまましばらく考えていると、声をかけられた。

「団長、寝れないんですね?」

「シノブ、起きてたのか。珍しくついてこないから、寝ているものかと」

「ええ、起きてました。でも、団長が一人で考え事したいかなと思いまして。ただあまりに長いので、話し相手になって考えを整理したほうが良いかなと」

「はは、相変わらずできた奴だな。今回も大手柄だしな。そうだな、では頼む」

「まず、あれが転移魔法と仮定して話を進めましょう」

「そうだな、そこからだ。何故王都の近くの森にオークが現れたかだ。あんな数と中途半端な場所じゃ意味がない」

「そうですよね。もし転移魔法できるなら王都の王城は結界があるからさすがに無理ですけど、城下町にでも転移すれば大混乱ですもんね」

「そうだ。そこから推測できることはなんだ?もしかして転移する場所は選べないのか?」

「でも今回は割とピンポイントで狙ってきましたよね。あのとき団長とイージスさんいなければ、後衛は壊滅的ダメージを受けていました。そしてわたし達も下がらなくてはいけなくなり、敵の指揮官を倒すこともできなかったでしょう」

「そうだよな……。うーん。いや、待てよ。ウィンドルはこの時期に仕掛けてきたな」

「何か思いつきましたか?」

「いやあくまでも推測なんだが、王都の近くの森の中にオークが転移したのはやつらにとっても計算違いだったんじゃないか?」

「それはどういうことですか?」

「うーん、つまり……ウィンドルは転移魔法を完全には再現できてないかもしれん。長距離はまだで短距離しか無理とか。だから失敗して、間違えて王都の近くの森の中に転移させてしまった。それを慌てて確認したウィンドルは焦った。このまま夏が過ぎれば、我が国の調査団に魔法陣からウィンドルが転移魔法を再現できたことがバレると。だからその前に、普段攻めてこないこの時期に慌てて攻めてきた。そして短距離なら完成してるので今回はピンポイントで狙えたとかかな」

「おお!なんかすごくそれっぽく聞こえますね!」

「まあ、推測でしかないがな。まあ、明日王都に帰るし専門家に話してみるか」

そして夜が明けたので2人で散歩に出かけた。

「ふふ、なんかいいですね。こういうのも」

「ああ、そうだな。あーえっとだな。シノブ」

「はい?どうしましたか?」

「一度しか言わんからよく聞け。お前が俺を好きなのはしっている。だが俺もお前が好きだ」

俺は今まで恥ずかしくて言えなかったが、今急に何故か言える気がして声に出していた。

すると、シノブの瞳から一筋の涙がこぼれた。

「ごめんな、散々待たして。俺は家族なんか作ってはいけないと思っていたからな……」

「いえ!違うんです!嬉しくて。えへへ」

俺は超可愛い!抱きしめたい!と思ったがぐっと堪えた。

「だがな、今はわかるな?」

「はい、そんな場合でもなさそうですもんね。まだこれから戦争がどうなるかわかりませんし」

「そうだ。だから落ち着いてからだな。それまではこれまで通りに頼む」

「はい!わかりました!秘密の関係ってやつですね!」

「たく、すぐこれだ。まあ、俺達らしいかもな」

「えへへ、そうですね。あ、でも抜け駆けしちゃったな……どうしよう?」

「あーえっと……ホムラのことか?」

俺の自意識過剰ではなければホムラは俺を好いているからな。

「はい、団長だって満更でもないでしょ?」

「いや、まあ、しかし……」

「ふふ、わたしのことはいいんですよ。わたしは団長の側に居られればそれで。ホムラもきっとそうだと思いますよ?」

「そう言えば帰ったら話があるって言われたな」

「あら!いいタイミングじゃないですか!ふぅー!団長の色男!スケコマシ!わたしのことは遊びだったんですね!?」

「うるせー!台無しだよ!」

俺は、こいつがこうやっていつも茶化してくれるから助かるなと思った。

そうして、2人で皆が起きるまで散歩していた。