翌日俺達は、シノブを除く全員で集合した。

そして、受付に向かう。

「おはようございます。6級の手頃な依頼はありますか?」

「今朝届いたのですが、王都近くの森でオークの群れ退治がありますね。幸い、まだ捕まった人もいなく、数も30匹ほどです。皆様なら、安心して依頼が出せます」

オークというのは、ブタの顔に人の身体という魔物だ。
こいつらは雄しか生まれず、異種族の雌を捕まえて子供を作る。
所謂全女性の敵というやつだ。
しかも繁殖力が旺盛なので、放っておくと瞬く間に増えていく。
なので、早いうちに全滅させなくてはいけない。
ギルドでは、常に依頼を出しているぐらいだ。

「じゃあ、それでお願いします。後ろの女性陣が、殺気だっているんでね」

「はは、全女性の敵ですからね。では、こちらが依頼書になります。どうかお気をつけて」

「ああ、ありがとう。行ってくるよ」

「団長!早く行こうぜ!奴らを根絶やしにしてやろうぜ!」

「ワタクシの魔法で、チリ一つ残さず消し去ってやりますわ!」


皆でギルドをでて、王都の入り口付近で依頼書の確認をする。

「さて、団長どうしやすか?」

「そうだな……。舐めているわけではないが、過剰戦力だからな。とりあえず、行ってみてからだな」

皆から反対がないのを確認し、王都を出発した。

途中で休憩を挟み、軽食をとった。

その後、しばらく歩くと森が見えてきた。

「シノブがいないからな……アテナ頼んだ」

「あいよ!シノブほどじゃないが、アタシだってスナイパーだからね」

そう言って、木の上にジャンプして乗り、偵察に行った。

そして俺達は、その間に森の外にでようとする魔物を、間引きしていた。

そして、アテナが帰ってきた。

「団長、報告するよ。予定通り、30~35匹あたりだと思う。ただ、妙に統率がとれてて大人しくしてる。やっぱりあれかね?」

「ふむ……オークジェネラルや、オークキングといった上位種がいる可能性。誰かに操られている可能性か……厄介だな。アテナ、オークしかいなかったか?」

「ああ、アタシが見た限りそうだね」

「まだ、操られてるか確定もしてないしな……とりあえず、被害が出る前に殲滅はしなくていけないし、やりますか。調査は後にしよう」

そして俺達はアテナに案内され、オークの近くまで忍び寄った。

そこでは、特になにをするでもなく、オーク達がウロウロしていた。

これは、ますます怪しいなと思った。

「よし、気づかれた様子はないな。ホムラ、頼んだ。ちなみに、一応言っておくが火炎魔法はダメだぞ」

此奴はなにも言わないと、火炎魔法を放つからな……。
それで、何度酷い目にあったか……。

「わかっていますわよ!それぐらい!仕方ないですわね……風の刃よ、敵を切り裂け、ウインドアロー!」

そう唱えると、目に見える風の刃が木々の間を通りぬけ、オークに命中して血が吹き出る。

ブボォ!ブボォ!とオークが騒ぎ出した。

「よし、よくやった!俺が前に出る!アロイスには背中を任せる!イージス、ここを任せた!アテナ、皆の援護を頼む!ホムラ、俺達に当てんなよ!

それぞれ了解!といい動き出す。

そして俺は走り出し、正面から攻めていく。

混乱したオークを斬ることは容易かった。
俺が剣を振るうたびに、オークの身体の部位が舞っていく。

俺は余裕があるので、全体を見たが問題はなかった。
まあ、オークに手こずるような奴はいないしな。

そして僅か10分ほどで、オークは全滅した。

「よし!討ち漏らしはいないな。皆、二手に分かれて確認!ホムラ、イージス行くぞ」

俺達は、辺りを調べた。
すると、身体の潰れたオークの死骸を発見した。

そしてそのすぐ近くに、魔法陣の跡があった。

「これは決定的だな。はぁー、また戦争かねぇ」

「これは、ウィンドルの魔法陣ですわね……」

「ああ。魔物を召喚できる魔道士は、そうはいないからな。ただ、この死体がなんなのか……」

永遠の敵国であるウィンドルには、召喚魔法というものがある。

そして魔法の国なので、前衛の役目を操った魔物などに任せる。

ただ、近くにいないと正確な指示はだせないらしい。

ちなみに、召喚した者を殺せば魔物は元いた場所へもどるらしい。

ところで俺は、この魔法陣に妙な既視感を覚えていた。

若干憂鬱になりながら、俺達は王都に戻ることにした。



▽▽▽▽▽▽

~シノブ視点~

さて、シノブちゃんは、ただ今観察中です。

今、エリカちゃんとカロン様が話していますねー。

ふむふむ……中々良い雰囲気ですねー。

見た感じでは、弄ぶようなタイプには見えませんね……。

学校に忍びこんでも、悪い噂は聞きませんでしたし……。

もし私の目を欺いているとしたら、相当ですよー。

退屈ですけど、団長のためなので、頑張って観察を続けてみる。




お、どうやら王子様にお迎えが来たようですね。

エリカちゃんに挨拶して、校門から出て行きました。

では、私も帰ろうかなと思ったら、声が聞こえる。

私は出来るだけ近づき、耳を傾ける。

「ちょっと!!貴方何様のつもり!?」

「そうよ!そうよ!」

「男爵令嬢の分際で、調子に乗るんじゃないわよ!」

こ、これは大変です!

エリカちゃんは、女子からイジメを受けています!

ど、どうしよう!?団長に言ったら、死人が出ます!……割と洒落にならないかも。

しかし、黙っている訳には……おや?エリカちゃんの様子が………。

エリカちゃんは一言も言い返さずに、堂々としている。

すると、1人の女性が、エリカちゃんに水をかけました!

それでもエリカちゃんは、毅然とした態度を続けています……強い子ですね……。

そして気が済んだのか、女の子達は去って行きました。

エリカちゃんは、女の子達が立ち去った後、人気ない所で、声もあげずに泣いていました。

私は、どうしてくれようかと思ったのですが……止めました。

何故なら、エリカちゃんが言ったからです。

「負けない……これくらいのことで……こんなの、お父さんとバルス兄さんの仕打ちに比べたらなんてことないもん……だって好きなんだもん……もう決めたんだもん……それにわたしにはユウマお兄ちゃんがいるもん!」

何ということでしょう……13歳の少女が、覚悟を決めています。

まるで、団長と出会った頃の私のように……。

これは、手を出すべきではありせんねー。

この子の成長を、妨げることになります。

もしやりすぎるようなら、介入しますけどね。

ふふ、団長。

貴方の妹は、貴方が思うより強い子ですよ?

そして、良い女になりますね。

では、将来の義姉として、見守っていくことにしますかー。