俺はエリカが出て行ったのを確認し、ため息を吐く。

「エリカが、第3王子に惚れるとはな……シノブいるな?」

シノブが、音もなく後ろに立つ。

「はい、ここにいますよー」

「最近、さらに隠密に磨きがかかったな。若干怖いわ、俺」

「えー、全部団長のためなのに酷くないですかー?」

「はいはい、ありがとな。で、シノブ仕事を頼む」

「エリカちゃんのことですねー」

「そうだ。王子だかなんだか知らんが、遊び半分でエリカに手出そうって言うならただじゃおかねえ」

「一応、団長が仕える国の王子様なんですけど。相変わらず、妹が関わると人格変わりますねー」

「うるせー!可愛いんだ!仕方ないだろう!で、まずはカロン王子の身辺調査だ。確かに表面的には問題なさそうだが、そういう奴は裏でなにかやってるに違いない」

「あらら、断定しましたね。とゆーか、自国の王子を調査って……バレたら普通に国家反逆罪とかになるんじゃないですか?」

「ああ、多分なるな」

「ちょ!それってわたしが捕まるってことじゃないですか!」

「いや、おまえの腕前ならそう見つかることはない。それこそ、叔父上クラスの人間くらいだろう。それに、そこまで踏み込む必要はない。普段の行動だけで良い。それだけで、だいたいわかる。そして何より、俺はシノブの腕を信頼しているからな」

「もーずるいですよ!そんなこと言われたら、やるしかないじゃないですかー。わかりました、やりますよー」

俺はチョロいなと、思いつつ。

「おお!やってくれるか!それでこそ俺の傍付きだ!では、頼んだぞ」

「なんか丸め込まれた気がする……ホント、妹が絡むと見境がないんだから」

「そりゃそうだ。妹は何にも勝る」

「はいはい、そうですねー」

「そうなると、俺も静観しているわけにはいかないか……」

「ん?どういう意味ですか?」

「いや、昇進や昇格にそこまで興味はなかったのだが……男爵では、色々不都合が起きそうだ」

「まあ、王子が男爵令嬢と親しくなったら、それはそうですねー」

「ああ。只でさえ、上級貴族の学校で肩身が狭いというのにな……よし!覚悟を決めた!」

「おお!決めましたか!?」

「ああ、今決めた。俺は妹の為に成り上がる!」

「おおー、優柔不断な団長にしては決断早いですね!」

「俺が優柔不断なのは、女性問題だけだ」

「それはそれで、どうなんでしょー?」

「……まあ、いい。そうと決まれば、行動あるのみだな」

理由はわからないが、最近は剣の腕と、魔力量もどんどん上がってきているからな……!

俺は、妹が第3王子に惚れたというので、成り上がることにする!