妹が第3王子に惚れたというので成り上がることにする

私は、多分本能的に一目惚れをしたのだと思う。

だって一目見たその時から、この人の子供が産みたいと強く思ったのだから。

実際に戦ってみても、強かった。

しかも、希少な回復魔法の使い手でもあるようだ。

同年代で負け無しだった私には、衝撃的な出来事だった。

私はつい嬉しくなってしまい、段取りも踏まずに言ってしまった。

子種をください!と。

案の定、団長はにげましたねー。

いきなり戦いを挑んできてからの、子種をくださいですから……当然ですねー。

いや、私も若かったんですよー。

私はとりあえず、団長が立ち上げた白き風に、半ば無理矢理に加入した。

その時は、まだアロイスとイージスしかいなかったなー。

アロイスを見て、犯されるー!と思ったのは、今では良い思い出です。

まあ、実際は2人とも良い人でしたー。

団長の名前は、ユウマさん。

男爵家の次男なので、冒険者をやっているということだった。

このパーティーに斥候系の役割を担う者がいないこと。

自分と互角に渡り合えるということから、団長はパーティーに入れてくれた。

私は里を出てから、ずっと一人で生きてきた。

それを、寂しいと思ったことはなかった。

でも、皆と過ごすうちに、こんな生活も悪くないなと思い始めていた。

団長に関しても、色々驚いた。

最初は、子種くれればそれでいいやと思っていた。

でも、一緒にいるうちにどんどん惹かれていく自分に気がついた。

どんなところに惹かれたかというと……まず団長は、仲間が窮地に陥れば身を呈して守ること。

ヒーラーなのに、前線に来てバーサクしてるところとか。

なんでも頭越しに否定せず、きちんと話を聞いてくれること。

困っている人を放って置けない、優しいく甘いところ。

私はいつからか、考えが変わってきていた。

この優しく強く、側にいると心が温まる団長と、一緒にいたいと。

そして一人の忍びとして、忠誠を誓いたいと。

なので、私は強攻策にでることにした。

何度か、迫ってみたが断られた。

あまりに断られるので、私が泣きながら、魅力ありませんか?と聞いたことがある。

すると団長は、魅力あるから困ってるんだよ!と言った後に、バツの悪そうな顔をしました。

そして、ポツポツと事情を説明してくれました。

なんでも団長は、父親と兄に嫌われているらしい。

しかし母親や妹、家臣などには好かれていると。

なので子供ができようものなら、お家騒動に発展しかねないと。

仮になくても、嫌がらせなどは間違いなくされるだろうと。

大事な母上と妹は、そんなことになったら心を痛めてしまうと。

自分も、親父と兄貴は嫌いだが、争うまではしたくないと。

そして自分は最悪の場合、妹の幸せな結婚を見届けたら、国をでることも考えていると。

だから私がどうとかではなく、それまでは誰とも子供を作る気はないらしい。

私は妹さんの年齢を聞き、この国の適齢期が15~18と知り、私はその時21~24になるなと思った。

でも私は、ヴァンパイアの血を引いているので、25~50くらいは見た目も変わらない。

寿命も100年は生きるので、そんなに慌てることもないかと思った。

だから、団長に聞きました。

妹さんの結婚を見届けたら、婿としてきますか?と。

団長は苦笑し、それも悪くないなと。

私はとりあえず、それまでは団長をおちょくりつつ、楽しく過ごそうと決めました。

そうして過ごしていると、あっという間に4年の月日が経ちました。

もちろん、その間にも色々ありました。

ホムラと団長を取り合ったり、その後協定を結んだり。

二人で、団長に色目を使う女性を排除したり。

そしてついに、あの日が来た。

団長の父と兄が、亡くなった日が。

正直私が思ったことは、これで団長は呪縛から解放されるということ。

そして、団長は家を継ぐことになった。

団長はすまんな、婿にはいけないなと、冗談めかして言っていた。

しかしその時の私は、すでに里に戻るつもりもなくなっていた。

団長の側に居られれば、それだけでいいと。

でも、このままでは側にいられなくなると思った。

これからは貴族として動くことが増えるので、冒険者活動が減るからだ。

なので私は、色々と理由をつけて、傍付きになることを認めてもらった。

もちろん、言った内容に嘘はないし、団長を守りたいと思っている。

でも、本当はただ側にいたいだけ……団長は、もしかしたら気付いていたかも。

認めてもらえたのは良かったが、問題があった。

そういう専門の里出身なので、隠密については問題ない。

でも、単純な武力に関しては疑問がある。

出会った頃は団長と互角に渡り合えたが、身体の出来上がった団長には、勝てなくなってきたからだ。

なので私は、団長が授業を受けている間に、シグルドさんに頼みに行った。

団長には内緒で稽古をつけてください!と土下座をした。

なぜなら、剣聖であるシグルドさんは、弟子を取らないことで有名だからだ。

お遊びの稽古ならしてくれるだろうが、本格的なのは断ると。

団長は自分と境遇が似ていたり、責任の一端が自分にあると思い、特別に弟子にしたそうだ。

もちろん、甥っ子が可愛くて仕方ないということもあるだろう。

シグルドさんは渋い顔をしていたが、甥っ子のためにもなると思ったのか、最終的には了承してくれた。

ただ、なんで内緒なんだ?と聞かれました。

私は、だってカッコ悪いじゃないですかと。

あと強くなって、団長が私の心配をしなくてもいいように!と。

そして、稽古が始まる。

その稽古は、熾烈を極めた。

避けていなければ、骨の1本や2本は確実に折れているであろう、攻撃の嵐。

終わる頃にはクタクタで、ソファーで寝てしまいました。

好きな人に寝顔を見られ、さすがの私も恥ずかしかった。

でも、団長が笑って話しかけてくるので、私は嬉しくなり、疲れも恥ずかしさもどこかに飛んでいった。

私は、この幸せな日々を続けるためにも、頑張ろうと心に誓いました。

そして、心の中で宣言しました。

団長!これから攻めていくので、覚悟してくださいね!