そして、いよいよ王城へ行く日を迎えた。

1人だけ連れてきていいと言われたので、シノブを連れて行くことにした。

「おい、シノブ。流石に、王城では気配を消して行動するなよ?王城の密偵達が、ピリピリするからな」

「大丈夫です!返り討ちにします!」

「やめんか!俺が国家反逆罪で捕まるわ!」

「仕方ないですねー。我慢しますよ」

「頼むから、大人しくしてろよ?メイドとして、連れてってやるから」

「はーい。えへへー、王城入るの初めてですよー。初めてが団長となんて……ポッ」

「顔を赤らめるな!あんまふざけていると、連れて行かないからな?」

「じゃあ、今から真面目モードに入ります」

「ほほ、相変わらず仲が良いですな。ではユウマ様、こちらをどうぞ」

「ああ、ありがとう。こんなの着るの初めてだな……」

俺は、フロックコートを着る。

「ユウマ様、よくお似合いでございます」

「団長!イケてるー!」

「はいはい、ありがとな。シノブも、メイド服似合ってて可愛いぞ」

「団長が、デレた!?これは何かよくないことが……」

「ほら、行くぞ。遅刻したら洒落にならない」

「待ってくださいよー」

ちなみに、シノブのメイド服はどストライクだった。
悔しいが、可愛い。
だが、仕方ないと思う。
黒髪ロングのポニテで、メイド服とか反則だろ!

俺たちは馬車に乗り、王城へ向かう。

入り口付近で降り、徒歩で王城の門へ近づく。

「そこで止まってください。本日は、どのようなご用件で参られましたか?」

「こんにちは。男爵継承の件で参った、ユウマ-ミストルと申します」

「ミストル様ですね。…ええ、確かに。では、お通りください」

俺らが門を通り、王城の入り口に着くと、メイドさんが居た。

「ミストル様。ご案内しますので、付いてきてください」

俺らは大人しく付いていき、ある部屋に着いた。

「お呼びがかかるまで、ここでお願いします」

「ええ、わかりました。ありがとうございます」




することもないので、俺らは部屋で談笑する。

「いやー……初めて入ったがすごいな。道が入り組んでて、案内人いなきゃ迷うな」

「そうですねー。守りやすく、攻めにくい構造ですしねー」

「おいおい、そういうこと言うなよ」

「大丈夫です。誰かが聞いている気配がありません」

「まあ、俺みたいな男爵に、そこまでする必要はないからな」

そのまま話していると、メイドさんが呼びにきた。
いよいよ、謁見の間か……緊張するな。

「お待たせしました。謁見の間にご案内します」

「ええ、お願いします」

メイドさんに、謁見の間の入り口手前で言われる。

「お連れの方はここまでです。あとは、ミストル様お一人で」

「わかりました。シノブ、大人しくしてろよ?」

「はい、畏まりました。旦那様」

旦那様って何だ!?と突っ込みたいのをグッと堪え、謁見の間に向かう。

守衛の方がお通りくださいというので、一礼をして、下を見ながら歩く。

そしてそこまで!という声が聞こえたので、その場で片膝立てて、頭を低くして待つ。

「ふむ。では、顔を上げよ」

俺は、ゆっくりと顔を上げる。

そこには、第12代目国王あるデュラン王がいる。

どうやら、最小限の人数しかいないようだ。
でも、凄腕が2人ほどいるな。

デュラン王は39歳。身長180ほどで、逞しい身体と覇気の持ち主だ。
長い金髪を、オールバックでまとめている。

「ふむ。ミストル家の者と聞いていたので、どんな人物がくるかと思えば、中々良い眼をした好青年ではないか。まあ、楽にしてくれ。今ここには、五月蝿い奴らもおらんしな」

「はっ!ご配慮感謝いたします」

俺は心の中で叫ぶ……無理だよ!!

すると、国王様の横にいる宰相様が言う。

「国王様、楽にしてくれと言いましても、それは無茶振りというものですよ?」

さすが宰相様!よくぞ言ってくれた!

「だが、宰相よ。此奴は、剣聖シグルドの弟子で甥なのであろう?あやつは、余に対してもタメ口じゃぞ?」

叔父上ー!何してくれてんの!?馬鹿なの!?やっぱりバカなの!?

「叔父上が、大変失礼いたしました。ミストル家を代表して、謝罪いたします」

「国王様、これが普通です。シグルドは、頭がおかしいだけです。私は今、とても安心しています。シグルドみたいな人物ではないことに」

宰相様!そうなんです!わかってるー!

「そうか、そういうものか。いや、すまんな。こういう立場だと、軽口をたたくやつも中々いなくてな。シグルドは、その貴重な人物なのだ。まあ、あやつは権力に興味がないから、付き合いも楽だしのう」

俺は、やはり国王というのは孤独なのだなと思った。

「……そうですか。であれば、出来る限り砕けた口調で話すようにしますね」

「うむ。流石余の友である、シグルドの弟子だ。物分かりが良い」

「は?友?国王様と?誰が?」

「おや、知らなかったのか?あやつは偶にやってきて、世間話しをして帰っていくのだ。いわゆる、飲み友達というやつだ」

叔父上ー!初耳なんですけど!?馬鹿なの!?

「もしかして……叔父上が、王城に友達いるから遊びに行く!って言うときがあったのですが……」

「それが余だな。なんだ、知っておるではないか」

「いえ、国王陛下とは聞いていませんでした。とりあえず、後でぶん殴ろうと思います」

「ははは!それは、よい。ふむ、緊張も解けたようだな。では、名残惜しいがこの辺でいいかの。国王も暇ではなくてな。本来の仕事をしよう。ユウマ-ミストルよ、其方を男爵に命ずる。国と民のために、しっかり働いてくれ」

「はっ!ユウマ-ミストル、男爵位を拝命いたします。国のため、民のために働くことを誓います!」

「うむ、楽しい時間であった。他の重鎮がいると、おちおち会話もできん」

「なるほど。だから、こんなに人数が少ないのですね」

「そういうことだ。シグルドの甥っ子であり、余の姪っ子の知り合いである其方とは、一度話しておきたかったのだ。おっと、いかん。また、話が長くなりそうだ。宰相に怒られてしまうな。では、ユウマよ。下がるがよい」

今最後なんて言った?姪っ子が俺の知り合い?どういう意味?
だが、下がれと言われたら下がるしかない……。
まあ、いいか……冗談かもしれないし。

「はっ!失礼いたします」

俺は、ゆっくりと謁見の間を出た。

俺はそのままシノブを連れ、王城を出る。

そして馬車にのり、ようやく人心地ついた。

「団長、お疲れ様でしたー。長かったですね?」

俺は、謁見の間の会話内容を話した。

「シグルドさんは、国王陛下の友達ですか……それは、心臓に悪いですねー」

「まったくその通りだ。俺の寿命を減らす気か!?あの叔父上は。帰ったら、1発でいいからぶん殴ってやる」

「二人掛かりならなんとか……ならないですねー」

「ああ、ついこの間やられたばかりだな」

そうこうしているうちに、家の前に着く。

そこには家臣一同、冒険者仲間達、家族一同が勢ぞろいしていた。

「ユウマ、お疲れ様。何も問題なく継承は出来ましたか?」

「はい、母上。無事に男爵位を継いだことを、ここに告げます」

皆から、拍手が巻き起こる。

「「「「おめでとうございます!」」」」

「皆、ありがとう。頼りないかもしれないが、精一杯やるので力を貸して欲しい」

「うう、母は嬉しいわ。ユウマが立派になって……」

「団長!私が支えますので、安心してくださいね!」

「いや、それはそれで心配なのだが?」

「む、どういうことですかー?」


こうして俺は、正式に冒険者から男爵になった。