荒野を馬で駆けていく。

 途中の村で、言い値で馬を購入する。

 それを待っている間に、腹に適当な物を詰め込み、水で流し込む。

 焦りはするが、結果的にはこっちのが効率が良いはず。

 馬は無限には走れないし、人間も水分や糖分を摂取しなくては動けない。

 再び馬に跨り、駆け出す。





 どれくらい走っただろうか……。

 もう2日は経ったはず……。

 兵士の巡回を避けるために、街道は使っていない。

 だが、この道で合っているはず……途中の村で聞いたしな。

 きちんと、情報料も払ってな。

 すると……僅かだが、何かが見えてくる……。

「……帝都だ……着いた……!帝都だ!!」

 良かった……!いや、大事なのはここからだ!!

「すまん!馬よ!あと少しでいい!耐えてくれ!!」

「ヒヒーン!」

 高い金を払っただけあり、丈夫でスタミナがある馬だ。

 これなら、帝都まで行ける!!





「なんだ!?止まれ!!」

「悪いな!!止まるわけにはいかん!!」

「な!?おい!だ、誰かーー!!そいつを止めろーー!!」

「なんだ!?」 「キャー!!」 「血塗れの男が……!!」

 ……俺らのことを気にも留めない奴等だが、流石に皆殺しはできないな……だが!!

「どけーー!!前に出てきた奴は、敵とみなし……殺す!!」

 人々が逃げるように走り出し、道が開ける。

 よし!処刑台はこっちだな!!

 ……あった……!!

 ……なんということだ……。

 俺が見間違えるはずがない……。

 ギロチン台にいるのはカグヤだ!!

 馬を降り、人混みをかき分ける!!

「どけーー!!!」

「ヒィ!」「な、なんだ!?」

 腰を抜かした奴を退かして、最前列にくる。

 金網の向こう、処刑台の上にカグヤがいる。
 そして、少し離れたところに男女がいる。

「どうだ!?白状する気になったか!?毒を盛ったと!もうすぐ、死ぬぞ?まあ、今更白状しても許さんがな!」

「私は、そのようなことはしていませんわ。それより、本当に良いのですね?辺境伯を敵に回し、国を守れるのですか?貴方は皇太子なのですよ?しっかり考えた方がよろしいかと」

「お前はいつもそうだ!グチグチ言いやがって!!女はな!俺の言うことに従っていればいいんだよ!!俺に口答えするな!!」

「ねー?そうですわよね!私は貴方に従いますわ。だって愛していますもの」

「そうか!そうだろ!良い女だな!流石は、侯爵家令嬢だ!俺は、そもそも辺境にいた女なんか嫌だったんだよ!見た目が良いから我慢してたら、性格が悪い!終いには、俺を毒殺しようとしやがって!!」

「そこの貴方?ちゃんと皇太子を支えてあげられるの?民を省みることができるの?国を守ってくれている兵士達に感謝は?足を運べるの?王妃になるとは、そういうことよ?」

「なに言ってるのよ!?そんなことするわけないじゃない!兵士達が国を守るのは当たり前じゃない!」

「なにを言っているの?私達は、彼らがいるから無事に生活が出来ているのよ?」

 皇太子と側にいる女は、理解不能という表情だ。

 俺は、すぐに助けに行かなくてはいけないのに、動けなかった……。

 感動のあまりに、涙を堪えるのに必死だった……!!

 変わっていない……!!

 俺の好きなカグヤのままだ……!!

 ……それを、あいつら……許さん!!

 俺は手に魔力を込め、金網を広げる!
 そして中に入るなり、駆け出す!!

「なんだ!?き、グェ!!」

「な!なん、ゴハッ!!」

「どっからき、ゲホッ!!」

 魔力の込めた拳で、兵士達を吹き飛ばしていく!
 そして足に魔力を込め、高く跳躍する!
 そのまま処刑台にのり、振り向く。


 燃えるような長い紅髪。
 整った目鼻立ち。
 小柄でスレンダーな体型。
 何より、その意思の強い瞳。

 ……綺麗だ……。

 こんな状況にもかかわらず、俺は彼女に3度目の恋をしてしまった。