……クソッたれが!!

 宰相の奴め……しくじりやがった!

 全く!どいつもこいつも役に立たん!

 仕方ないから……こいつで憂さ晴らししてやるがな!


「オラァ!どうだ!?」

「アンッ!?も、もう少し優しく……」

「貴様の父親がミスしたんだ!お前が身体で払うのが筋だろうが!」

 俺は、背後から腰を打ち付ける!
 それこそ、何度も何度も!
 その度に、こいつは喘いでいる!
 この感覚は何度やってもたまらんな!
 いわゆる征服感というやつだ!


「も、申し訳ございません……」

「流石の俺も、怪我人を痛めつけることはできないのでな!お前が代わりに受けるがいい!」

 宰相が使い物にならないと、雑務の仕事がこなせないからな。
 それに、俺と宰相が仲が悪いと思われると面倒なことになる。
 反対勢力が、それを見逃すはずがない。
 全く!面倒なやつらだ!大人しく俺に従えばいいものを!
 この、次期皇帝たる俺にな!




「フゥ……この辺で勘弁してやるか」

「あ、ありがとうございます……す、凄かったですわ……」

「フフ、そうだろ!そうだろ!フハハ!」

「お、お許し頂けますか?」

「まあ、いいだろう。俺は寛大な男だからな」

 すると、当の本人がやってきたようだ。
 いつもながら、タイミングが良いやつだ。

「カイル様、先日は申し訳ございません」

「良い、許す。俺は寛大な男だ。だが、次の手は考えてあるんだろうな?」

「ええ、もちろんです。まずは、引き続き刺客は送り続けます。奴とて無敵ではありません。疲労も蓄積されるはずです。そこを、私のとっておきで仕留めます」

「それだけか?また失敗したらどうする?」

「ご安心ください。更に、奴には復讐鬼を向けます」

「ん?どういうことだ?」

「奴には異母兄弟がおります。クロウはそいつの両親を殺した仇です。どんな手を使ってでも殺そうとするでしょう。こちらにとっても、良い駒になります」

「ククク……ハハハ!悪いやつよ!お主が仕向けたことだというのに!だが、そういうのは嫌いじゃない!いいぞ!良い見世物になりそうだ!」

「まあ、これで死んだ奴らも役に立ちます。どうせ、成功しても殺すつもりでしたしね。もちろん、その子供もです」

「可哀想な奴らよ。まあ、自業自得というやつか。それよりも、国境付近は大丈夫なんだろうな?」

「ええ、問題ございません。あちらも、膠着状態を維持しております。おそらく、半年ほどは平気でしょう」

「辺境伯領はどうなっている?」

「あちらも、問題ございません。辺境伯には、《《動けない理由がございますから》》。仮に動いたとしても、大した問題はありません」

「そうか……あとは邪魔な奴らを排除し、親父さえ死ねば……俺が皇帝だ。そして、この大陸を統べるのだ!フハハハ!!」

「……そうですな」

「ん?どうした?怪訝な顔をして?」

「いえ、申し訳ございません。少々右目が痛むもので……」

「そうだな、お前も煮え湯をのまされたからな」

「ええ、必ずや……このままでは終われません」

「よし、では引き続き任せる。なんでも、好きなように使え。俺はここで遊んでいる」

「御意。カイル様の寛大な心に感謝いたします」

「フハハ!奴らもバカだな!お前のように、俺に従えば死なずに済んだものの!」

 俺にカグヤに謝ってくれだと?

 そして正妃にして国を正してくれだと?

 このままだと国がダメになるだと?

 少しは贅沢を控えてくれだと?

 少しでいいから民のことを考えてくれだと?

 こんなことは許されないだと?

 ふざけるな!!

 この次期皇帝の俺様に意見するとは!

 万死に値する!!……ククク、もう死んでいるがな。

 俺様は特別なんだ!

 特別なら、何をしても許されるんだよ!

 ……さて、俺はここで高みの見物といこう。

 駒共が、カグヤとクロウを連れてくるのをな……。