ドラゴン、それは最強の魔物と言われる。

 物理攻撃や魔法攻撃をも弾く、しなやかで強靭な肉体。

 その爪は、鎧ごと人間を切り裂く。

 その顎は、どんなモノだろうと噛み砕く。

 その翼は突風をもたらし、人間は立つことすら困難で、その場にひれ伏す。

 その尻尾は、全てを薙ぎ払う。

 そのブレスは全てを溶かし、人間など生きた痕跡すらも残らない。

 ハクドラが魔の森の地上の王者なら、ドラゴンは魔の森の空の覇者である。

 最低でも3級、強い個体は2級や1級の強さをほこるそうだ。



「さて……お前の強さはどの程度だ?」

「ゴガァァァ!」

 奴の口から、直径1メートル以上の火の玉が吐き出される!

「チィ!?いきなりか!だがその程度!」

 火の玉を、アスカロンで切り裂く!

「グァァ!!」

 切り終わりと同時に、尻尾が飛んでくる!

「クッ!?」

 アロンダイトにて、その尻尾を叩きつける!
 弾き返すことには成功したが、少し腕が痺れたようだ。

「グガ?」

「俺が力で押し負けそうになるとは……これがドラゴンか。それに頭も悪くない。火の玉を斬る隙をついて、尻尾を繰り出してきたか」

 ……ただ、俺は冒険者としては素人だ。
 3級なのか、2級なのか、1級なのかはわからない
 ただ、一つだけ言えるのは……本気で行く必要があるということだ。

「クロウーー!!大丈夫ーー!?」

「ああ!中々強いがな!ハク!少々激しくなる!カグヤを頼む!」

「グルッ!!」

 俺は火の玉を斬りつつ、ドラゴンに接近する!

「魔刃剣!」

「ゴァ!?」

「……多少血が流れてる程度か……さすがだな」

 だが、一度火の玉がとまる。
 その隙をつき、さらに接近する!

「ゴァ!」

「今度は剣激戦といこうか!?」

 二つの剣と、奴の両爪が激しく火花を散らす!

「ガァァァ!!!」

「ハァァァ!!!」

 しばらく、その状態が続くが……。
 奴がいきなり羽ばたいた!

「グッ!?」

 物凄い暴風に見舞われる!
 これはまずいと思い、俺は一度下がる。
 ……が、これが不味かった。

 次の瞬間、奴が大きく息を吸う。

「ゴバァァーー!!」

 そして……火の玉ではなく、圧縮されたレーザーが発射される!
 この直線上にはカグヤが……避けるわけにはいかん!!
 俺は、折れることも溶けることもないと言われるアロンダイトにより、それを受け止める!

「ッーー!!」

 ……熱い!!魔力をまとってなかったら、ドロドロに溶けているところだ!

「ク、クロウーー!!ハク!!クロウが死んじゃう!」

「グルル!!」

「来るな!ハク!水のバリアを張れ!カグヤを余波から守るんだ!」

 何を愛した女性に心配かけてんだ、俺は!!
 俺の後ろにはカグヤがいるんだぞ!!
 ならば……負けるわけにいかんだろうが!!

「ウォォォ!!!」

 左手のアロンダイトを押し込み、少しずつ前進していく……!

「ゴァ!?」

「な、舐めるなよ!ドラゴンがどうした!?デカイトカゲ如きが、調子に乗るんじゃねぇーー!!」

 よし!溜まった!
 俺は、右手に持つアスカロンに魔力を纏わせていた。
 それを振り下ろす!

 その斬撃はレーザーを断ち切る!

「ゴァ!?グ、グォォォーーー!!!」

「もう一度撃つ気か!?ならば……!」

 あえてアロンダイトを手放し、アスカロンを上段で構える。
 俺は魔力を高め、斬れぬものはないと言われるアスカロンに纏わせる!
 さらに、全身や腕に身体強化をかける!

「ゴバァァーー!!」

 再びレーザーが放たれる!

「クロウーー!!やっちゃいなさーーい!!」

 カグヤの発破が、俺に不思議な力を与える!!

「おう!!俺に斬れぬものはなし!!極・魔刃剣!!」

 上段からの振り下ろしが、レーザーを切り裂く!!

 ……そして……。

「グ、ガ、ガ………」

 奴の身体すらも……真っ二つにした。
 半身同士が、おもむろに倒れていく……。

「……フゥ……さすがに魔力を消費したな」

「クロウーー!!すごいわ!!カッコいい!」

「おっと……急に飛びつくなよ。まだ、俺の身体熱いぞ?」

「いいのよ!」

「グルル!」

 俺の周りに、水の塊が浮かぶ。
 そこから、冷たい空気が伝わってくる。

「ああ、気持ちいいな。ハク、ありがとな」

「グルッ!」

 その後興奮するカグヤをなだめ、ドラゴンをアイテムボックスにしまう。

「さて……まずは考察をしなくてはな」

「え?どういうこと?」

「いくら奥に来たとはいえ、上位種のドラゴンがいるのはおかしい気がする。あの強さは、最低2級はあるはず。俺でも本気を出す必要があった。それに……何か、殺気立っていたように感じた。この辺りに、何かあるのかもしれん」

 結局、少しだけ探索することにした。



 しばらくすると、カグヤの様子がおかしいことに気づく。
 なにやら、辺りをキョロキョロし始めた。

「カグヤ?どうした?」

「……何か聞こえない?」

「……いや、俺には聞こえない」

「クロウが聞こえないんじゃ……いや!聞こえるわ!クロウ!こっちよ!」

「待て待て!1人で行くな!」

 ハクがカグヤの前、俺が後ろにつき、カグヤが指差す方へ向かう。

「確か……こっちから……あっ!あそこから聞こえるわ!」

 カグヤが指差す方に、目を凝らしてみる……何かあるな。
 岩場と岩場の間に空洞があり、何か丸い物が置いてある。

「ハク!カグヤを頼む!俺が見てくる」

「グルッ!」

 俺は慎重に近すぎ、敵がいないことを確認して空洞内に入る。

「これは……卵だな。デカイな……直径30センチはあるな」

 とりあえず持ち上げて、カグヤの元に戻る。

「……うん!これよ!これから聞こえるわ!」

「まじか……どういうことだ?生きてるからアイテムボックスには入らんし。カグヤ、これ欲しいのか?」

「そうよ!だって、その子が私を呼んだもの!」

「……まあ、とりあえず持って帰ろう。で、ハクを引き取ったところに相談してみよう」

「私が持つわ!そうしてって聞こえるの!」

「だ、大丈夫か?重いからな?」

「大丈夫よ!わぁ……あったかい……」

「ハク、カグヤを乗せて急いで戻ろう。これの親が来るとも……いや、そういうことか?」

「ん?どうかしたの?」

「グルルー?」

「いや、なんでもない。憶測でしかないし。さあ、行くぞ」

 カグヤをハクに乗せ、魔の森を引き返す。





「よし……無事に抜けたか」

「ふぅ、さすがに疲れたわね」

「グルルー」

 ハクだけは元気だな。
 強さ以上に、体力が驚異的なようだな。




 その日は疲れていたこともあり、すぐに家に帰宅する。
 都市に着いた時には、すでに外が暗くなっていたしな。
 作り置きのカレーを食べ、風呂に入り、寝る時間になったのだが……。

「ハク!先に部屋に行ってて!」

「グルルー」

 ハクがカグヤの部屋に入っていく。

「ク、クロウ!!」

「ん?どうかしたか?」

「……ムー!もう!察しなさいよー!」

「イテッ!なんで叩くんだ!?」

 俺は何故か、ポカポカと叩かれている。

「クロウ!わ、私のこと好き!?」

「あ、ああ!もちろんだ!」

「な、なんで……何もしないのよ!?」

「……え?あ、いや……していいのか?」

「ち、違うわよ!?そ、そういうアレじゃなくて……キ、キスくらいなら許してあげる……」

 ……ヤベェ……!めちゃくそ可愛いですけど!!
 いや、俺もいつしていいかわからなかったんだよな……。
 いかんな……女の子に言わせてしまうとは……だが、これの鍛錬はどうすれば?

「カ、カグヤ……」

 俺が肩に手を置くと、カグヤは顔を上げて、そっと目を閉じる……。

 俺はその小さな唇に、優しくキスをする……。

「んっ……」

 身体中を何かが駆け抜け、幸せな気持ちで満たされる……。
 名残惜しいが、これ以上しているとどうにかなりそうなので、ゆっくりと唇を離す。

「……お、おやすみ!!」

「お、おやすみ」

 カグヤが駆け出したと思ったら、自分の部屋のドアを開けたところで固まる。

「そ、その……またしてくれてもいいからね!」

 そしてバタン!とドアが閉まる。

 ……可愛すぎる……!
 あんなの反則だろ……!

 俺は、その場に崩れ落ちるのだった……。