さて……そろそろいいかな。

 自主練を終え、まだ日が暮れるまで時間はある。

 なので、少し特訓をしようと思う。

「カグヤ、魔力を放つ練習をしよう」

「うん?クロウみたいに?」

 カグヤは首を傾げている……可愛い。
 ハクも真似している……なんか、可愛く見えてきた。

「ゴホン!……そうだ。俺までとはいかなくても、ある程度なら出来るはずだ。魔力があり、先入観がない。エリゼのことも、よく知っている。条件は満たしている」

「あー……あの魔力の弾みたいのね。よく、クロウは追いかけられていたわね。たまにくらってたけど……アハハ!思い出しちゃった!」

「笑い事じゃないから!俺死ぬかと思ったんだから!あの人容赦しないし!」

「でも、エリゼ言ってたわよ?クロウがどんどん避けたり、同じ魔力で応戦したりするから楽しかったって」

「あんにゃろうめ……!……エリゼのは、指弾タイプだったな。魔力の弾を作り、打ち出す感じの。俺は剣を使っていたから、剣で練習して出来るようになった。カグヤは弓でいくなら……矢を魔力で作ってみるか」

「あっ!そうね!それなら、イメージしやすいわ!」

 ……それに、それなら生物を殺す忌避感も減るだろう。
 直接生き物を殺す時の感触は、しらないに越したことはない。

「よし、早速やってみるか」

「うん!どうしたらいいの?」

「まずは弓を構えてくれ」

「……はい、できたわ」

「魔力はわかるか?」

「うーん……感覚が光魔法とは違うのよね……うーん」

「なら、これが一番早いか。カグヤ、失礼する」

 俺は後ろから、カグヤを抱きしめるような形になる。
 俺の両手で、カグヤの両手を握る形だ。

「にゃ!?ク、クロウ!?」

 ……ヤベェ……!
 なんだ、この良い匂いは……!
 意識がどっかいきそうになる……!

「お、落ち着け!俺!違う!カグヤ!」

「お、お、落ち着けないわよ!?」

「グルルー??」

 ハクが、俺も遊んでーとでも言うように、擦り寄ってくる。

「………ハク、違うから。邪魔しないでくれ。あとで、遊んてやるから」

「グルルー!」

 ハクは大人しく下がり、芝生で寝始めた……。
 フゥ……だが、お陰で落ち着いた。
 ……カグヤは相変わらず、アワアワして耳まで赤いがな。

「カグヤ、俺が今から魔力を高めて放つ。もちろん、最小限にだ。それを感じ取れ」

「う、うん……が、頑張るわ!」

 ……まずは、俺が落ち着け。
 魔力制御は正常な状態でないといけない。
 ……よし、いけるな。

「どうだ?」

「あっ、んっ、なんか温かいわ……」

 ……ダメだ!こんなんダメだ!
 よくない!これはよくない!

「あ、そ、そうか……ダァ!!」

 俺はカグヤから離れる。
 でないと……危ない……!

「ど、どうしたの?」

「ゼェ、ゼェ……大丈夫だ、繊細な魔力制御に少し疲れただけだ」

「そ、そうなのね……もっとしてくれていいのに……」

「はい?なんだって?」

「な、なんでもないわ!そ、それより!わかった気がするわ!」

「ほう?それは助かった」

 色々な意味で……。

「見てて!いつも変換するのをしないで、そのまま放つイメージ……!」

 弓を引いている方の手が、眩い光を放つ!

「えい!」

 ヒュン!という風切り音がし、壁に当たる!

「……まあ、仕方あるまい。訓練あるのみだ」

「はぅ……威力ないわね」

 壁に当たったら、消えてしまった。
 傷もついてない。

「だが、できたな。偉いな!凄いぞ!」

「ちょっと!?頭ぐちゃぐちゃになっちゃうわよー!」

「グルルー!!」

「ちょっと!?ハクまで!やめてーー!!」






 その後、やりすぎたので、2人で謝る。

「べ、別に怒ってないし!た、楽しかったわ!」

「グルルー!」

「うむ、懐いたようで何よりだ」

「じゃあ、夕方になったから、私はご飯作るわ!」

「だ、大丈夫か?俺、死なないか?」

「失礼ね!あの頃とは違うわよ!」

 そう言いながら、庭から部屋に戻り、エプロンを身に着けた。
 そして髪をまとめ、ポニーテールにする。

 ……グハッ!?な、なんだ!?
 こ、この破壊力は……!

「エヘヘ、どう?に、似合う……?」

 クルッと回転しながら、そんなことを言う。

「最高だ……カグヤ、結婚してくれ」

「にゃにゃー!?バカーー!!なんで今なのよーー!?」

「イテ!?なんでだ!?」

「グルルー!」

 ……おかしい、これ以上ないタイミングだと思ったのだが。
 女心とは、一体どうなっているんだ?




 ……どうやら、嘘ではなかったようだ。

「美味いな……」

「なんで複雑そうな顔なのよ?まあ、いいけど」

「ありがとう、美味しいよ」

「フ、フン!初めから、そういえばいいのよ!」

「グルルー!」

「あら?ハクも美味しい?お肉たっぷりあるからね!」

「グルッ!!」

 ちなみに、今日のメニューはカレーだ。
 ハクには、この間狩ったオークを解体して、その一部を与えている。
 足を綺麗にして、部屋の中に入れてある。
 でないと、護衛の意味がない。


「フゥ、ご馳走さまでした。作ってくれてありがとな」

「お粗末様でした。こ、これで、役に立ってるかしら?わ、私……クロウに何も返せてないわ……」

 ポニテをイジりながら、そんなことを言い出した。
 ここで、そんなことないと言うことは簡単だ。
 だが、きっと……それではいけないのだろう。

「少しずつでいい、焦らなくていい……俺はいつまでも側にいる」

「クロウ……うん!ありがとう!」

「グルルー!!」

「ハクもありがとう!」

 その後風呂に入り、寝る時間となる。

「ハク、カグヤを頼むぞ?」

「グルッ!」

「そ、そうね!別々の部屋よね!」

「ああ、そうだ。ハクがいれば安心だ。何故なら、パスで繋がっているからな。異常があれば、すぐに伝わる」

「うー!!で、でも!ま、まだ勇気ないわ……もう!おやすみ!!」

 ……さっぱりわからない。
 ……誰が、助言をしてくれないだろうか?

 そして、夜が更けていく……。







 そして翌朝……事件が起きる。

「隊長!!俺の首を捧げます!!」

「お兄ちゃん!?ダメだよ!?か、代わりに私の首を!!」

 ……さて、どうしたものか。