さて、一応聞いておくか。

「カグヤ。そういえば、光魔法はどんなのが使えるんだ?」

「えーっと……傷を癒すヒールにハイヒール、毒や麻痺などの状態異常を治すリムーブ、アンデットや死者を弔うターンアンデット……くらいかしら」

「なるほど……バリア系は使えないのか?」

「もっと覚えたかったけど、覚える時間が限られていたから……そんな暇あったら、お稽古や貴族間の集まりに出なさいって……」

「そうか……うむ、ではそちらも考えておくか」

 全ての魔法には、特殊な才能が必要だ。
 最低条件は、魔力があること。
 さらに、その魔力を様々な属性に変換できること。
 何より、明確なイメージや、性格により色々と変わってくる。

 魔法には火、水、地、風、光、闇がある。
 心が優しい人は、光魔法や水魔法に向いていたり。
 堅実な人は、地魔法に向いてたり。
 攻撃的な人は、火魔法に向いてたり。
 陰険な人は、闇魔法に向いてたり。
 自由奔放な人は、風魔法に向いてたり。
 とまあ、様々である。

 俺には、魔力だけは豊富にあったが、変換ができなかった。
 それに、それを放出するという技術もないだろう。
 なまじ魔力が多い分、コントロールが難しいのもある。
 なので、力任せに魔力を乗せて、放つという剣技を覚えた。
 あえて名をつけるなら、無属性魔法といったところか。

 これはエリゼさんがよく使っていた技で、使い手はほとんどいないようだ。
 使うには豊富な魔力と、魔法とはという固定概念がない方がいいらしい。
 幸い、カグヤもよく見ていたから、イメージはつきやすいだろう。

「……攻撃的な魔法に関しては、人を傷つけるってイメージができなかったのよね。もちろん、今はできるかもしれないけど……光魔法は、すぐに覚えられたわ……だって、戦いに傷ついているクロウを思い浮かべたから……」

「カグヤ……ありがとう。その気持ちが、俺はとても嬉しい」

「ほ、ほら!行くんでしょ!?そ、それより……お腹減ったわ!」

「ククク……相変わらず、可愛いやつ。そうだな、昼食ってないからな。適当なところで食べるとしよう」

 その後、耳まで真っ赤になったカグヤに引っ張られ、適当な店に入る。





「ふぅ、お腹いっぱいだわ。それでね、クロウ。武器なんだけど、弓がいいかなって」

「……そういえば、昔やっていたな。俺はよく的にされてたな……よく死ななかったものだ」

 アレは本当に危なかったから、思い出したくない……。
 幼いながらも、その腕前は良かったからな。
 何回、身体のあちこちを掠めたことか……。

「そうだっけ?」

「やられた方は覚えてるんだよ!」

「アハハ!それもそうね!」

 まあ……楽しそうだからいいか。

 その後、ロレンソさんに教えてもらった場所へ行く。

 すると、中年の少し小太りした男性が対応してくれる。

「これはこれは、いらっしゃいませ。この都市で不動産業を営んでおります、ドルバと申します。本日は、どのようなご用件でしょうか?」

 確か、ロレンソさんが冒険者カードを見せるといいと言っていたな。

「すみません、家を探していまして……私は、こういう者です」

「……これは、失礼いたしました。その若さで5級とは……都市を守ってくださり、いつもありがとうございます」

 そう言いながら、ドルバという方は頭を下げる。

「あっ!違うのです!まだ、新人でして!ここにも来たばかりなのです!」

「む?新人で5級とは?ふむ……いや、詳しくは聞きますまい。ここは、そういう場所です。ただ、そちらの可愛らしいお嬢さんをみるに……騎士と令嬢の駆け落ちといったところですかな?」

「かっ、駆け落ち……!エヘヘ……」

 カグヤは何やら、両手を頬に当て、モジモジしている。
 とりあえず、俺が話を進めよう。

「ええ、そのようなものです。それで、ロレンソさんからここに行くと良いと言われまして……」

「なんと……!?ギルマスの右腕と言われるロレンソ殿から……!?それはそれは、こちらも手が抜けませんな。もちろん、抜いたことなどありませんが」

 どうやら、有名な方だったようだ。

「それで、二人で住む家を探しているのです。部屋はそれぞれに。共有スペースあり。周りに建物が少ない。人通りが少ない。見通しがの良い。庭があれば助かります。大きい生き物も、そのうちいるかもしれません」

「二人の家……エヘヘ」

「ホホホ、仲むずまじく良いですね。わかりました、ご予算はどの程度でしょうか?」

「金貨5枚から6枚ほどですね」

 俺の手持ちも、まだ銀貨2枚はあるから、金貨1枚あれば平気だろう。

「なるほど……それだけあれば、条件のものは提供できそうですね。いつからお住まいになりますか?」

「早ければ早いほど、助かりますね」

「わかりました。至急探させて頂きます。ご連絡は、ギルドでよろしいでしょうか?」

「ええ、それでお願いします」

「わかりました。では、また後日改めてお訪ねください」

「はい……カグヤ?おーい、カグヤー?」

「でも、でも、二人っきりってこと?いや、でも……あぅぅ……!」

「やはり二人きりは嫌か?すまんな、部屋は別々だからな」

「ち、違うわよ!クロウのバカーー!!」

「ホホホ、仲が良くていいですな」




 さて……また、魔の森に行けるか?

「カグヤ、体力は平気か?」

「うん!大丈夫よ!私、意外と体力はあるのよ!」

 確かにな……逃亡中も疲れたりはしていたが、倒れたり根をあげたりはしなかったな。
 意外と冒険者にも向いているのか?

「そうか……じゃあ、魔の森の入り口付近だけ見て回ろう。普通のリンゴと、俺の依頼であるファイアウルフを探してみよう。そして、暗くなってきたら戻ろう」

「わかったわ!」

 カグヤは 両手をブンブンと大きく振り、軽快な足取りだ。

「……何やら、今日はずっとご機嫌だな?」

「にゃい!?そ、そんなことにゃいわよ!?……た、楽しそうだなって……クロウと暮らすの……私、嫌じゃないからね……?」

 ゴフゥ……!た、たまに出る上目遣いは反則だろ!?
 人がどんだけ我慢してると……いや、いかん。
 その考え方はダメだ。

「なら、良かったよ。俺も楽しみだ。さあ、行こうか?」

「うん!」

 そして、都市を出たのだが……。
 こちらに向かって、誰かが走ってくる……。
 その後を、何人かが追っている……。

「まさか……あれはナイル!!」

「え!?それって昨日の!?」

 何故ここにいるかはわからないが、放っておくわけにはいかんな。

 何故なら、ナイルがいなければ、俺は生きてはいない。

 そして、カグヤも……今が、恩を返すときだ!!