休憩を挟みつつ、辺境伯領を目指すこと2日。

 ようやく、近くまで来ることができた。

 幸いにも、途中の村で天然風呂に入ることもでき、十分な食事と睡眠も取ることができた。

 その分金はまた減ったが、致し方ない。

 カグヤも遠慮はしていたが、明らかに嬉しそうだったしな。

 もちろん、俺はカグヤの風呂が覗かれないように見張りを終えた後、風呂に入った。

 いやな予感がするので急いではいるが、ヘトヘトの状態では元も子もないからな。





 そして俺とカグヤは、辺境伯領近くの割と大きな町で、情報を集めることにする。

 村とかでは、中々情報が行き届かないからな。それに、大きな町なら情報屋がいる。

 そこで、俺とカグヤは驚愕の事実を知る。

「何!?辺境伯家と帝国軍で戦争だと!?」

「そ、そんな……!」

「え、ええ。といっても、今は睨み合いが続いていますが……」

「情報感謝する。これを、とっておいてくれ」

「こ、こんなにですかい!?」

「それに値する情報だ。それと……わかっているな?」

「へい、もちろん。アンタ達のことは、俺は知らない。見たことも、話したこともない」

「なら、いい。もし、お前が漏らしたとしたら……わかるな?」

「……只者じゃないですな……わかってやす。俺だって情報屋の端くれだぜ」

「よし、いいだろう。カグヤ、行くぞ」

「………」

「カグヤ!しっかりしろ!ショックなのはわかるが、今は一刻を争う!」

「にゃい!?ち、違うわよ!いや、違くないんだけど……随分、しっかりしてるなって……感心してたの」

「なるほど、そういうことか。まあ、これでも隊長だったからな。部下の命を守るために、情報は必須だったからな。もちろん、俺が生き残るためにも……」

「そうよね……あの黒い髪が、真っ白になるほど苦労したのよね……」

「まあ、仕方ないさ。やっぱり、変か?」

「ううん!そんなことないわ!似合ってて……カッコいいわよ!」

「それは、嬉しいな。よし!気合い入れて行くか!!」

 俺はカグヤをお姫様抱っこして、馬を預けた厩舎に向かう。

「ちょっと!?自分で走れるから!聞いてるの!?……もうーー!!」






「もう!クロウったら!」

「悪い悪い、つい嬉しくてな」

 俺達は馬に乗り、辺境伯領を目指す。

 ちなみに、守りやすいように、カグヤを俺の前に乗せている。

 そして、見えてきた……。

 既に戦闘が始まっている!!

「カグヤ!!しっかり掴まっていろ!!戦場を駆け抜ける!!」

「わ、わかったわ!」

「安心しろ!カグヤには、傷一つすらつけさせやしない!!」

「ク、クロウ……!いや!守られてばかりは!私だって魔法使えるわ!怪我したら治してあげる!」

「いつの間に!?そうなのか!わかった!もしもの時は、頼むとしよう!」

 まあ、俺が傷を負うとは思えないがな……。
 あんな、王都に籠っているだけの奴らに!!


 俺は背中から1本だけ剣を抜いて、馬のスピードを上げる!

 ……あの鎧は帝国軍の物!!ならば、遠慮はいらん!!
 奴らは、ろくに戦いもしないのに高価な武器や鎧を使用する。
 ただ、見栄を張るためだけに!!
 あれがあれば、俺の仲間がどれだけ助かったことか……!


「退けぇ!!帝国のクソ共!!俺の前に出るやつは、皆殺す!!」

 俺は後ろから、帝国軍に突っ込んでいく!!
 今はカグヤがいるから、駆け抜けることが最優先だ!!


「なんだ!?」

「どこからきた!?」

「伏兵を回したのか!?」

「邪魔だ!!死ね!!魔刃剣乱舞!!」

 俺は魔力を込め、上から下、下から上、右から左、左から右と、剣を縦横無尽に振るう!

「馬鹿め!!この鎧は特製……え?う、腕がない!?い、いだい!!ウァァ!!」

「フン!腕で受けるからだ!腹で受ければ……ゴボッ!!ば、バカな……中まで斬られている……?く、くそぅ……」

帝国軍の兵士が倒れていく。

「こ、これが戦場……」

「カグヤ、辛いなら目を閉じてるといい」

「いいえ!貴方だけを戦わせているのに、そんなことはできないわ!」

「……そうか、良い女だな。だが、無理はするなよ?」

「わかってるわ!!」


 魔力の斬撃が、帝国軍を蹴散らしていく!
 舐めるなよ!?こっちは激戦区で戦って来たんだ!
 帝都でぬくぬくとしていた奴らなど、俺の敵ではない!!

 そして、道が開ける!!

「よし!抜けた!」

「あ!あれ!お父様だわ!お父様ーー!!」

「なんだ!?あの強者《つわもの》は!?いや、それよりも、カグヤ!!ワシの愛するカグヤではないか!!カグヤーー!!」

 号泣しながらこちらに向かってくる。

 相変わらずだな……ヨゼフ様は。

 末っ子のカグヤを溺愛してたからな……。

 馬を降り、カグヤは嬉しそうに駆け出していく。

「カグヤーー!!良かった……!!すまんかった!!」

「ううん!良いの!!私は無事よ!!お父様こそ、無事で良かった……!!」

 良かった……ヨゼフ様が生きていて……。

 そして、カグヤをヨゼフ様に会わせてあげられて……。


 さて、色々と疑問点はあるが……とりあえず、奴らを蹴散らすとしよう。

 親子の感動の再会は、誰にも邪魔をさせん!!