どうにか村を見つけ、馬を買うことが出来た。

水と食糧も調達できた。

ただ、これで俺の所持金は半分に減った。

いかんな……カグヤを守るためにも、金を稼ぐ必要があるな。

「クロウ、どうしたの？」

「いや、着の身着のままで来させてしまったなと……すまない！俺にもっと蓄えがあれば、着替えとかも買ってあげれたのだが……」

ここにはないが、風呂とかにも入りたいだろうしな……。
話をきいたら、1日牢屋に入れられて、そのまま処刑台に連れていかれたと……。
……いかんな……怒りが湧いてくる……！
やはり、殺しておくべきだったか？
……いや、あれでいい……まずは、カグヤの安全が最優先だ。

「そんなことないわ！水だって、食糧だって、クロウがお金を出してくれたわ！貴方が、命をかけて稼いだお金を！それを、私の着替えなんかのために使ってはいけないわ！」

なんて素晴らしい女性だ……！！
王都で、無駄に税金を使って着飾る女共に聞かせてやりたい！！
……ますます、惚れてしまうな。

「ふっ……カグヤは、良い女になったな」

「そ、そうかしら？……ク、クロウも良い男になったわ！」

「そうか、嬉しいな。愛する女性のために、頑張った甲斐があるというものだ」

「あ、あ、愛する……！？な、何言ってるのよ！？さ、さっきも言ってたわ！」

カグヤは耳まで真っ赤になっている……可愛いな。

「そのままの意味だ。カグヤ、君を愛している。出会った頃からずっと……」

「…………」

「カグヤ？どうかしたか？」

「にゃい！？にゃんでもにゃいわ！」

「いやいや、猫が沢山出てきてるし……」

「いいの！！ほら！行くわよ！」

「はいはい、わかったよ。全く、相変わらずよくわからん」

「……なによ、涼しい顔しちゃって……こっちはドキドキしっぱなしなのに……」

「ん？なんか言ったか？」

「なんでもないわよ！」

そして再び馬に乗り、辺境伯領へ向かう。




しばらく走った後に、恐る恐る聞いてみた。

「カグヤ……辺境伯はどうしてこないんだ？」

カグヤの死刑を止めていないということは……。
おかしいな、カグヤを溺愛している方々が黙っていないはず……。

「……わからないわ。私にも突然のことだったから……いきなり捕まったから、伝えることも出来てないし……」

「だが、俺の所まで噂が来るくらいだ。おそらく、ヨゼフ様にも伝わっているはずだ。それなのに、助けに来ない？……俺には考えられない。それに、エリゼさんが黙っていないだろう」

「正直言って、私もそう思うわ……でも、実際来てないわ。確かに、変だなとは思うけど……」

うーん……何か引っかかるな。

「カグヤ、しっかり掴まってくれ。スピードを上げる。何か、嫌な予感がする」

「え！？う、うん！わかったわ！」

……柔らかいもの、背中に……。
……いかん！そんな邪な気持ちでは！しっかりしろ！俺！！

俺はそんな葛藤を抱えながら、辺境伯領まで急いだのだった……。