1話

・冒頭 敵の魔族へ突っ込む竜の構図

エルシアン(相棒の竜)「さようなら、アレン。ボクがいなくても元気でね……」
アレン「待て……エルシアン! 早まるな! ……行かないでくれ! エルシアンーッ!」
その後、エルシアンは敵へと自爆同然に至近距離からブレスを放ち、大爆発が生じた


・戦闘後、最寄りの街の宿に入ってから

ジェラルド(パーティーリーダー)「竜に乗らない竜騎士は不要だ。今日限りでお前はクビだ」
アレン「なっ……!」
傷心気味のアラン、これに驚き目を見開く
誰もがジョブを得る世界にて
竜騎士アレンはSランク冒険者パーティー、栄光の剣にスカウトされて仲間となり、世界を滅ぼす四体の災厄である魔族の一体を退けた
しかしアレンの竜は冒頭のように、魔族討伐時に命を散らしてしまったのだ
ビリー(仲間1)「全くだな。竜騎士のジョブは相棒の竜から力を得ると聞く」
キャシー(仲間2)「竜がいないんじゃ足手纏いよね」
アラン「皆……!?」
ジェラルド「しかも一体目の魔族との戦いで命を散らすとは。魔族は残り三体もいるのに。期待外れもいいところだよなぁ」
ジェラルドのがっかりだと言わんばかりの様子に、アランは歯を食いしばり、拳を握り締める
アランの相棒の竜、エルシアンは幾度となく仲間の危機を救ってきたのにと。
アラン「誰が期待外れだと? 歯ぁ食いしばれッ!」
怒りのあまり、アランはジェラルドの頬を殴り、壁まで吹き飛ばしてしまった
アランは怒りのまま、
アラン「もういい。お前らとはここまでだ」
と宿を出ていった。

・エルシアンの故郷近辺にて

アレンはエルシアンの鱗を握り締め、故郷へ向かった
せめて鱗だけでも故郷に返して、弔ってやろうと思って
竜騎士のジョブに目覚めた後、エルシアンと出会った洞窟に到着した
アレン「エルシアン、戻ってきたぞ。すまない、あんな……くだらない奴らなんかのために……」
アレンが悔い、地に塞ぎ込むと、その時エルシアンの鱗から光が上がった
巨大な半透明な銀の竜が現れる
竜神「竜騎士アレン。嘆くには早い、顔を上げよ」
アレン「あなたは……?」
竜は自身を竜神と名乗った
さらにアレンに竜騎士のジョブを授けたのは自身であると言い、竜騎士ジョブについても説明を加える
竜神曰く、竜騎士スキルは竜と一蓮托生ゆえに、片方が死んでもその一部があれば、一度だけもう片方を蘇生可能なのだという
アレン「ならエルシアンも……!」
竜神「この一度きりのみであるが」
竜神、エルシアンを蘇生する
エルシアンも嬉しそうにアレンに鼻先を寄せる
エルシアン「アレン、数日振りかな? ボクにとっては一瞬みたいなものだったけど」
アレン「エルシアン……! 本当に生き返ったのか!」
涙ぐむアレンだったが、エルシアンの腹から間の抜けた音が鳴る
エルシアン「良い匂いがする……。アレン、そのおっきな包みは?」
アレン「ああ。これな」
アレンが包みを開けると、そこには近くの街で買った料理が沢山入っていた
アレン「エルシアンの墓に供えようと思って。何もないのは寂しいから」
エルシアン「じゃあ、これ全部ボクのだね! いっただっきまーす!」
もしゃもしゃと元気そうに料理を食べるエルシアンに、アレンは微笑んだ
その様子を同じく微笑ましげに眺めていた竜神にアレンは問われる
竜神「これからどうするのか?」
アレン「分かりません。でも相棒に美味いものをたくさん食べさせてやりたいです。これまでの旅では食事さえ満足に……」
理由はジェラルドがエルシアンの食事代をケチったからであった
仲間との旅では、巨体ゆえに敵に見つかるという理由でエルシアンは自由に狩りにも行かせてもらえなかったので、エルシアンは常に空腹だった
その時、竜神は唸ってから言う
アレンたちが倒した魔族はかつて竜神にも牙を剥いた仇敵だったと
ある意味、仇を取ってくれたアレンたちに礼がしたいということだった
アレンも何故竜神が現れてくれたか悟る
要するに恩返しだったのだ
竜神「なんでもよいぞ。これでも神、大抵の不可能は可能にできる」
アレン「ならさっき言ったように、エルシアンに美味しいものをたくさん食べさせたいです」
竜神「我の力なら造作もないが、それはお主がしてやった方が奴も喜ぶ。ならばセカンドジョブでも授けてやろう。《美食家》がよいか」
アレン「美食家?」
竜神「うむ。このジョブは調理困難な対象でさえ簡単に料理し、美味しくできるスキル。あらゆる食材のポテンシャルを最大限に引き出せる」
そして竜神はアランにジョブを授け、消えた
直後、エルシアン、食べ終わってから顔を上げて、
エルシアン「あれっ、竜神様、帰っちゃった? お話ししたかったのになぁ。残念」
あまりにマイペースなエルシアンだった
その時、レッドディアーと呼ばれる魔物が茂みから姿を現す
狩るのが大変という魔物、きっと竜神が寄越してくれたのだろうとアランは考えた
アラン「エルシアン!」
エルシアン「もちろんっ!」
エルシアンは爪の一撃でレッドディアーを仕留める
それからアランは血抜きや解体処理を行うが、美食家ジョブのお陰で全てを正確にこなせた
さらにレッドディアーの肉を木の棒に刺し、串焼きにすると、今まで食べたこともないほど美味しく、アレンもエルシアンも感激
アラン「まさか、魔物がこんなに美味しくなるなんて。今後もガンガン狩るぞー!」
エルシアン「おー!」
少女「……い、良い匂い……」
肉の匂いにつられて、茂みからボロボロの少女が出てきて、倒れてヒキ