早速俺達は、依頼を受ける為にクエストボードを見ているのだが......
「何よこのE,Dランクの依頼の少なさはぁ! 私は早くランクを上げたいのにぃぃぃ!」
あまりの少なさに、俺が何か言うよりも先にホノラがキレた。
「確かに少ないな......討伐系は『攻撃魔法が使える人のみ!』とかの受注制限があるし、それ以外の依頼はそもそも無い。まだ初日だし、そんなに急いで上げることはないだろ」
「ダメ! すぐがいいの! 高ランク冒険者になれば国家の魔導書の図書館にも入れるわ! そこにしか無い系統の魔法も多いの。もし私にそこの魔法に適正があったらすぐ行かないのは損じゃない!」
ホノラの冒険者になりたい理由が少しわかった気がした。俺の目的も大事だが、ホノラの使える魔法を見つける目的にも力を貸そう!
「お~兄ちゃんに嬢ちゃん! 無事に冒険者になれたんだなぁ!」
先程パンナ達から俺達を助けてくれようとしたドワーフのおっちゃんが駆け寄ってきた。
「ドワーフさん! さっきは助けようとしてくれてありがとうございました!」
「いやぁ兄ちゃん達がぶっ飛ばしてくれてスカッとしたよ! あと、俺の名前はドワーフさんじゃなくて”メツセイ“な!」
「メツセイさん、それでどうかしたんですか?」
「兄ちゃん達、低ランクの討伐依頼がなくて困ってるんだろ? いい事教えてやろうと思ってよ!」
「いい事ですか?」
「そう! なぜ低ランクの討伐依頼が少ないか分かるか? それは魔物を討伐した方が早くランクが上がるからだ」
成程。確かに理にかなっていると言える。危ない依頼をこなした方が強くなるのは当然だろうからな。
「ならばどうするか! 採取依頼は2ランク上の難易度まで受注する事が出来る。しかも、採取中に魔物を討伐してもその討伐数はランクアップ条件に加算されていくんだ」
「つまりCランク採取クエストをこなしつつ魔物を討伐すれば爆速でランクが上がるって事ですか!?」
「その通りよ! 教えてやったからにゃあ、この方法使って早く出世して、俺に酒でも奢ってくれや! ガッハッハ!」
「メツセイさん! ありがとうございますっ!」
「ちょっとこれ凄くいい方法聞いちゃったんじゃないの!?」
横で話を聞いていたホノラも目を輝かせながら俺に抱きついて揺らしている。
「――――じゃあ、このCランクの採取クエスト【特選!!青魔ンドラゴラ3個の納品】やっちゃうか!」
「おー!」
俺とホノラは、魔ンドラゴラを取るなら必要だろうという事で耳栓を購入して、森の中へ向かうのだった。
◇◇◇◇
「――――で、青魔ンドラゴラってどこに生えてんの?」
「そりゃあ【特選!!】なんだからそう簡単に見つからないでしょ」
俺達はサラバンドの西に広がるウッソー大森林、その奥地に約3日をかけて到達した。
「あ、そういえば依頼文に『デカい木の根元に生えてる青いキノコっぽいのが魔ンドラゴラ』って書いてあったな......」
「あ! マツルみて! このキノコじゃない?」
ホノラが手を振っている方に行ってみると、確かにデカい木の根元にビビットブルーのキノコが四つ生えていた。
「ちょうど三本あるし、これでクエストクリアね!」
「何そのまま抜こうとしてんのストップストップ!」
俺はホノラがそのまま抜こうとしているのを急いで止めた。
「良いか? 魔ンドラゴラってのは、抜いた瞬間に叫び声をあげるんだ。それを直接聞くと死ぬから、耳栓買ってきたんだろ?」
「マツルって異世界人なのに変な所詳しいわね......」
ゲームとか本の知識だよね。
「――――ホノラ耳栓付けたか?」
「......え?」
俺の声が聞こえて無さそうなのでバッチリだな!
俺とホノラはせーので魔ンドラゴラを引き抜いた。
世にも恐ろしい絶叫とは、一体どんな声なのだろうか――――
”マンドラゴラァァァァァァ!!!!!!“
「お前そうやって叫ぶんかいィィィィ!」
意外すぎる絶叫に驚きながらも俺達は、特選!!青魔ンドラゴラを3本収穫することに成功したのだった。一本は残しておこう。過剰採取は良くないことらしいからな。
「――――声圧にはちょっと驚いたけど、案外楽勝だったわね!」
「Eランクの俺達でも行ける採取だからな。ちゃんと対策すればこんなもんだ――――」
物陰からガサガサと、何かが近付いてくる音がする。
「なんの音?」
「しっ......ホノラもいつでも戦闘ができるような体制を取って......」
「わかったわ!」
俺も刀を抜き構える。物陰から現れたのは、背中に大量の棘を蓄えた魔獣であった。
「グルルルルル......」
魔獣は棘を逆立たせ、臨戦態勢といった様相だ。
「ホノラ、あの魔獣は?」
「あの魔獣は針球獣、Cランクの魔獣ね。背中を丸めて大きな針球になって突進して来るわ! ちょうどあんな風に......」
ホノラの説明の通り、ボールボーグは巨大な針の球となりこちらに転がって来た。
「避けろ避けろ!! あんなの喰らったら全身穴だらけだぞ!?!?」
「あっぶないわね!」
突進を間一髪で躱した。するとボールボーグは俺達の後ろにあった大木に激突! 大木はメキメキと音を立てて根元から倒れてしまった!
「グルルルルルル......」
ボールボーグは針球から元に戻り、フラフラとよろめき始めた。
「流石にでっかい木とぶつかるのは堪えたか!? 今の内にトドメを刺してやる!」
俺は身動きの取れないボールボーグに向かって刀を振り下ろす。しかし、刃は背中の針の塊に阻まれ体に傷を付けることは出来なかった。
「かってぇ! ホノラのグーパンチでなんとかならないか!?」
「嫌よ! あんな針触ったら痛いでしょ!?」
ちょっとくらい我慢してくれよぉぉぉ!
「――――じゃあ俺が首を落とす!」
顔の部分に近付いて初めて気が付いた。コイツ、目が完全に潰れていた。
ただ傷付いている訳じゃない。ドス黒い煙のような物が今も顔を喰っているのだ。
「!? なんだその顔!?」
俺は一瞬、刀を振り下ろすのが遅れてしまった。その一瞬でボールボーグはまた針の球になり、次は俺達を殺さんと雄叫びをあげた。
「ああなっちまったらアイツは無敵だ! 何か衝突させられるようなデカい木とか岩は!」
クソッ! 近くにそんな都合良くある訳ないか!
「――――マツル! ボールボーグを出来るだけ引き寄せて私の所に走って!」
ホノラは先程倒れた大木の近くに居た。何か策があるようだ。
「オーケイ! 信じるぞ!」
「グルギャァァァァ!!!!」
俺が走り出すと同時に、ボールボーグ改め巨大針球も突撃を始める! 少しでも気を抜けば追い付かれるスピード感でホノラの元へと飛び込んだ。
「――――一体何をする気なんだ!?」
「マツルもちゃんと耳塞いどきなさいよ!」
ホノラは倒れた大木の根元に生えていた青いキノコを抜き去った。あのキノコは俺達がさっき残しておいた――――
”マンドラゴラァァァァ!!!!“
「グギィ!!?!!?!!?!?」
ボールボーグが俺達を串刺しにする直前、魔ンドラゴラの絶叫を耳にしたボールボーグは泡を吹いてその場に倒れ込んだ。
「魔ンドラゴラの声を直接聞いたら死ぬ。そうだったわよね?」
「ああ......助かった!」
◇◇◇◇
「さて、高ランクの魔獣も討伐できたことだし、依頼も達成してるし、帰るとするか!」
「そうね! こんな完璧にこなしたんだったら、一気にDランクに上がっててもおかしくないんじゃないの!?」
「帰ったらメツセイさんに感謝しないとな~」
「――――それで、どっちから帰るの?」
あれ? そういえば森の地図って無いよな......?
「ホノラちゃん......? 帰り道ってどっちか覚えてる...?」
「? 分からないわよ? マツルが知ってるんじゃないの!?」
その後、たまたまこの森にクエストに来ていたメツセイさんに発見されるまで二日、俺達は森の中を彷徨うのだった。
「何よこのE,Dランクの依頼の少なさはぁ! 私は早くランクを上げたいのにぃぃぃ!」
あまりの少なさに、俺が何か言うよりも先にホノラがキレた。
「確かに少ないな......討伐系は『攻撃魔法が使える人のみ!』とかの受注制限があるし、それ以外の依頼はそもそも無い。まだ初日だし、そんなに急いで上げることはないだろ」
「ダメ! すぐがいいの! 高ランク冒険者になれば国家の魔導書の図書館にも入れるわ! そこにしか無い系統の魔法も多いの。もし私にそこの魔法に適正があったらすぐ行かないのは損じゃない!」
ホノラの冒険者になりたい理由が少しわかった気がした。俺の目的も大事だが、ホノラの使える魔法を見つける目的にも力を貸そう!
「お~兄ちゃんに嬢ちゃん! 無事に冒険者になれたんだなぁ!」
先程パンナ達から俺達を助けてくれようとしたドワーフのおっちゃんが駆け寄ってきた。
「ドワーフさん! さっきは助けようとしてくれてありがとうございました!」
「いやぁ兄ちゃん達がぶっ飛ばしてくれてスカッとしたよ! あと、俺の名前はドワーフさんじゃなくて”メツセイ“な!」
「メツセイさん、それでどうかしたんですか?」
「兄ちゃん達、低ランクの討伐依頼がなくて困ってるんだろ? いい事教えてやろうと思ってよ!」
「いい事ですか?」
「そう! なぜ低ランクの討伐依頼が少ないか分かるか? それは魔物を討伐した方が早くランクが上がるからだ」
成程。確かに理にかなっていると言える。危ない依頼をこなした方が強くなるのは当然だろうからな。
「ならばどうするか! 採取依頼は2ランク上の難易度まで受注する事が出来る。しかも、採取中に魔物を討伐してもその討伐数はランクアップ条件に加算されていくんだ」
「つまりCランク採取クエストをこなしつつ魔物を討伐すれば爆速でランクが上がるって事ですか!?」
「その通りよ! 教えてやったからにゃあ、この方法使って早く出世して、俺に酒でも奢ってくれや! ガッハッハ!」
「メツセイさん! ありがとうございますっ!」
「ちょっとこれ凄くいい方法聞いちゃったんじゃないの!?」
横で話を聞いていたホノラも目を輝かせながら俺に抱きついて揺らしている。
「――――じゃあ、このCランクの採取クエスト【特選!!青魔ンドラゴラ3個の納品】やっちゃうか!」
「おー!」
俺とホノラは、魔ンドラゴラを取るなら必要だろうという事で耳栓を購入して、森の中へ向かうのだった。
◇◇◇◇
「――――で、青魔ンドラゴラってどこに生えてんの?」
「そりゃあ【特選!!】なんだからそう簡単に見つからないでしょ」
俺達はサラバンドの西に広がるウッソー大森林、その奥地に約3日をかけて到達した。
「あ、そういえば依頼文に『デカい木の根元に生えてる青いキノコっぽいのが魔ンドラゴラ』って書いてあったな......」
「あ! マツルみて! このキノコじゃない?」
ホノラが手を振っている方に行ってみると、確かにデカい木の根元にビビットブルーのキノコが四つ生えていた。
「ちょうど三本あるし、これでクエストクリアね!」
「何そのまま抜こうとしてんのストップストップ!」
俺はホノラがそのまま抜こうとしているのを急いで止めた。
「良いか? 魔ンドラゴラってのは、抜いた瞬間に叫び声をあげるんだ。それを直接聞くと死ぬから、耳栓買ってきたんだろ?」
「マツルって異世界人なのに変な所詳しいわね......」
ゲームとか本の知識だよね。
「――――ホノラ耳栓付けたか?」
「......え?」
俺の声が聞こえて無さそうなのでバッチリだな!
俺とホノラはせーので魔ンドラゴラを引き抜いた。
世にも恐ろしい絶叫とは、一体どんな声なのだろうか――――
”マンドラゴラァァァァァァ!!!!!!“
「お前そうやって叫ぶんかいィィィィ!」
意外すぎる絶叫に驚きながらも俺達は、特選!!青魔ンドラゴラを3本収穫することに成功したのだった。一本は残しておこう。過剰採取は良くないことらしいからな。
「――――声圧にはちょっと驚いたけど、案外楽勝だったわね!」
「Eランクの俺達でも行ける採取だからな。ちゃんと対策すればこんなもんだ――――」
物陰からガサガサと、何かが近付いてくる音がする。
「なんの音?」
「しっ......ホノラもいつでも戦闘ができるような体制を取って......」
「わかったわ!」
俺も刀を抜き構える。物陰から現れたのは、背中に大量の棘を蓄えた魔獣であった。
「グルルルルル......」
魔獣は棘を逆立たせ、臨戦態勢といった様相だ。
「ホノラ、あの魔獣は?」
「あの魔獣は針球獣、Cランクの魔獣ね。背中を丸めて大きな針球になって突進して来るわ! ちょうどあんな風に......」
ホノラの説明の通り、ボールボーグは巨大な針の球となりこちらに転がって来た。
「避けろ避けろ!! あんなの喰らったら全身穴だらけだぞ!?!?」
「あっぶないわね!」
突進を間一髪で躱した。するとボールボーグは俺達の後ろにあった大木に激突! 大木はメキメキと音を立てて根元から倒れてしまった!
「グルルルルルル......」
ボールボーグは針球から元に戻り、フラフラとよろめき始めた。
「流石にでっかい木とぶつかるのは堪えたか!? 今の内にトドメを刺してやる!」
俺は身動きの取れないボールボーグに向かって刀を振り下ろす。しかし、刃は背中の針の塊に阻まれ体に傷を付けることは出来なかった。
「かってぇ! ホノラのグーパンチでなんとかならないか!?」
「嫌よ! あんな針触ったら痛いでしょ!?」
ちょっとくらい我慢してくれよぉぉぉ!
「――――じゃあ俺が首を落とす!」
顔の部分に近付いて初めて気が付いた。コイツ、目が完全に潰れていた。
ただ傷付いている訳じゃない。ドス黒い煙のような物が今も顔を喰っているのだ。
「!? なんだその顔!?」
俺は一瞬、刀を振り下ろすのが遅れてしまった。その一瞬でボールボーグはまた針の球になり、次は俺達を殺さんと雄叫びをあげた。
「ああなっちまったらアイツは無敵だ! 何か衝突させられるようなデカい木とか岩は!」
クソッ! 近くにそんな都合良くある訳ないか!
「――――マツル! ボールボーグを出来るだけ引き寄せて私の所に走って!」
ホノラは先程倒れた大木の近くに居た。何か策があるようだ。
「オーケイ! 信じるぞ!」
「グルギャァァァァ!!!!」
俺が走り出すと同時に、ボールボーグ改め巨大針球も突撃を始める! 少しでも気を抜けば追い付かれるスピード感でホノラの元へと飛び込んだ。
「――――一体何をする気なんだ!?」
「マツルもちゃんと耳塞いどきなさいよ!」
ホノラは倒れた大木の根元に生えていた青いキノコを抜き去った。あのキノコは俺達がさっき残しておいた――――
”マンドラゴラァァァァ!!!!“
「グギィ!!?!!?!!?!?」
ボールボーグが俺達を串刺しにする直前、魔ンドラゴラの絶叫を耳にしたボールボーグは泡を吹いてその場に倒れ込んだ。
「魔ンドラゴラの声を直接聞いたら死ぬ。そうだったわよね?」
「ああ......助かった!」
◇◇◇◇
「さて、高ランクの魔獣も討伐できたことだし、依頼も達成してるし、帰るとするか!」
「そうね! こんな完璧にこなしたんだったら、一気にDランクに上がっててもおかしくないんじゃないの!?」
「帰ったらメツセイさんに感謝しないとな~」
「――――それで、どっちから帰るの?」
あれ? そういえば森の地図って無いよな......?
「ホノラちゃん......? 帰り道ってどっちか覚えてる...?」
「? 分からないわよ? マツルが知ってるんじゃないの!?」
その後、たまたまこの森にクエストに来ていたメツセイさんに発見されるまで二日、俺達は森の中を彷徨うのだった。