「マツル遅い! 私先に行くわよ!!」
ホノラ足クッソ速ぇ! 俺だって鍛えてたしこまで遅くはないと思うけど次元が違う!
ホノラは家屋を軽々飛び越え、一瞬で城門の外まで行ってしまった。
――――
「ハァ......ハァ......やっと着いた......」
途中道なりに進もうとして大迷いをかまし、俺が到着したのはかなり時間が経ってからだった。
「んぉ......お前は確か......マツルとか言った野郎じゃねぇか」
「お前はゆうべの......」
城門を出た所で聖騎士長、クーガが腕を組んで立っていた。そしてここから少し離れた辺りで凄まじい戦闘音が鳴り響いていた。
「クーガ......さん、一体何があったんですか?」
「呼び捨てで俺は構わん......それでだな、魔王ニシュラブの配下を名乗る上位魔人が城壁の魔力障壁を破壊した」
まっ......魔王の配下!? 魔獣の大群から敵の強さがインフレしすぎじゃないですか!?
「――なんでも......『ワイヴァーナンチャラウルフ』っていうのが? 国にいるらしくて、要求を無視して突っ込んで行った俺の部下が三十人ほどやられた......」
「ワイヴァーナンチャラウルフ」? どこかで聞いた事があるような......
「小僧、それは我の種族名であるぞ! それに、ニシュラブと言う名の魔王は先の魔獣の大群とこの我を操って、ついでに我を捨て駒にしようとしていたな!」
俺の服の中に居た(いつから居たんだ?)モフローがひょっこり顔を出して答える。
あ! そうだ!! モフロー呼びが定着し過ぎて忘れてたよ!
......じゃあ魔王の配下が来たの俺のせいじゃぁぁぁぁん!!
「モフロー......お前がここに居るのは黙ってろ。な?」
バレたら......バレたらマズイ!!
「どうしたマツル? なにをコソコソ喋ってるんだ?」
「あ! なんでもないよクーガ! それで......今戦ってるのは誰なんだ?」
いや、聞かなくても大体予想はついている。てか俺より先に来て俺の視界にいないって事はそういう事だろ。
「確か......配下の方が名前を言おうとして......『私の名はバカ――――』って所まで言いかけた所で『バカは一人で十分よ!!』ってパツキンの女の子が上空から飛び蹴りしてきた。んで今その女の子がバカを一方的に殴ってる」
ホノラ......モフローの件でちゃんと相手の名乗りは聞こうって俺と約束したじゃん......
恐る恐る近付いてみると、バカ(仮称)はホノラに仰向けに押さえつけられ、一方的に顔とボディを殴打されていた。
「――ホノラ落ち着け!! もうこのバカ意識無いって!!」
一先ずホノラを羽交い締めにしてバカから引き剥がす。
「マツル見て見て!! あのバカ凄いの!! どんなに殴ってもすぐ傷が治るの!!」
ホノラは眩い笑顔でえぐい事を言うなぁ......
「おのれ小娘......私の事を勝手にバカにしやがってぇ......大体私の名前は“バカラ”だ! あと一文字位頑張ってもらおう!」
もう意識戻ってる! しかも傷も完治か......これ意外と厄介な相手なのでは?
「見てほらマツル! すぐ治っちゃうのよ! これは殴りごたえがあるわね!」
良い感じのサンドバックってことかよ......サンドバック? アレ、確か俺にホノラがついてきた理由って殴打に耐えたからだったよな?
じゃあ多分だけど俺より耐久性の高いこのバカラとか言う野郎もサンドバックになったら俺はどうなるんだ?
えーとつまり......つまりだけど......俺とコイツは恋敵!? ってコト!?
「おい......バカラとか言ったな......俺がテメェを殺す」
「男の方は一体何に“キレ”てんだ――――」
【我流“斬術”王虚・霧冷】
バカラの胴体が肩から脇腹にかけてジグザグに両断される。
「“斬れ”てんのはお前の方だよバーカ......」
再生が難しくなるように刃をノコギリのようにして斬ってやった。俺のライバルになんてなるからじゃクソが。
「――――体が......上手く繋がらない!!」
ほら見ろ。どうやら再生よりも傷の修復の方が近かったみたいだな。新しく部位を生やす事は出来ないのだろう。
「マツルもう倒しちゃったの!? 私もっと楽しみたかったのに!」
わーおバイオレンス! って俺も人の事言えないか......
「凄いなマツル! 昨日ももっと本気でやってくれれば良かったものを!」
大剣を担ぎながらえっほえっほとクーガが走ってくる。
「で、どうするバカラとやら。色々と情報を話してくれるなら命と安全な生活だけは保障して――――」
「黙れ!! 貴様ら私の事を愚弄しやがってぇ......!!」
唇を血が出る程噛み、地面に拳を叩き付けながらバカラが唸る。
「どうみたってお前の負けだろ。それともアレか? トドメ刺して欲しいのか?」
人に見た目が近しい生物を殺した事ないから気が引けるんだよなぁ......
「カアッ! その甘さが、後に後悔を生むことになるのだ!!」
「何を――――」
バカラは胸ポケットからビー玉サイズの黒い球体を取り出した。
その球体はそこだけ空間を抜き取ったかのような漆黒で、それを飲み込んだバカラの身体から黒い煙が噴き出した。
「なんだ!?」
「身体が繋がって......!」
「マツルとそこの女の子! この煙はマズイ!! 身体に触れないうちに下がれ!」
俺達はクーガに叫ばれるまま、煙に触れないように後ろへ下がった。
膨大に流れ出た煙は一瞬で繋がったバカラの身体に吸収された。
「これがワタシの切り札!! これがワタシの闇の力!! アァ......最高にいい気分ダ!!」
俺達の目の前に立っていたのは、身体から出た煙を纏ったバカラのような物であった。
ホノラ足クッソ速ぇ! 俺だって鍛えてたしこまで遅くはないと思うけど次元が違う!
ホノラは家屋を軽々飛び越え、一瞬で城門の外まで行ってしまった。
――――
「ハァ......ハァ......やっと着いた......」
途中道なりに進もうとして大迷いをかまし、俺が到着したのはかなり時間が経ってからだった。
「んぉ......お前は確か......マツルとか言った野郎じゃねぇか」
「お前はゆうべの......」
城門を出た所で聖騎士長、クーガが腕を組んで立っていた。そしてここから少し離れた辺りで凄まじい戦闘音が鳴り響いていた。
「クーガ......さん、一体何があったんですか?」
「呼び捨てで俺は構わん......それでだな、魔王ニシュラブの配下を名乗る上位魔人が城壁の魔力障壁を破壊した」
まっ......魔王の配下!? 魔獣の大群から敵の強さがインフレしすぎじゃないですか!?
「――なんでも......『ワイヴァーナンチャラウルフ』っていうのが? 国にいるらしくて、要求を無視して突っ込んで行った俺の部下が三十人ほどやられた......」
「ワイヴァーナンチャラウルフ」? どこかで聞いた事があるような......
「小僧、それは我の種族名であるぞ! それに、ニシュラブと言う名の魔王は先の魔獣の大群とこの我を操って、ついでに我を捨て駒にしようとしていたな!」
俺の服の中に居た(いつから居たんだ?)モフローがひょっこり顔を出して答える。
あ! そうだ!! モフロー呼びが定着し過ぎて忘れてたよ!
......じゃあ魔王の配下が来たの俺のせいじゃぁぁぁぁん!!
「モフロー......お前がここに居るのは黙ってろ。な?」
バレたら......バレたらマズイ!!
「どうしたマツル? なにをコソコソ喋ってるんだ?」
「あ! なんでもないよクーガ! それで......今戦ってるのは誰なんだ?」
いや、聞かなくても大体予想はついている。てか俺より先に来て俺の視界にいないって事はそういう事だろ。
「確か......配下の方が名前を言おうとして......『私の名はバカ――――』って所まで言いかけた所で『バカは一人で十分よ!!』ってパツキンの女の子が上空から飛び蹴りしてきた。んで今その女の子がバカを一方的に殴ってる」
ホノラ......モフローの件でちゃんと相手の名乗りは聞こうって俺と約束したじゃん......
恐る恐る近付いてみると、バカ(仮称)はホノラに仰向けに押さえつけられ、一方的に顔とボディを殴打されていた。
「――ホノラ落ち着け!! もうこのバカ意識無いって!!」
一先ずホノラを羽交い締めにしてバカから引き剥がす。
「マツル見て見て!! あのバカ凄いの!! どんなに殴ってもすぐ傷が治るの!!」
ホノラは眩い笑顔でえぐい事を言うなぁ......
「おのれ小娘......私の事を勝手にバカにしやがってぇ......大体私の名前は“バカラ”だ! あと一文字位頑張ってもらおう!」
もう意識戻ってる! しかも傷も完治か......これ意外と厄介な相手なのでは?
「見てほらマツル! すぐ治っちゃうのよ! これは殴りごたえがあるわね!」
良い感じのサンドバックってことかよ......サンドバック? アレ、確か俺にホノラがついてきた理由って殴打に耐えたからだったよな?
じゃあ多分だけど俺より耐久性の高いこのバカラとか言う野郎もサンドバックになったら俺はどうなるんだ?
えーとつまり......つまりだけど......俺とコイツは恋敵!? ってコト!?
「おい......バカラとか言ったな......俺がテメェを殺す」
「男の方は一体何に“キレ”てんだ――――」
【我流“斬術”王虚・霧冷】
バカラの胴体が肩から脇腹にかけてジグザグに両断される。
「“斬れ”てんのはお前の方だよバーカ......」
再生が難しくなるように刃をノコギリのようにして斬ってやった。俺のライバルになんてなるからじゃクソが。
「――――体が......上手く繋がらない!!」
ほら見ろ。どうやら再生よりも傷の修復の方が近かったみたいだな。新しく部位を生やす事は出来ないのだろう。
「マツルもう倒しちゃったの!? 私もっと楽しみたかったのに!」
わーおバイオレンス! って俺も人の事言えないか......
「凄いなマツル! 昨日ももっと本気でやってくれれば良かったものを!」
大剣を担ぎながらえっほえっほとクーガが走ってくる。
「で、どうするバカラとやら。色々と情報を話してくれるなら命と安全な生活だけは保障して――――」
「黙れ!! 貴様ら私の事を愚弄しやがってぇ......!!」
唇を血が出る程噛み、地面に拳を叩き付けながらバカラが唸る。
「どうみたってお前の負けだろ。それともアレか? トドメ刺して欲しいのか?」
人に見た目が近しい生物を殺した事ないから気が引けるんだよなぁ......
「カアッ! その甘さが、後に後悔を生むことになるのだ!!」
「何を――――」
バカラは胸ポケットからビー玉サイズの黒い球体を取り出した。
その球体はそこだけ空間を抜き取ったかのような漆黒で、それを飲み込んだバカラの身体から黒い煙が噴き出した。
「なんだ!?」
「身体が繋がって......!」
「マツルとそこの女の子! この煙はマズイ!! 身体に触れないうちに下がれ!」
俺達はクーガに叫ばれるまま、煙に触れないように後ろへ下がった。
膨大に流れ出た煙は一瞬で繋がったバカラの身体に吸収された。
「これがワタシの切り札!! これがワタシの闇の力!! アァ......最高にいい気分ダ!!」
俺達の目の前に立っていたのは、身体から出た煙を纏ったバカラのような物であった。