話は、マツルとロージーがちょび髭に連行されてから少し後のギルドサラバンド支部に移動する。
夢の色鉛筆クエストの後、ホノラはマツルから少し遅れてギルドへ戻ってきた。
「――――あれ? マツルは? 私より先に戻ったと思うんだけど......何みんなザワザワしてるの?」
ホノラはここでギルド内の違和感に気付く。普段は飲んだくれている暇人達が慌ただしく何かを話している。いつもはクエストカウンターでニコニコしているウィールが動揺しきった顔でどこかと連絡を取っている。
「三馬鹿、何があったか教えなさい」
ちょうどホノラの目の前を通りかかったパンナ一行を捕まえて話を聞く事にした。
「ハッ!!!! 誰かと思えば子猫ちゃんか......」
「次その呼び方したらまた土下座させるわよ」
ホノラの言う土下座とは釘のように地面に埋める事を指す。
それを聞いたパンナは名前を言い直して話を続ける。
「ハッ......ホノラちゃん......落ち着いて聞いて欲しい。ついさっきの事なんだが――――」
マツルとロージーが国際条約違反で捕まり、ノヴァーリスのギルド本部へ連行された事をパンナは話した。
その事実はホノラを激怒させるには十分だった。
「何よそれ!!!! マツルが何したって言うの!?......納得できない。今から追えばまだ間に合う、すぐ行ってブチのめしに――――」
「ホノラさん待ってください!!!!」
「話を聞いてくれ嬢ちゃん!!!!」
自分のコントロールが出来なくなり、感情のままに追いかけようとしたホノラを制止したのはウィールとメツセイだった。
「二人とも離して!! 今行けば間に合うの!! マツルを連れて行ったカスを殺す!!」
「ホノラさん冷静になって――! 恐らく来たのは本部の職員! そんな人殺してしまったらもっと問題が大きくなってしまいます!」
「ウィールの言う通りだ!! 今から俺達もどうやって兄ちゃんとギルマスを取り戻そうか話し合ってた所なんだ!!」
ホノラは入口の扉を蹴破ろうとしていた足を戻し、ウィールとメツセイ主導の作戦会議に参加する事になった。
――――
作戦会議は、酒場“ヨージ”の一角を使用して行われた。
「――大体、なんでマツルが捕まらなきゃなんないの!? そんな大それた事してないでしょ!?」
怒りが落ち着いたとはいえまだ煮え切らないホノラが威嚇するように机に手を叩き付ける。
「これは、あくまで私の推測なのですが――」
そう言うとウィールは、みんなの前に置かれた黒板に一枚の紙を貼り付けた。
「――この書面には、国際条約違反の詳細に『超魔導兵器使用の疑い』と書かれています。恐らく......マツルさんが最後に放った大魔法をそれと勘違いされたのではないかと」
その場にいる大半の人間がこの推測に「納得」の二文字を浮かべた。
「じゃあマツルは尚更悪くないじゃない。あれは自分だって簡単に証明出来るわ」
「しかし兄ちゃんがそれを証明するのは不可能ってモンだ」
ここから説明を始めたのはメツセイだった。
「どうして?」
「兄ちゃんはあの魔法でごく微量にあった魔力を全て使い果たした。その後一切魔力が回復していない所を見るにどこかしらから借り受けた魔力だったんだろう......異世界から来た人間は魔力が無いってぇのは事実だし、兄ちゃんが魔法を使いましたという“事実”を証明するのは不可能だろうなぁ......」
「もし証明出来なかったらどうなるの......?」
ホノラの質問はウィールとメツセイに聞こえたはずなのに、二人とも答えない。
「なんで答えないの......? 教えてよ!」
ホノラがウィールの腕を掴み今にも泣きそうな顔で訴える。
ウィールも隠し切れないと踏んだのか重々しくその口を開く。
「もし......もしもの話ですよ......国際条約違反が確定してしまった場合......死刑になってしまうかと」
「マツルが死ぬ」しかも戦いの中でではなく嘘に塗れた不本意の中で。
その事実は、ホノラの心の枷を壊すのには十分すぎる一撃になった。
「私......やっぱり行くわ。マツルを連れて行った奴を殺しにじゃない。マツルを助けに行くの」
その目に涙は無く、赤色の瞳には決意を込めていた。
「やっぱりこうなっちまうのか......」
「まぁ、元よりそのつもりでしたしね」
ウィールとメツセイがホノラの肩に手を置く。
「俺達も一緒に行くぜ」
「私達も一緒に行きます」
「メツセイさん......ウィールさん......ありがとう!」
「ハッ......やはりノヴァーリスか......いつ出発する? 俺も同行する」
バァァァン! とホノラ達の前に現れたのは冒険者でもないパンナであった。三分の二馬鹿は同行しないらしい。
「三馬鹿」
「ハッ!!!! 今回は俺のみだ! しっかりと名前で......パンナと呼んで頂こう!!!!」
またやかましい奴が仲間になったな。と三人は思った。
しかし戦力としては支部最高になるので快く(?)迎え入れる事になり、四人は4日後の裁判の日に向けてサラバンドを出発する。
全てはマツルを、おまけとしてギルドマスターを助ける為に。
夢の色鉛筆クエストの後、ホノラはマツルから少し遅れてギルドへ戻ってきた。
「――――あれ? マツルは? 私より先に戻ったと思うんだけど......何みんなザワザワしてるの?」
ホノラはここでギルド内の違和感に気付く。普段は飲んだくれている暇人達が慌ただしく何かを話している。いつもはクエストカウンターでニコニコしているウィールが動揺しきった顔でどこかと連絡を取っている。
「三馬鹿、何があったか教えなさい」
ちょうどホノラの目の前を通りかかったパンナ一行を捕まえて話を聞く事にした。
「ハッ!!!! 誰かと思えば子猫ちゃんか......」
「次その呼び方したらまた土下座させるわよ」
ホノラの言う土下座とは釘のように地面に埋める事を指す。
それを聞いたパンナは名前を言い直して話を続ける。
「ハッ......ホノラちゃん......落ち着いて聞いて欲しい。ついさっきの事なんだが――――」
マツルとロージーが国際条約違反で捕まり、ノヴァーリスのギルド本部へ連行された事をパンナは話した。
その事実はホノラを激怒させるには十分だった。
「何よそれ!!!! マツルが何したって言うの!?......納得できない。今から追えばまだ間に合う、すぐ行ってブチのめしに――――」
「ホノラさん待ってください!!!!」
「話を聞いてくれ嬢ちゃん!!!!」
自分のコントロールが出来なくなり、感情のままに追いかけようとしたホノラを制止したのはウィールとメツセイだった。
「二人とも離して!! 今行けば間に合うの!! マツルを連れて行ったカスを殺す!!」
「ホノラさん冷静になって――! 恐らく来たのは本部の職員! そんな人殺してしまったらもっと問題が大きくなってしまいます!」
「ウィールの言う通りだ!! 今から俺達もどうやって兄ちゃんとギルマスを取り戻そうか話し合ってた所なんだ!!」
ホノラは入口の扉を蹴破ろうとしていた足を戻し、ウィールとメツセイ主導の作戦会議に参加する事になった。
――――
作戦会議は、酒場“ヨージ”の一角を使用して行われた。
「――大体、なんでマツルが捕まらなきゃなんないの!? そんな大それた事してないでしょ!?」
怒りが落ち着いたとはいえまだ煮え切らないホノラが威嚇するように机に手を叩き付ける。
「これは、あくまで私の推測なのですが――」
そう言うとウィールは、みんなの前に置かれた黒板に一枚の紙を貼り付けた。
「――この書面には、国際条約違反の詳細に『超魔導兵器使用の疑い』と書かれています。恐らく......マツルさんが最後に放った大魔法をそれと勘違いされたのではないかと」
その場にいる大半の人間がこの推測に「納得」の二文字を浮かべた。
「じゃあマツルは尚更悪くないじゃない。あれは自分だって簡単に証明出来るわ」
「しかし兄ちゃんがそれを証明するのは不可能ってモンだ」
ここから説明を始めたのはメツセイだった。
「どうして?」
「兄ちゃんはあの魔法でごく微量にあった魔力を全て使い果たした。その後一切魔力が回復していない所を見るにどこかしらから借り受けた魔力だったんだろう......異世界から来た人間は魔力が無いってぇのは事実だし、兄ちゃんが魔法を使いましたという“事実”を証明するのは不可能だろうなぁ......」
「もし証明出来なかったらどうなるの......?」
ホノラの質問はウィールとメツセイに聞こえたはずなのに、二人とも答えない。
「なんで答えないの......? 教えてよ!」
ホノラがウィールの腕を掴み今にも泣きそうな顔で訴える。
ウィールも隠し切れないと踏んだのか重々しくその口を開く。
「もし......もしもの話ですよ......国際条約違反が確定してしまった場合......死刑になってしまうかと」
「マツルが死ぬ」しかも戦いの中でではなく嘘に塗れた不本意の中で。
その事実は、ホノラの心の枷を壊すのには十分すぎる一撃になった。
「私......やっぱり行くわ。マツルを連れて行った奴を殺しにじゃない。マツルを助けに行くの」
その目に涙は無く、赤色の瞳には決意を込めていた。
「やっぱりこうなっちまうのか......」
「まぁ、元よりそのつもりでしたしね」
ウィールとメツセイがホノラの肩に手を置く。
「俺達も一緒に行くぜ」
「私達も一緒に行きます」
「メツセイさん......ウィールさん......ありがとう!」
「ハッ......やはりノヴァーリスか......いつ出発する? 俺も同行する」
バァァァン! とホノラ達の前に現れたのは冒険者でもないパンナであった。三分の二馬鹿は同行しないらしい。
「三馬鹿」
「ハッ!!!! 今回は俺のみだ! しっかりと名前で......パンナと呼んで頂こう!!!!」
またやかましい奴が仲間になったな。と三人は思った。
しかし戦力としては支部最高になるので快く(?)迎え入れる事になり、四人は4日後の裁判の日に向けてサラバンドを出発する。
全てはマツルを、おまけとしてギルドマスターを助ける為に。