「――うぐ......アァ......!」
「おぉ!! 息してる! おーいギルマス! 兄ちゃんの呼吸が戻ったぞ!!」
どこか遠くでメツセイの声が聴こえている気がする......あれ、俺どうしたんだっけ? 体が動かない......
少し視点をずらしてみると、そこは前遭難しかけた(なんならしてた)時と同じ真っ白の何も無い空間で、後ろを見てみるとそこには――――
俺に絞め技をかけているナマコ神様がいた。
「あの......ナマコ神様? 何してるんですか?」
「何って......美脚チョークスリーパーだよ?」
「なんの技か聞いた訳じゃねぇんだよォォォ!! なんでそんな事してたのかって聞いてんの!! あと美脚とかいう情報いらん!」
そこまで強く絞められてはいなかったようで、すぐに振りほどき飛び退く事に成功した。
今後この空間に来た時はしっかりと意識のある状態で来るよう心掛けよう......
「君さぁ......ああいう無謀な賭けは今後一切やめてくれよ? あんな”勝算あります“みたいな感じだったのに根性て! 死んでもおかしくなかったね。てかなんで生きてんの?」
「そうだよ!! 俺どれくらい意識飛んでた!? みんなは? 魔獣の群れは!?」
俺はナマコの脇部分を掴んで捲し立てるように問い詰める。コイツが何か出来る訳じゃないのに。
こんな所でナマコ神様に構ってる場合じゃない! 早く意識を戻さなければ。
「落ち着きなさいな......君が寝ていても私は起きていた......見るかい? 君が死にかけている間何があったのか......それを見てからでも、遅くはないだろう?」
ナマコ神様はそう言うと俺が遭難して死にかけてた時と同じように画面のような物を俺の目の前に映しだした。
そこには、俺が意識を失ってからが映っていた――――
◇◇◇◇
映像は、俺とホノラが狼の背に乗っている所から始まった。
狼は20メートルはある城壁を一跳びして上にいるギルドマスター達の所へ着地した。
「ギルドマスター! 大変なの!! マツルが......! マツルが!!」
狼がぐったりとした俺を優しく寝かせたり、ホノラの泣き顔を見た事でギルドマスターはすぐさま状況の深刻さに気が付いたようだ。
「ッ!!!! これは......待機していた回復魔道士は総員彼の治癒に当たるように!! 急げ!! あとホノラ君にはなにか着るものを!」
「着替え覗いたら魔獣より先にぶち殺すわよ......」
俺の身体は速攻で医務テントまで運ばれて行ってしまった。
しかし、視点はギルドマスター達の俯瞰で固定されているようで、便利な事この上ない。
「マツル君に何があった? さっきのバカデカい雷の魔法となにか関係が?」
着替えを終えたホノラはギルドマスターと心配で上に上がってきたメツセイに状況を説明していた。
そこに控えている狼と戦闘になった事。俺が雷撃を根性で耐えて狼を仲間にしたはいいものの呼吸が止まり、いきなり倒れ今に至る事。
ここまで聞いてギルドマスターとメツセイは唖然とした顔をしていた。
「マツル君、あの大魔法を辛うじてとは言え耐えたの? はは......相変わらず滅茶苦茶だなぁ......」
「うむ......我も詠唱までして威力の底上げを図った我の最強魔法を人間の小僧に耐えられるとは思わなかった......我もお陰で魔力切れだ」
「――――だが、兄ちゃんの呼吸がないのは楽観視していい状況じゃぁねぇなぁ......事態は一刻を争う」
「ハッ......ちょっと良いかギルドマスターよ......」
そこで急に会話に割り込んできたのはパンナだった。ホントコイツ話に割り込んで来るの大好きだな。
「パンナ、どうした?」
「ハッ......俺......こんな魔法を長時間使い続けるの初めてで......魔力が切れそうなんだぜ......」
パンナをよーく見てみると、足はガクガクしてるし、冷や汗を滝のように流しながらさっきのホノラより泣いていた。
すると徐々に徐々に地平線の向こうからうっすらと見えていたパンナの溶岩壁が小さくなっていくのがわかった。
「ありがとう、パンナ......さて、急遽この作戦は第二段階へと移行する! この段階での目標は、マツル君が意識を取り戻すまで粘る事! それだけだ!」
え......俺?
「――――マツル君は異世界から来た人間だ......それが関係しているかは分からない。けど! 彼ならなんとかしてくれる......そんな気がするんだ。だってこの僕に勝ったんだぜ? いや、僕負けてないけどね?」
おいおいギルドマスターがなんか変な事言い出したぞ!? みんな「ちょっと責任乗せすぎじゃない?」って反論してくれ!
「確かに! ギルドマスターの言う通りかもしれん! 兄ちゃん、閃狼の大魔法の直撃を受けても意識と呼吸が無いだけで済んでるんだぜ? 兄ちゃんはすげぇ奴だ! 俺が保証する!! ガッハッハ!!!!」
いやメツセイさん!?!? 呼吸が無いって相当ですよ!? あとすぐ横に無傷だった人がいますよ!?
「そうよ!! 私の拳をあんなに耐えたのは! みんなが気味悪がって近付いて来なかった私と対等に接してくれたのはマツルが初めてなの!! アイツならきっと、また私と暴れてくれるって信じてる!」
ホノラ? 俺がなんとかしそうって話と関係ないねそれ? 変に持ち上げるの止めてくれない?
ギルドマスター、メツセイ、ホノラの言葉を聞いた周りの人達からも「その通りだ」と言う声がちらほら上がり始めた。
「「マッツッル!! マッツッル!!」」
そしてついにはマツルコールが始まってしまった......
ヤバい......みんなして俺に何を求めてるんだよ!? てか殆どの冒険者と俺絡みなかっただろ? なんでそんな元気よく俺の名前を叫べるんだよ!
「じゃあみんな!! 覚悟は決まったか!!!!」
「「「応!!!!」」」
「俺達全員で、マツル君が目を覚ますまでの時間稼ぎを全力でやる!」
「――ガッハッハ!! まずは俺が先陣を切ろう!【岩石魔法“巨岩大牢壁”】!!!!」
メツセイが杖を打ち付けると、魔獣の群れを丸々囲む巨大な岩壁が生成された。
「さぁ! これで周りへの被害を気にせずにぶっぱなせるぞ!! てめぇら始めろォ!」
メツセイの合図と共に、先程より強大な魔法が飛び交いだした。
ここで映像は止まった。
◇◇◇◇
「――――どうだった? 面白かっただろう?」
「まじかよ......責任で胃が......」
なんだよあの「マツル君なら、何とかしてくれそうな気がするんです」って!! おかしいだろ! なんだよあのマツルコール!? 宗教!?
でも......ホノラの言葉はちょっとだけ嬉しかった。なんか普段は聞けない本音が聞けた気がして。
「正直私はあんな責任の中に君を放り込むのは忍びなくてね......だから君があれを見て判断して欲しいと思ったんだ」
ナマコ神様は、「もし責任が重いと感じるなら、私も知らないどこかにこのまま転生させても良い」と続けてくれた。
なるほどそれでわざわざ記録を取っておいて見せてくれたのか。
ぶっちゃけ、俺はあんな風に言われるほど立派な人間じゃない。アイツらよりずっと弱いし......でも――
「俺......やるよ。強くなりたいとか、ここで死んだら元の世界へ帰れないかもしれないとか、そういうのもあるけど......」
「けど?」
「俺がいない所で好き勝手言われてるのがムカつくからだよぉぉぉ!!!! こうなったら絶対目に物見せてやるわ!!」
これはもう意地だな。
ナマコ神様は一瞬驚いたような顔(顔どこか知らないけど)をした後ぶにぶにと飛び跳ね始めた。
「あははははは! あーやっぱり君は私が見込んだ通りの男だ! 最高だよ! じゃあ、早速だけど君の意識をあっちに飛ばすよ? 事態は一刻を争うらしいからね」
「今回ばかりはありがとな、ナマコ神様。ちょっと奇跡起こしに行ってくるわ!」
そこで俺の意識はまた一瞬飛び、俺の肉体で目を覚ます事になった。
「おぉ!! 息してる! おーいギルマス! 兄ちゃんの呼吸が戻ったぞ!!」
どこか遠くでメツセイの声が聴こえている気がする......あれ、俺どうしたんだっけ? 体が動かない......
少し視点をずらしてみると、そこは前遭難しかけた(なんならしてた)時と同じ真っ白の何も無い空間で、後ろを見てみるとそこには――――
俺に絞め技をかけているナマコ神様がいた。
「あの......ナマコ神様? 何してるんですか?」
「何って......美脚チョークスリーパーだよ?」
「なんの技か聞いた訳じゃねぇんだよォォォ!! なんでそんな事してたのかって聞いてんの!! あと美脚とかいう情報いらん!」
そこまで強く絞められてはいなかったようで、すぐに振りほどき飛び退く事に成功した。
今後この空間に来た時はしっかりと意識のある状態で来るよう心掛けよう......
「君さぁ......ああいう無謀な賭けは今後一切やめてくれよ? あんな”勝算あります“みたいな感じだったのに根性て! 死んでもおかしくなかったね。てかなんで生きてんの?」
「そうだよ!! 俺どれくらい意識飛んでた!? みんなは? 魔獣の群れは!?」
俺はナマコの脇部分を掴んで捲し立てるように問い詰める。コイツが何か出来る訳じゃないのに。
こんな所でナマコ神様に構ってる場合じゃない! 早く意識を戻さなければ。
「落ち着きなさいな......君が寝ていても私は起きていた......見るかい? 君が死にかけている間何があったのか......それを見てからでも、遅くはないだろう?」
ナマコ神様はそう言うと俺が遭難して死にかけてた時と同じように画面のような物を俺の目の前に映しだした。
そこには、俺が意識を失ってからが映っていた――――
◇◇◇◇
映像は、俺とホノラが狼の背に乗っている所から始まった。
狼は20メートルはある城壁を一跳びして上にいるギルドマスター達の所へ着地した。
「ギルドマスター! 大変なの!! マツルが......! マツルが!!」
狼がぐったりとした俺を優しく寝かせたり、ホノラの泣き顔を見た事でギルドマスターはすぐさま状況の深刻さに気が付いたようだ。
「ッ!!!! これは......待機していた回復魔道士は総員彼の治癒に当たるように!! 急げ!! あとホノラ君にはなにか着るものを!」
「着替え覗いたら魔獣より先にぶち殺すわよ......」
俺の身体は速攻で医務テントまで運ばれて行ってしまった。
しかし、視点はギルドマスター達の俯瞰で固定されているようで、便利な事この上ない。
「マツル君に何があった? さっきのバカデカい雷の魔法となにか関係が?」
着替えを終えたホノラはギルドマスターと心配で上に上がってきたメツセイに状況を説明していた。
そこに控えている狼と戦闘になった事。俺が雷撃を根性で耐えて狼を仲間にしたはいいものの呼吸が止まり、いきなり倒れ今に至る事。
ここまで聞いてギルドマスターとメツセイは唖然とした顔をしていた。
「マツル君、あの大魔法を辛うじてとは言え耐えたの? はは......相変わらず滅茶苦茶だなぁ......」
「うむ......我も詠唱までして威力の底上げを図った我の最強魔法を人間の小僧に耐えられるとは思わなかった......我もお陰で魔力切れだ」
「――――だが、兄ちゃんの呼吸がないのは楽観視していい状況じゃぁねぇなぁ......事態は一刻を争う」
「ハッ......ちょっと良いかギルドマスターよ......」
そこで急に会話に割り込んできたのはパンナだった。ホントコイツ話に割り込んで来るの大好きだな。
「パンナ、どうした?」
「ハッ......俺......こんな魔法を長時間使い続けるの初めてで......魔力が切れそうなんだぜ......」
パンナをよーく見てみると、足はガクガクしてるし、冷や汗を滝のように流しながらさっきのホノラより泣いていた。
すると徐々に徐々に地平線の向こうからうっすらと見えていたパンナの溶岩壁が小さくなっていくのがわかった。
「ありがとう、パンナ......さて、急遽この作戦は第二段階へと移行する! この段階での目標は、マツル君が意識を取り戻すまで粘る事! それだけだ!」
え......俺?
「――――マツル君は異世界から来た人間だ......それが関係しているかは分からない。けど! 彼ならなんとかしてくれる......そんな気がするんだ。だってこの僕に勝ったんだぜ? いや、僕負けてないけどね?」
おいおいギルドマスターがなんか変な事言い出したぞ!? みんな「ちょっと責任乗せすぎじゃない?」って反論してくれ!
「確かに! ギルドマスターの言う通りかもしれん! 兄ちゃん、閃狼の大魔法の直撃を受けても意識と呼吸が無いだけで済んでるんだぜ? 兄ちゃんはすげぇ奴だ! 俺が保証する!! ガッハッハ!!!!」
いやメツセイさん!?!? 呼吸が無いって相当ですよ!? あとすぐ横に無傷だった人がいますよ!?
「そうよ!! 私の拳をあんなに耐えたのは! みんなが気味悪がって近付いて来なかった私と対等に接してくれたのはマツルが初めてなの!! アイツならきっと、また私と暴れてくれるって信じてる!」
ホノラ? 俺がなんとかしそうって話と関係ないねそれ? 変に持ち上げるの止めてくれない?
ギルドマスター、メツセイ、ホノラの言葉を聞いた周りの人達からも「その通りだ」と言う声がちらほら上がり始めた。
「「マッツッル!! マッツッル!!」」
そしてついにはマツルコールが始まってしまった......
ヤバい......みんなして俺に何を求めてるんだよ!? てか殆どの冒険者と俺絡みなかっただろ? なんでそんな元気よく俺の名前を叫べるんだよ!
「じゃあみんな!! 覚悟は決まったか!!!!」
「「「応!!!!」」」
「俺達全員で、マツル君が目を覚ますまでの時間稼ぎを全力でやる!」
「――ガッハッハ!! まずは俺が先陣を切ろう!【岩石魔法“巨岩大牢壁”】!!!!」
メツセイが杖を打ち付けると、魔獣の群れを丸々囲む巨大な岩壁が生成された。
「さぁ! これで周りへの被害を気にせずにぶっぱなせるぞ!! てめぇら始めろォ!」
メツセイの合図と共に、先程より強大な魔法が飛び交いだした。
ここで映像は止まった。
◇◇◇◇
「――――どうだった? 面白かっただろう?」
「まじかよ......責任で胃が......」
なんだよあの「マツル君なら、何とかしてくれそうな気がするんです」って!! おかしいだろ! なんだよあのマツルコール!? 宗教!?
でも......ホノラの言葉はちょっとだけ嬉しかった。なんか普段は聞けない本音が聞けた気がして。
「正直私はあんな責任の中に君を放り込むのは忍びなくてね......だから君があれを見て判断して欲しいと思ったんだ」
ナマコ神様は、「もし責任が重いと感じるなら、私も知らないどこかにこのまま転生させても良い」と続けてくれた。
なるほどそれでわざわざ記録を取っておいて見せてくれたのか。
ぶっちゃけ、俺はあんな風に言われるほど立派な人間じゃない。アイツらよりずっと弱いし......でも――
「俺......やるよ。強くなりたいとか、ここで死んだら元の世界へ帰れないかもしれないとか、そういうのもあるけど......」
「けど?」
「俺がいない所で好き勝手言われてるのがムカつくからだよぉぉぉ!!!! こうなったら絶対目に物見せてやるわ!!」
これはもう意地だな。
ナマコ神様は一瞬驚いたような顔(顔どこか知らないけど)をした後ぶにぶにと飛び跳ね始めた。
「あははははは! あーやっぱり君は私が見込んだ通りの男だ! 最高だよ! じゃあ、早速だけど君の意識をあっちに飛ばすよ? 事態は一刻を争うらしいからね」
「今回ばかりはありがとな、ナマコ神様。ちょっと奇跡起こしに行ってくるわ!」
そこで俺の意識はまた一瞬飛び、俺の肉体で目を覚ます事になった。