ユキノの休憩と、皆の食事が済んだら行動を開始する。

洞窟を抜け、ユキノの案内の元、森を進んでいく。

そして、一時間ほどで目的地に着いた。

そこは木が1本も生えておらず、真ん中に不自然に大きな洞窟があった。

「なるほど、怪しさしかないな」

「でしょー?」

「それに、ヒリヒリしますぜ」

「わかりますわ……アルスとの決戦を思い出します」

「わたしもですぅ……猛獣がいるみたいです」

「コンッ!」

「俺を含めて、全員が同じ気持ちか」

皆、激戦をくぐり抜けた猛者達だ。
そうなると、確実に出てくるだろう。

「どうしますー?」

「敵の種類はわからないし、出たとこ勝負になりそうだ。なので、作戦はあえて立てない。とりあえず、臨機応変に対処する。前衛はアイザックにユキノ、中衛に俺とフーコ、後衛にエミリアとニールくらいか」

「まあ、それしかないっすね」

「それじゃ、行きますかー!」

このメンバーなら、作戦らしい作戦などいらない。
俺たちは木の陰から飛び出して洞窟の前に立つ。
すると、辺り一面を結界が覆う。
そして、眩い光を放った……目を開けると、そこはだだっ広い闘技場になっていた。
おそらく、東京ドームくらいは軽くある。

「異次元空間か!」

「ダンジョン前なのに豪勢ですねー」

「アルス、魔力を感じますわ! 中央に何かきます!」

次の瞬間、中央付近に魔法陣が浮かび上がり……そこから、四メートルくらいのゴーレムが現れる。
足も腕も太く、黒く大きな身体。
その両目はギラリと光り、機械的な動きを見せる。

「ゴァァァァ!」

「ちっ! よりによってゴーレムかよ!」

「兄貴! 何かまずいので!?」

「こいつらは、とにかく硬くて強い! 魔法防御、物理防御共に優れている! そして攻撃力は見ての通りだ! 魔物の一種で、一国の軍隊を壊滅させたこともある!」

さらに厄介なことに、この制限された場所だ。
見晴らしが良ければ、まだやりようはある。
遠距離からの砲弾や魔法を使って削っていけばいい。
しかし、今回は結界に閉じ込められるのでそうはいかない。

「アルス! 周りにも魔物達が!」

「だァァァ! くそったれな罠だな! これでレアじゃなかったら怒るぞ!」

ゴーレムの周りに、ゴブリンやオーク、コボルト達が現れる。
不幸中の幸いなのは、全員が下級ってところか。

「ふぁ〜!? どうしよう!?」

「ご主人様ー! 多分、雑魚は幾らでも現れる仕様かもです!」

「ああ、そうだろうな。だが、まずは数を減らさんことにはどうにもならん。フーコ! 俺のそばに来い!」

「コンッ!」

すぐに反応し、俺の前にやってくる。
その目にはやる気があり、少しも臆してない。

「はっ! いい目だっ! いいか? 風を俺の炎に合わせろ。そして、思いっきり魔力を込めろ」

「コンッ!」

「うし! すぅ……愚かなる者共、我が炎の波に焼かれよ——フレイムウェイブ」

「コーン!」

俺の炎の波を追って、風のブレスが追いかける。
そして、途中で合わさり……炎の竜巻と化す!
名付けて、フレイムストームだ。
それが、ゴーレムを中心として暴れる。

「……よし、あらかた片付いたか」

「コンッ!」

「ああ、よくやったな」

そこにはゴーレムを除いた魔物が消え去っていた。
相手が動き出す前に放ったので、一網打尽できたってわけだ。

「ふぅー! すごいですね! ただ、すぐに出てきますよ?」

「ああ、わかってる。だが、いっぺんに出てこれるわけではないだろう。ニール! 魔物が出現次第撃ち抜け! フーコはニールの護衛で雑魚を近寄らせるな!」

「は、はい〜!!」

「コンッ!」

「アイザックとユキノはゴーレムを牽制!」

「へいっ!」

「はーい!」

二人が走り出してゴーレムに迫り、攻撃を仕掛ける。
すると、ゴーレムが拳を振り下ろして反撃をしてきた。
その様子を、俺はじっくり観察する。

「ちょっと? 私は何をするのです?」

「少し待ってろ、あいつのパターンを見てる。お前も一緒にみてくれ。どうやら、近づいてくる相手を優先して攻撃するタイプか?」

「そうですわね、私達がこうして隙を晒してるのに来ませんし。そして、アイザックさんの攻撃を嫌がってる感じですわ。ユキノさんの爪は、ほとんど無視されてるかと」

「つまり、ユキノの攻撃力ではダメージが与えられない。アイザックのは与えられるってことか。そして魔法は、さっきの通り大して効かないと。お前の水魔法はどうだ?」

「ゴーレムの属性は土ですわ。味方として合わせる分には相性いいですが、敵となるとよくはないですの」

俺の刀なら切れるか? 自信はあるが、切れる保証もないか。
いや、それでも一撃では倒せない。
見たところ、アイザックがつけた傷がなくなってる。
多少だが、自動再生機能もあるってわけだ。

「全く、厄介な相手だ」

「当たり前ですわ、本来なら軍隊で戦うような相手ですもの。硬い強い、ゴーレムなので体力も無尽蔵……どうするんですの?」

「そうだなぁ……ん? ああ、あいつに御誂え向きな技があったな」

「えっ? な、なんですの?」

俺は簡単にエミリアに作戦を伝える。

「……そんなことで?」

「ああ、あいつ相手ならいけるはずだ」

「わかりましたわ、あなたの提案に乗りますの」

「んじゃ、いっちょやるとするか」

「ふふ、共闘だなんて考えられなかったですわ」

「そいつは言えてるな」

俺達は顔を見合わせ、同時に微笑む。
そして俺は、不思議な高揚感を感じていた。
こうして、幼馴染と共闘できることに。

「アイザック! ユキノ! 今から特大の炎を放つ!」

「おおっ! 了解っす!」

「もー! ようやくですかー!」

「タイミングを見て避けろよー!」

二人が頷くを確認して、俺も準備に入る。
流石に大技を繰り出すのは、大量の魔力と詠唱が必要になる。
ありったけの魔力を……あいつを燃やし尽くすほどの熱を。

「へ、平気ですの? 恐ろしいほどの魔力が集まってますわ……制御できますの?」

「も、問題ない……これしきを制御できなくては魔王の名が廃るってな」

「ふふ、それくらい言えるなら平気そうですわね。では、私も準備に入ります」

「ああ、俺が放ったらすぐに撃ってくれ」

……こうして、溜める時間があるのは幸せなことだ。
これまでは、ユキノと二人だったからそうはいかなかった。
だが、今はこうして仲間がたくさんいる……悪くない気分だ。

「よし! 二人とも!」

「「はっ!」」

すぐに察し、ゴーレムに一撃を加えて引き下がる。
周りの雑魚どもは、予定通りにニールとフーコが片している。
もはや、俺と奴の間には障害物はない。

「地獄の業火よ、我が敵を滅せ——ヘルフレイム!」

「ゴァァァァ!?」

俺の放つた火の玉がゴーレムに着弾し、爆発的に燃え上がる!
敵が燃えるまで消えないとされる技だが……やはり耐えるか。
ぷすぷすと煙を上げながらも、その傷が再生しようとする。

「ゴガ……ガ……ガ」

「エミリア!」

「わかってますわ! 私だって慣れてませんの! ふぅ……氷の槍よ、相手を打ち貫け——フリーズランサー!」

高速で発射された氷の槍がゴーレムに当たり……砕け散った。

「ちょ!? 私の魔法の方が砕けましたわよ!?」

「だァァァ!? 身体を揺らすなって! ほら! よく見てろ!」

「なにを……へっ?」

ピシピシとひび割れた音が響き渡り……ゴーレムが砕け散った。

「な、何が起きたんですの?」

「簡単な話さ。熱したモノを冷やすと、壊れやすくなる」

「ど、何処でそんな知識を?」

「さあ、何処だろうな。まあ、別にいいだろ」

そして、結界が溶けて元に戻る。

そこには、ゴーレムの残骸だけが残っていた。

前世の記憶か……そのうち、こいつらにも話しておくべきかもしれん。