……むっ、どうやらそのまま寝落ちしてしまったか。
起き上がると、毛布がかけられていた。
フーコも一緒にいて、フスフスと寝息をたてている。
そして、すぐ側にエミリアが座っていた。
「あら、起きましたの」
「エミリアか。お前が毛布をかけてくれたのか?」
「ええ、そうですわ」
「そうか、すまんな」
「い、いえ……寝顔を見れたからいいですの」
「あん? なんだって?」
「なんでもありませんわ! それより、水を出すのでシャキッとしてくださいの」
その後、エミリアに水を出してもらい顔を洗う。
フーコも起きたので、身体ごと桶に入ってバシャバシャ遊んでいる。
俺はそれを眺めつつ、アイザックが作った野菜と肉のスープを飲む。
肉の旨味、野菜の甘み、それらが合わさって脳が活性化する。
「……あぁ、体の芯からあったまるな」
「へへっ、セルバの肉がついた骨を煮込んだので。朝なんで、味付けは塩のみにしましたぜ。少し物足りないかもしれないですが」
「いや、これでいい。パンにつけても美味いしな」
「それと、こいつの残りをどうしようかと思いまして。かなりの大物ですから、まだまだ量があります。ここに何日いるかわかりませんし、食料はあったほうがいいっす。ただ、寒いとはいえ日持ちが心配ですな」
「ふむ、燻製にするにしても時間がかかるか」
何より、こいつは珍しい食材だ。
できれば、都市のみんなにも食べさせたいところだ。
……ん? そういや、エミリアは隠し要素でアレが使えたはず。
「おい、エミリア」
「なんですの?」
「お前、《《氷魔法は使えるか?》》」
「はい? ……使えないですわ。もし使えるなら、貴方との戦いで使ってますし」
「そりゃ、そうだ」
「そもそも、氷魔法は伝説の魔法と言われてますわ。過去には水魔法の使い手が使えるような記述はありましたけど……そのやり方が書かれた書物は無くなってましたし」
「それはそうだ、なにせ……《《俺が書物を盗み出したからな》》」
実はエミリアには覚醒ルートというのが存在する。
それが古代の書物を読んで、氷魔法を覚えること。
それをもってして、本当の意味で最強の魔法使いとなるキャラだ。
しかし、当然……うまく負けようとしていた俺にとっては邪魔である。
なので前もって書物は隠しておいたっわけだ。
「……はい!? どういうことですの!?」
「だァァァ! 肩を掴んで揺らすなって!」
「いいから答えなさい!」
「あばばばば!?」
揺らされたら答えるもんも答えられんって!
そもそも、目の前で違うモノが揺れて困るんだって!
ただでさえ、こっちは色々と我慢して大変だってのに!
「クァ〜……コンッ!」
「ほら、フーコが起きちまったよ」
「ご、ごめんなさいですの……じゃなくて、貴方が悪いですわ」
「とりあえず、話を聞けって」
「……わかりましたわ」
寝起きのフーコを膝に乗せ、エミリアから距離をとる。
さっきから良い香りがして色々とまずい。
「別に大した話ではない、お前に氷魔法を覚えられると面倒だったからな。ただでさえ、お前の魔法は驚異に値する。この上、氷魔法を覚えたら俺も厳しかったし」
「ほ、褒められましたの……」
「はい? そこなのか?」
「だ、だって、貴方ってば全然褒めてくれなくて……いつも軽々私の魔法を打ち消してましたわ。フハハッ、我にそんなものはきかんとか」
……やめてぇぇ! 黒歴史を掘り返すのは!
あの時は、そういう口調で自分を保ってただけなんだって!
「いや、そんな余裕は無かったし。というか、敵対してるのに褒めるとか無理だろ」
「ふふ、わかってますわ。それで、私が氷魔法を覚えると負けると思ったのかしら?」
「負けるとは思わないが、バランスが崩れた可能性はあるな……話を戻すぞ。とにかく、今の俺たちは敵対していない。なら、教えて問題ないと思った」
「そ、それは……今だけですわ、この先はわかりませんの」
「ああ、それでも良い。お前が俺が間違ってると思ったなら止めるが良い」
ストーリーが本当にクリアされたのかわからない以上、この先に俺の身に何かしらが起こる可能性もゼロではない。
その時に、止めてくれる相手側いたなら助かる。
俺とて世界を滅ぼしたい訳ではないし。
「ええ、私の命に代えても止めてみせますわ」
「まあ、そんなことは起きないに越したことはない。さて、氷魔法を教えよう。俺の頭の中にやり方は入ってる」
「ふふ、それはそうですわね。では、やり方を教えてもらいますの」
「じゃあ、まずはコップに水を入れてくれ」
俺が持っているコップに、エミリアの魔法で水を注いでもらう。
「まず水や氷は、水分子と呼ばれるとても小さな粒が集まって出来ている。コップに入れた水は、たくさんの水分子がぐちゃぐちゃになって詰め込まれている状態だと思ってくれ」
「水一つ一つが小さい粒……なるほど」
「温度が0℃より高いときは、コップの中の水分子は自由に動き回ることができる。なので、コップを斜めにすると水は流れ出してしまう」
「当然ですわ」
「しかし、温度が下がってくると水分子はだんだん動かなくなる性質がある。やがて0℃になると、もう動き回ることができなくなってしまう。こうなると水はかたまりの氷に変わってしまい、コップから流れ出すこともできない……わかるか?」
その本に書いてあったのは、そんな説明文だった。
俺は科学に疎いし、これで本当にわかるのか疑問だった。
元がゲームなので、仕方ない部分はあるが。
「つまり、冷えてくると水分子が動けなくなる……水全体ではなく、一つ一つの粒を凍らすイメージ……」
「どうだ? いけそうか?」
「やってみますわ。すぅ……出でよ、氷の玉——アイスボール」
すると、その手から小さな氷の玉が発射される!
「おおっ! できたかっ!」
「で、できましたわ!」
「やっぱり、お前は天才だな!」
「あ、当たり前ですわ! 私はエミリア-ミストル! 貴方のライバルですもの!」
「ははっ! そうだったな! おまえが来てくれて良かった!」
「コンッ!」
俺はフーコを抱っこしてぐるぐる回る。
よし! これで冷凍保存ができる!
ここは寒いとはいえ、それは瘴気が原因の一つだ。
故に雪が降るわけでもない。
なので、エミリアの魔法があれば食材の保存が可能になる。
くくく、俺のスローライフのために役に立ってもらおうか。
起き上がると、毛布がかけられていた。
フーコも一緒にいて、フスフスと寝息をたてている。
そして、すぐ側にエミリアが座っていた。
「あら、起きましたの」
「エミリアか。お前が毛布をかけてくれたのか?」
「ええ、そうですわ」
「そうか、すまんな」
「い、いえ……寝顔を見れたからいいですの」
「あん? なんだって?」
「なんでもありませんわ! それより、水を出すのでシャキッとしてくださいの」
その後、エミリアに水を出してもらい顔を洗う。
フーコも起きたので、身体ごと桶に入ってバシャバシャ遊んでいる。
俺はそれを眺めつつ、アイザックが作った野菜と肉のスープを飲む。
肉の旨味、野菜の甘み、それらが合わさって脳が活性化する。
「……あぁ、体の芯からあったまるな」
「へへっ、セルバの肉がついた骨を煮込んだので。朝なんで、味付けは塩のみにしましたぜ。少し物足りないかもしれないですが」
「いや、これでいい。パンにつけても美味いしな」
「それと、こいつの残りをどうしようかと思いまして。かなりの大物ですから、まだまだ量があります。ここに何日いるかわかりませんし、食料はあったほうがいいっす。ただ、寒いとはいえ日持ちが心配ですな」
「ふむ、燻製にするにしても時間がかかるか」
何より、こいつは珍しい食材だ。
できれば、都市のみんなにも食べさせたいところだ。
……ん? そういや、エミリアは隠し要素でアレが使えたはず。
「おい、エミリア」
「なんですの?」
「お前、《《氷魔法は使えるか?》》」
「はい? ……使えないですわ。もし使えるなら、貴方との戦いで使ってますし」
「そりゃ、そうだ」
「そもそも、氷魔法は伝説の魔法と言われてますわ。過去には水魔法の使い手が使えるような記述はありましたけど……そのやり方が書かれた書物は無くなってましたし」
「それはそうだ、なにせ……《《俺が書物を盗み出したからな》》」
実はエミリアには覚醒ルートというのが存在する。
それが古代の書物を読んで、氷魔法を覚えること。
それをもってして、本当の意味で最強の魔法使いとなるキャラだ。
しかし、当然……うまく負けようとしていた俺にとっては邪魔である。
なので前もって書物は隠しておいたっわけだ。
「……はい!? どういうことですの!?」
「だァァァ! 肩を掴んで揺らすなって!」
「いいから答えなさい!」
「あばばばば!?」
揺らされたら答えるもんも答えられんって!
そもそも、目の前で違うモノが揺れて困るんだって!
ただでさえ、こっちは色々と我慢して大変だってのに!
「クァ〜……コンッ!」
「ほら、フーコが起きちまったよ」
「ご、ごめんなさいですの……じゃなくて、貴方が悪いですわ」
「とりあえず、話を聞けって」
「……わかりましたわ」
寝起きのフーコを膝に乗せ、エミリアから距離をとる。
さっきから良い香りがして色々とまずい。
「別に大した話ではない、お前に氷魔法を覚えられると面倒だったからな。ただでさえ、お前の魔法は驚異に値する。この上、氷魔法を覚えたら俺も厳しかったし」
「ほ、褒められましたの……」
「はい? そこなのか?」
「だ、だって、貴方ってば全然褒めてくれなくて……いつも軽々私の魔法を打ち消してましたわ。フハハッ、我にそんなものはきかんとか」
……やめてぇぇ! 黒歴史を掘り返すのは!
あの時は、そういう口調で自分を保ってただけなんだって!
「いや、そんな余裕は無かったし。というか、敵対してるのに褒めるとか無理だろ」
「ふふ、わかってますわ。それで、私が氷魔法を覚えると負けると思ったのかしら?」
「負けるとは思わないが、バランスが崩れた可能性はあるな……話を戻すぞ。とにかく、今の俺たちは敵対していない。なら、教えて問題ないと思った」
「そ、それは……今だけですわ、この先はわかりませんの」
「ああ、それでも良い。お前が俺が間違ってると思ったなら止めるが良い」
ストーリーが本当にクリアされたのかわからない以上、この先に俺の身に何かしらが起こる可能性もゼロではない。
その時に、止めてくれる相手側いたなら助かる。
俺とて世界を滅ぼしたい訳ではないし。
「ええ、私の命に代えても止めてみせますわ」
「まあ、そんなことは起きないに越したことはない。さて、氷魔法を教えよう。俺の頭の中にやり方は入ってる」
「ふふ、それはそうですわね。では、やり方を教えてもらいますの」
「じゃあ、まずはコップに水を入れてくれ」
俺が持っているコップに、エミリアの魔法で水を注いでもらう。
「まず水や氷は、水分子と呼ばれるとても小さな粒が集まって出来ている。コップに入れた水は、たくさんの水分子がぐちゃぐちゃになって詰め込まれている状態だと思ってくれ」
「水一つ一つが小さい粒……なるほど」
「温度が0℃より高いときは、コップの中の水分子は自由に動き回ることができる。なので、コップを斜めにすると水は流れ出してしまう」
「当然ですわ」
「しかし、温度が下がってくると水分子はだんだん動かなくなる性質がある。やがて0℃になると、もう動き回ることができなくなってしまう。こうなると水はかたまりの氷に変わってしまい、コップから流れ出すこともできない……わかるか?」
その本に書いてあったのは、そんな説明文だった。
俺は科学に疎いし、これで本当にわかるのか疑問だった。
元がゲームなので、仕方ない部分はあるが。
「つまり、冷えてくると水分子が動けなくなる……水全体ではなく、一つ一つの粒を凍らすイメージ……」
「どうだ? いけそうか?」
「やってみますわ。すぅ……出でよ、氷の玉——アイスボール」
すると、その手から小さな氷の玉が発射される!
「おおっ! できたかっ!」
「で、できましたわ!」
「やっぱり、お前は天才だな!」
「あ、当たり前ですわ! 私はエミリア-ミストル! 貴方のライバルですもの!」
「ははっ! そうだったな! おまえが来てくれて良かった!」
「コンッ!」
俺はフーコを抱っこしてぐるぐる回る。
よし! これで冷凍保存ができる!
ここは寒いとはいえ、それは瘴気が原因の一つだ。
故に雪が降るわけでもない。
なので、エミリアの魔法があれば食材の保存が可能になる。
くくく、俺のスローライフのために役に立ってもらおうか。