とりあえず、これでメンバーは決まった。

俺、ユキノ、フーコ、エミリア、ニール、アイザック、カリオン率いる獣人達。

あとは万全の準備を整えて、森へと行く。

今回は、ダンジョンが見つかるまで帰らないつもりだ。

「さて、再び森に来たわけだが……カリオン、前の洞窟の位置はわかるか?」

「はっ! 我らが覚えております!」

「感謝する。それでは、後ろから指示を出してくれ。アイザック、前衛を頼む。あとは、前と一緒でいくぞ。俺とユキノ、エミリアとニールが続く」

「へいっ!」

すると、フーコが俺の足元をチョロチョロして見上げる。

「コン?」

「ん? お前は俺の側にいなさい」

「コンッ!」

「「いいなぁ」」

「……えへへ」

「……ほほほ」

なぜが、エミリアとユキノが同じことを言った。
そして、お互いに気まずそうな顔をしている。
嫌な予感がするので、それを無視して探索を始めるのだった。





幸いなことに、前に探索したのが効いたのか……魔物の数が少ない。

小物だが、生きている魔獣もちらほら見かける。

つまり、生き物が帰ってきたということだ。

「これなら、以前より早く行けそうだ」

「そうっすね。木を伐採してる連中も、最近はやりやすいって言ってましたぜ」

「それは効率も上がるしいいことだ。そうなると、いよいよ建物とかを建てていくか」

「ここで寝泊まりとかする奴もいるんで、あったら助かりやす」

「帰ったら、ドワーフ族に相談してみるか」

そんな会話ができるくらいには余裕がある。
フーコは楽しいのか物珍しいのか、辺りをキョロキョロしている。

「おい、あんまり離れるんじゃないぞ?」

「コンッ!」

「まるで散歩気分だな」

「今はいいんじゃないですか? ずっと気を張っていても仕方ないですし」

「まあ、それもそうか……こういう時は、お前の呑気さが助かるな」

フーコがいるということで、いつも以上に気を張ってきたらしい。
リーダーの俺がそんなでは、周りの奴らも気を使うだろう。
何より、くると決めたのはフーコだ……あんまり過保護なのは失礼かもしれない。

「えへへー、惚れ直しちゃいました?」

「その前提だと、俺がお前に惚れてることになるが?」

「ちょっと!? そうなのですか!?」

「だァァァ! エミリア! どうして腕を組むっ!?」

「どうしてって言われましても……こうすれば寒くないですわ」

「ずるいですっ!」

「お前もか! ブルータス!」

右腕にはユキノ、左腕にはエミリアが抱きついている。
当然、柔らかなモノが当たるわけで……火属性魔法も使ってないのに暑くなってくる。
ちなみにブルータスのネタがわかる奴は昭和生まれの可能性大……知らんけど。

「というか、それを着てれば寒くないだろうに」

「確かに、頂いた熊の毛皮コートはあったかいですわ。ですが、それとこれとは話が別ですの」

「むむむっ……エミリアが積極的になってきましたね。これは戦争の予感がします」

「なんの戦争だよ」

「コンッ!」

「はいはい、お前も足にくっつくんじゃないよ」

幾ら何でも気を抜きすぎてはないだろうか。
……まあ、それくらいの方がいいか。
今回は、長丁場になりそうだからな。




結果的に、気を抜いていて良かった。

その後も大した敵に会うこともなく、どんどんと進んでいく。

そして、明るいうちに以前来た洞窟に到着するのだった。

ただ初めての場所で疲れたのか、フーコは寝てしまった。

「兄貴、こっからどうしやす?」

「ここを拠点として探索をしよう。穴の中は寒さを凌げるし、防御面でも使える」

「何か来たら、私かアルスの魔法で一網打尽ですものね」

「そういうことだ。もちろん、交代で外には見張りについてもらう」

話し合いを済ませたら、前にボスがいた場所に行き、簡易拠点を構える。
テントに焚き火、わらで敷いた敷物、これだけでも十分だ。
魔石を採掘した奥には隙間もあるので、火をつけていても安心だ。

「さて、飯を用意しに行くか」

「兄貴が行かなくても、俺らが行きますぜ?」

「ええ、我らにお任せを」

「いつもアイザックとカリオンにやらせちゃ悪いからな。たまには、俺も動かんと」

すると、ニヤニヤしたユキノが近づいてくる。
こういう顔は、俺をからかう時だ。

「でもでも、ご主人様は森の中では役立たずですよ? 」

「おい? 俺は剣も使えるっての」

「戦いじゃなくて狩りなんですってば。平原で襲ってくる魔獣を狩るとは違うんですって。それにご主人様の剣は、基本的には待ちの剣でしょ? ご主人様に任せてたら、夜になっちゃいますよー」

得意げに言う姿は、まるで俺が狩りを知らないような言い方だ。
最近、ご主人様としての威厳がない気がする。
ここらで、教えてやるとするか。

「ぐぬぬっ……いや、そこまで言われちゃ引き下がれんな。ユキノ、お前には一度しっかりと教えてやられはなるまい——この元ボーイスカウトの俺の実力を」

「……ボーイスカウト? なんですか?」

「とにかく! 俺も狩りに出る。ここなら守る分には楽だし、カリオンやエミリアがいればいいだろう。俺とユキノ、どっちが獲物を早く獲ってくるか勝負と行こうじゃないか」

「……えへへ、いいですねー。泣いて後悔しても遅いですからね?」

「男に二言はない」

そして公平を期すため俺とニール、アイザックとユキノという組み合わせになった。

日が暮れる前という期限を決め、俺たちは洞窟から出ていく。