俺が敵を倒し終わると同時に、アイザック達がやってくる。

ユキノをその場に寝かせ、経緯を説明する。

「兄貴っ! さすがっす!」

「やりますわね、流石は私のライバルですわ」

「うぅー……あんなの怖いですぅ!」

「まあ、あんなのが何体もいたら困るわな。とりあえず、日も暮れてきたしここで一度休憩をしよう。ユキノも休ませたいので、テントも張って野営の準備も頼む」

全員が頷き、それぞれ行動を開始する。
アイザックが調理、エミリアがユキノに、ニールがテント設置、カリオン達が警戒にあたる。
俺はユキノの様子を確認したあと、ハリグマの元に向かう。

「アイザック、どうだ?」

「へい、針はともかく中身は食えそうですぜ。ただ、兄貴が焼いた箇所は取り除かないとですが」

「すまんな、手加減が難しかった」

「へへっ、それだけ姉御のことが大事ってことっすよね。不謹慎だけど、久々に兄貴の本気モードを見れて嬉しかったっす」

「……別にそんなんではない。俺はあいつが気に食わなかっただけだ」

「そういうことにしときますぜ」

「いいからささっと飯にするぞ」

……確かに我を忘れて怒ったのは久しぶりだったな。
あの時、ユキノを見つけた時もそうだった。
本当は襲われているところを助けるゲームの設定だった。
だが、我慢できなかった……実は自分の推しキャラだったとは言えまい。

「あっ、兄貴! こいつの針、抜くのは簡単ですぜ! しかも……こいつは鉄で出来てる可能性がありやす」

「なに!? 鉄か……道理であの威力な訳だ。お前の自慢の斧にも傷がついてしまった。改めて助かった、よくやってくれたな」

「い、いえ! これくらい、兄貴にしてもらったことに比べりゃ……兄貴、これを武器には加工できますかね?」

「いけるかもしれん。俺の熱で溶かせば毒も消えるし、その後に再度加工してもらえば……よし、二人で協力して抜いていくぞ」

「へいっ!」

3メートルの巨体に刺さっている針を次々と抜いていく。
その量は多く、これなら良い素材になりそうだ。

「これで不足していた武器が作れるな」

「そうっすね。ちょうど戦えそうな奴を見繕っていたところだったんで助かりやした。肝心の武器がないんじゃどうしようないんで」

「ふむ、その辺りはドワーフ族に任せるとしよう。さて、火を残しておくから調理は任せていいか?」

「へいっ、こいつを使って美味いもんを作りますぜ」

「そいつは楽しみだ。では、あとは任せる」

その場をアイザックに任せ、ニールの元に向かう。
そこでは小さい体でテント設置に悪戦苦闘しているニールがいた。
今も地面に釘を刺そうとして尻餅をついている。

「うぎゃぁ!?」

「クク、うぎゃぁっていう奴初めて見たぞ」

「うぅー仕方ないじゃないですかぁ。私、こういうの苦手ですし」

「おいおい、あんなに器用に弓を当てるのにか?」

会話をしつつ、俺も設営を手伝う。
前世ではボーイスカウトもやっていたので、この手のものには慣れている。

「弓とは別ですよぉ〜、私、弓以外の才能をお母さんのお腹の中に忘れてきちゃったって言われてます」

「ははっ! そいつは言い得て妙だな!」

「笑わないでくださいよぉ〜!」

「すまんすまん。しかし、それだけの才能があるのだからいいではないか。敵として戦った時、俺がどれだけ苦労したか」

「そうなんです? なんか、余裕で躱してましたけど……あと燃やしたり。私の矢は安くなかったのにぃ」

「いや、そう見せていただけだ。そして、それについてはすまん……まあ、実際はきつかったさ」

本当にこいつには手を焼いた。
喚き散らしながらも、的確に急所を狙ってきた。
俺の炎の防御は、こいつのために使っていた部分が大きい。
何よりいつ何処から狙われるかわからないのは、精神的に疲れるものだ。

「えへへ、それなら頑張った甲斐がありました」

「いや、こっちは殺されそうになったんだが?」

「それは仕方ないですよぉ〜魔王……アルス様が悪者だったんですから」

「それを言われるとぐうの音もでないな。ちなみに、好きに呼んでいいからな? ここでは誰も聞いちゃいない」

「えっと……確かにアルス様って感じじゃないですし……魔王様にします!」

「……いや、お前がいいんならいいんだ。ではニール、しばらくの間頼むぞ」

「はいっ、魔王様! あとは自分で出来ます!」

……これは仲良くなったと言っていいのか?
一応、連携の意味もあってコミニケーションを取ろうとしたが。
釈然としないまま、今度は木の下にいるエミリアの元に向かう。

「エミリア、ユキノはどうだ?」

「この通り、ぐっすり眠ってますわ」

「すぅ……むにゃ……」

「ふっ、それもそうだな。隣に座っても良いか?」

「え、ええ、構いませんわ」

隣の芝に座り、そのまま寝転がる。
気持ちのいい風と、空気が澄んでいて清々しい。

「ちょっと? レディーの横で寝転がるなんて……」

「まあ、そう言うなよ。ちょっと魔力を使いすぎた」

「確かにそうですが……いえ、貴方にいっても仕方のないことですわ」

「そういうことだ……こうしてると平和そのものなんだが」

「こんな状態で何をと思いますけど……それには同意いたしますの」

まさか、こいつとこんな時間を過ごすことになるとは。
ルートを決めた時に、もう敵として以外関わることはないと思っていた。
その覚悟を持って、幼馴染であるこいつを突き放したのだが……人生っていうのはよくわからん。

「……あの、聞いても良いかしら?」

「あん? 何を畏まって……まあ、別に構わん」

「どうして、私を味方に引きこまなかったのです? あっ、別に言われたからって味方をするわけじゃないですわよ? ただ、私たちは幼馴染だったのに……」

「そんなのは決まってる……お前が優しい奴だから。きっと、俺が誘えば迷っただろう。そして、良心の呵責に囚われたに違いない」

それは前にも思ったし、後悔もしていない。
それに正直言って……こいつがこっちついたら、俺が簡単に勝ってしまう。
作中最強の魔法使いであるこいつがいたから、俺は全力で相手が出来た。
おかげで芝居がバレることなく、エンディングまで行けたってわけだ。

「ふふ、やっぱりそうでしたの」

「ん? 何がだ?」

「そういうセリフが出てくるってことは、貴方が邪神に支配されていなかった証拠ですわ。私のために、敢えて突き放したと……」

「……なんのことだか。俺は邪神に支配された魔王アルス、そして勇者達に倒された者……それ以上でもそれ以下でもない」

「ふふ、そういうことにしておきますわ」

……しまった、もうクリアしてるし普通に話してしまった。

ただ、あの時の自分は間違ってなかった。

今こうして……数年ぶりに、幼馴染とゆっくり過ごすことができるのだから。