その後、ニールにも仕事を割り振ったが……厳ついアイザックを見て倒れたり、獣人に怯えて大変だった。
あまりのびっくり度に、皆がショックを受けるより苦笑していたのが印象的である。
ちなみにニールの仕事は食料調達班と、外壁の上からの警護になった。
スナイパーであるこの子には適任だろう。
「うぅー……怖いですぅ」
「ちょっと、しっかりしなさい。これから、彼らとお仕事をするのですから」
「が、頑張りますっ!」
「随分とビビりだな? この俺に、あんな鋭い矢を放っておきながら」
この背が小さく容姿も地味で、赤い髪をセミロングくらい伸ばしている少女だが……実は、俺はほとんど関わったことはない。
当然ながら俺は敵側だし、こうして落ち着いて話すのは初めてに近い。
いつも出会うときは……その矢で心臓を狙われていた。
「ひぃ!? よく考えたら魔王でしたぁぁ!」
「今更かよ!? しかも、魔王って……」
「忘れてましたぁぁ〜!! 裏で魔王って言ってることもばれちゃいましたっ! 黒いマントに黒い服を着てるし闇の炎使うし怖いし!」
「……いや、別にいいや。うん、好きにしなさい」
「はぁ、ごめんなさい。人選を間違えたかもしれないわ」
「いや、こいつの力は必要だ。特に、もしダンジョンがあった場合にはな」
ダンジョン、それは内部が迷路のようになっている迷宮。
特徴は魔物や魔獣が跋扈してること、様々なトラップや仕掛けがあること。
そして、階層ごとに構図が違う。
狭い通路の階層に入った時に、後衛がいるかいないかで難易度の桁が違う。
「それはそうね。森の中でも役に立つし」
「無論、お前の水魔法にも期待してるぞ」
「ふふん、いいですわ。華麗なる魔法を見せてあげますの」
「わ、わたしも頑張りますっ」
両手を握りしめて気合を入れる様は、まさしくフンスフンスという表現が正しい。
年齢も十五歳の割に中学生みたいだし、小動物のように見えて可愛らしい。
何か通じたのか、俺とエミリアは黙って、その頭を撫でるのだった。
◇
ゆっくり?英気を養った翌日、いよいよ作戦を練る。
主要メンバーに集まってもらい、会議を開いた。
ドワーフ代表ダイン殿、エルフ代表リーナ、獣人族代表カリオン、人族にはアイザック……ニールには荷が重そうなので役職は無しにした。
エミリアとユキノは、俺の側近という形に収まった……俺の知らんところで。
「ええー、まずは朝早くからすまん。無駄な時間は勿体無いので、早速会議に入る。自己紹介は済んでるからいいとして、今現在のそれぞれの状況を説明してくれ」
「わしらドワーフは知っての通り、建物や器材を作っておる。お風呂もそうじゃし、アルス様に頼まれたものとかのう。そのためには引き続き、木材や鉱石が欲しいところじゃ。廃材にも限りがあるし、できれば新品を作っておきたい」
「それについては私から。獣人族ですが、主人の蒼炎により傷も癒え、食事も取れるようになったので戦える者が増えてきました。主人の熱を込めた魔石のおかげで、獣人族で遠征が可能になりました。木材だけなら、我々だけでも調達が可能になるかもしれません」
「ということは、この二人は連携して話し合いをしてくれ。もし揉めたり、意見があるようなら俺に言ってくるといい」
その言葉に二人が返事をしてから、お互いに握手をする。
それまで交流もなかったというし、こうしておけばお互いを知れるだろう。
何より、俺が楽をすることができる(ここ大事)
「では、次はエルフ族からです。我々は日用品を作ったり、裁縫などで洋服を作っております。ですが、いかんせん材料が不足しておりますし、エルフ族自体の数が少ないです。できれば草食系の魔獣の毛皮、そしてお手伝いをしてくれる方がいると助かります」
「それなら俺に任せるっすよ! 毛皮調達もそうっすけど、人族は数は多いんで仕事がないって奴らもいますんで。ただ、エルフ達に声をかけていいか迷ってるみたいっすね」
「は、はい、ありがとうございます……ふふ、それを我らに直接伝えるとは変な人族ですね」
「そうっすかね? よくわかんないっすけど」
「まあ、誰も彼もお前みたいにはいかないさ。本来、エルフやドワーフと人族が会うことなどないからな。そりゃ、どうしていいかわからないだろう」
こいつときたら、初めて出会った頃から距離感がおかしな奴だった。
王族である俺にもタメ口だったし、お偉い貴族にも言いたいこと言うし。
放っておいたら、何回でも殺されそうなことをやっていた。
そんなやつだからこそ、救いたいと思ったんだが。
「……兄貴? 褒めてんすかね?」
「……もちろんだ」
「めちゃくちゃ間があったんすけど……」
「と、とにかく! アイザックとリースは、それぞれの種族の調整をしてくれ」
二人が頷き、握手を交わす。
これで、俺は動かずに済む。
何より、エルフに対する印象も変わるだろう。
「ところで、二人の役目は兄貴の愛人ってことでいいんすかね? 夜伽とかっすか?」
「そうですよー。バッチコーイですっ!」
「ひゃ!? な、何を言ってますの!? 私がそんな破廉恥なことするわけないですの!」
「馬鹿なことを言うな。こんなのに手を出したら、俺の人生が終わるわ」
「えへへー、終わらせてあげますよ? 腹上死とかどうです? それとも、空っぽにします?」
「目が怖いからやめい」
「はぅ……どうしようかしら? でも、私には……」
「おい……って全然話を聞いてねぇ」
ユキノはユキノで、手を出したらこっちが死にそうだ。
エミリアはエミリアで、何やら危険な気がする。
どっちしろ、地雷臭しかしないのは気のせいだろうか?
「はぁ……アイザック、お前は残って説教な?」
「どうしてっすか!?」
「自分の心に聞け。と言うわけで、ひとまず解散だ。各々、できることをやってくれ」
その後、アイザックを残し、全員を退出させる。
後日、アイザックが黒焦げで館から出てきて噴水に飛び込んだと噂になったとかならないとか。
……ちょっとやりすぎだったかもしれん。
あまりのびっくり度に、皆がショックを受けるより苦笑していたのが印象的である。
ちなみにニールの仕事は食料調達班と、外壁の上からの警護になった。
スナイパーであるこの子には適任だろう。
「うぅー……怖いですぅ」
「ちょっと、しっかりしなさい。これから、彼らとお仕事をするのですから」
「が、頑張りますっ!」
「随分とビビりだな? この俺に、あんな鋭い矢を放っておきながら」
この背が小さく容姿も地味で、赤い髪をセミロングくらい伸ばしている少女だが……実は、俺はほとんど関わったことはない。
当然ながら俺は敵側だし、こうして落ち着いて話すのは初めてに近い。
いつも出会うときは……その矢で心臓を狙われていた。
「ひぃ!? よく考えたら魔王でしたぁぁ!」
「今更かよ!? しかも、魔王って……」
「忘れてましたぁぁ〜!! 裏で魔王って言ってることもばれちゃいましたっ! 黒いマントに黒い服を着てるし闇の炎使うし怖いし!」
「……いや、別にいいや。うん、好きにしなさい」
「はぁ、ごめんなさい。人選を間違えたかもしれないわ」
「いや、こいつの力は必要だ。特に、もしダンジョンがあった場合にはな」
ダンジョン、それは内部が迷路のようになっている迷宮。
特徴は魔物や魔獣が跋扈してること、様々なトラップや仕掛けがあること。
そして、階層ごとに構図が違う。
狭い通路の階層に入った時に、後衛がいるかいないかで難易度の桁が違う。
「それはそうね。森の中でも役に立つし」
「無論、お前の水魔法にも期待してるぞ」
「ふふん、いいですわ。華麗なる魔法を見せてあげますの」
「わ、わたしも頑張りますっ」
両手を握りしめて気合を入れる様は、まさしくフンスフンスという表現が正しい。
年齢も十五歳の割に中学生みたいだし、小動物のように見えて可愛らしい。
何か通じたのか、俺とエミリアは黙って、その頭を撫でるのだった。
◇
ゆっくり?英気を養った翌日、いよいよ作戦を練る。
主要メンバーに集まってもらい、会議を開いた。
ドワーフ代表ダイン殿、エルフ代表リーナ、獣人族代表カリオン、人族にはアイザック……ニールには荷が重そうなので役職は無しにした。
エミリアとユキノは、俺の側近という形に収まった……俺の知らんところで。
「ええー、まずは朝早くからすまん。無駄な時間は勿体無いので、早速会議に入る。自己紹介は済んでるからいいとして、今現在のそれぞれの状況を説明してくれ」
「わしらドワーフは知っての通り、建物や器材を作っておる。お風呂もそうじゃし、アルス様に頼まれたものとかのう。そのためには引き続き、木材や鉱石が欲しいところじゃ。廃材にも限りがあるし、できれば新品を作っておきたい」
「それについては私から。獣人族ですが、主人の蒼炎により傷も癒え、食事も取れるようになったので戦える者が増えてきました。主人の熱を込めた魔石のおかげで、獣人族で遠征が可能になりました。木材だけなら、我々だけでも調達が可能になるかもしれません」
「ということは、この二人は連携して話し合いをしてくれ。もし揉めたり、意見があるようなら俺に言ってくるといい」
その言葉に二人が返事をしてから、お互いに握手をする。
それまで交流もなかったというし、こうしておけばお互いを知れるだろう。
何より、俺が楽をすることができる(ここ大事)
「では、次はエルフ族からです。我々は日用品を作ったり、裁縫などで洋服を作っております。ですが、いかんせん材料が不足しておりますし、エルフ族自体の数が少ないです。できれば草食系の魔獣の毛皮、そしてお手伝いをしてくれる方がいると助かります」
「それなら俺に任せるっすよ! 毛皮調達もそうっすけど、人族は数は多いんで仕事がないって奴らもいますんで。ただ、エルフ達に声をかけていいか迷ってるみたいっすね」
「は、はい、ありがとうございます……ふふ、それを我らに直接伝えるとは変な人族ですね」
「そうっすかね? よくわかんないっすけど」
「まあ、誰も彼もお前みたいにはいかないさ。本来、エルフやドワーフと人族が会うことなどないからな。そりゃ、どうしていいかわからないだろう」
こいつときたら、初めて出会った頃から距離感がおかしな奴だった。
王族である俺にもタメ口だったし、お偉い貴族にも言いたいこと言うし。
放っておいたら、何回でも殺されそうなことをやっていた。
そんなやつだからこそ、救いたいと思ったんだが。
「……兄貴? 褒めてんすかね?」
「……もちろんだ」
「めちゃくちゃ間があったんすけど……」
「と、とにかく! アイザックとリースは、それぞれの種族の調整をしてくれ」
二人が頷き、握手を交わす。
これで、俺は動かずに済む。
何より、エルフに対する印象も変わるだろう。
「ところで、二人の役目は兄貴の愛人ってことでいいんすかね? 夜伽とかっすか?」
「そうですよー。バッチコーイですっ!」
「ひゃ!? な、何を言ってますの!? 私がそんな破廉恥なことするわけないですの!」
「馬鹿なことを言うな。こんなのに手を出したら、俺の人生が終わるわ」
「えへへー、終わらせてあげますよ? 腹上死とかどうです? それとも、空っぽにします?」
「目が怖いからやめい」
「はぅ……どうしようかしら? でも、私には……」
「おい……って全然話を聞いてねぇ」
ユキノはユキノで、手を出したらこっちが死にそうだ。
エミリアはエミリアで、何やら危険な気がする。
どっちしろ、地雷臭しかしないのは気のせいだろうか?
「はぁ……アイザック、お前は残って説教な?」
「どうしてっすか!?」
「自分の心に聞け。と言うわけで、ひとまず解散だ。各々、できることをやってくれ」
その後、アイザックを残し、全員を退出させる。
後日、アイザックが黒焦げで館から出てきて噴水に飛び込んだと噂になったとかならないとか。
……ちょっとやりすぎだったかもしれん。