無事に?湯船を堪能した俺は、ゆっくりとお風呂から出る。
そして着替えをすませ、外に出ると……そこには死屍累々の男達がいた。
「ぜぇ、ぜぇ、私を止めるとはやりますね……ご主人様が出てきちゃったじゃないですか」
「あ、兄貴、やりましたぜ……ぐふっ」
「わ、わしもやり遂げたわい……かはっ」
「主人よ、先に逝くことをお許し……ごはっ」
「お前達ー!! しっかりしろ!!」
俺のために、尊い犠牲になった者達に死なせるわけにはいかない!
俺は急いで蒼炎によって傷を癒すのだった。
その後、どうにか皆が立ち上がる。
「ったく、お前も手加減しろ。アイザックはともかく、この二人は戦闘向きじゃないんだぞ?」
「えへへー、ごめんなさい。つい、楽しくなっちゃって。でも、この三人の忠誠心を見ましたね。これなら、ご主人のことを任せられそうです」
「姉御! そこまでのことを考えて……」
「いや、気のせいだよ。ほら、俺の後でよければ入ってこい……ん? そもそも男女共有か?」
「いや、そうではないですな。今回はとにかく、アルス様に一番風呂に入ってもらうことを優先したわい。女風呂は、今は建設中といったところかと。ただ、ユキノ殿が入る分には構わん」
「やったぁー! それじゃ、フーコを連れてきますね!」
そう言い、元気に走り去っていく。
一体、あの体力は何処から来るのだろうか?
俺なんか、今すぐにも眠りにつきたいのに。
「ダイン殿、改めて良い湯だった、感謝する」
「そいつは良かったですわい」
「これを民にも使わせてやりたい、良いだろうか? 木材なら多少持ってきたし、場所はわかったのでこれからも持ってこれる」
「もちろんでさぁ! では、早速女風呂の方を完成をするわい!」
そうして、ダイン殿もその場から去る。
どうやら、女風呂と男風呂の位置は離すらしい。
うんうん、いいことだ……決して残念などと思ってはいない。
「カリオンもアイザックもご苦労だった。さて、二人からは話を聞かんとな。カリオン、先程言っていた怪我人の元に案内してくれ」
「来てくださると……はっ!ありがとうございます!」
「気にするな。アイザック、すまんが腹が減ったから用意を頼む」
「へいっ! お任せくだせい!」
こう見えてアイザックは孤児院で料理も作っていた。
その腕前は庶民的だが、中々美味かった記憶があるから安心だ。
アイザックと別れて、カリオンと一緒に診療所に入る。
そこには包帯を巻いている獣人達がいた。
「これはアルス様!」
「お帰りなさいませ!」
「うむ、立ち上がらないでいい。そのままじっとしていろ」
俺は蒼炎を使い、ベッドに横たわる者達を癒していく。
なにせ、彼らはこの都市の望遠の要だ。
これからも役に立ってもらわねばなるまい。
「おおっ! ありがとうございます!」
「これで、また今夜から仕事にいけます!」
「都市の守りは我々にお任せを!」
「なに、気にするでない。領主として当然のことをしたまでだ」
「「「オォォォー!!」」」
しめしめ、これで好感度も上がるし防衛にも力が入るだろう。
俺は今日こそゆっくりと眠りたいのだ(キリッ)
「主人よ、感謝いたします」
「いや、それはこちらのセリフだ。よくぞ、俺がいない留守を守ってくれたな」
「はっ、勿体ないお言葉です。それで、調査のほどはいかに?」
「どうやら、ダンジョンがあるらしくな。街道整備もそうだが、森を切り開くために戦力も必要になってくる」
「申し訳ありません、我々に力があれば……」
「いや、適材適所というやつだ。お前達は、お前達にできることをすれば良い」
「はっ、都市の防衛と街の治安に専念いたします」
さてさて、だが実際にどうする?
アイザックの手を借りるとして、それ以外にも魔法使いや弓使いがいると助かる。
……いかん、頭がぼーっとしてきた。
このままだと、眠すぎてやばいな。
「主人よ、平気ですか?」
「すまん、平気じゃない。ちょっと疲れすぎた……」
「 無理もないです。さあ、少しお休みになってください。食事ができたらお呼びいたしますので」
「そうだな。悪いが少し休ませて……っ!?」
その時、俺の耳に轟音が聞こえてくる。
「な、なんだ!?」
「これは……外からです!」
「なに? ったく、こっちはクタクタだっていうのに! ……だァァァァ! やったるわ!」
「及ばずながらお手伝いをさせてください!」
「おうよ! 俺の眠りを妨げる奴は許さん!」
俺はカリオンや怪我を治した者を連れ、都市の外へと急ぐのだった。
◇
少しまずいですわね……。
もうそろそろ、魔力が切れてしまいます。
「もう! いきなり瘴気が沸くなんて聞いてませんわ!」
「自分が蒔いた種ですよぉ〜! 引きつけてしまいましたし!」
「う、うるさいですわ! あのままでは、村が危なかったから仕方ありません!」
いざ流刑地である辺境にきてみれば、そこには普通に人々が暮らしていて……確かに人の営みがなされていた。
それにショックを受けつつも、もちろんいいこともあった。
アルスが人助けをしながら、都市に向かったとわかったから。
私も負けられないと思い、途中で村の近くに瘴気が湧いて魔物が現れたので、それを引きつけながら倒してたのですが……。
「グキャ!」
「ブホッ!」
「この数は想定外ですわ——アクアフォール!」
上空から水の滝に呑まれ、魔物が消え去っていく。
しかし、すぐに次の魔物が襲ってくる。
いくら下級とはいえ、数十体を同時に相手にするのは厳しい。
こちらには、後衛タイプしかいないですし。
「ギャキャ!」
「ブホッ!」
「せいっ!」
ニールの弓によって私に近づく魔物が貫かれる。
ありがたいけど、このままでは……。
「お嬢様! なんか建物が見えました! あそこに駆け込みましょ!」
「そんなことはできませんわ! 私達の戦いに関係ない方を巻き込むのは!」
「そ、そうですね……」
「ただ、知らせないのも危険ですわ。ここは私に任せて、貴方はそこの村に知らせてください」
「そんなことはできませんよ! 私はお嬢様の護衛ですから!」
その時、一際大きな瘴気が発生する。
そこから現れたのは……中級であるトロールだった。
体長三メートルに太った身体、人を好んで食らう食人鬼の化け物です。
特に女性を好んで狙うことから、忌み嫌われてる存在。
「デフェフェ」
「ひい!?」
「……ただでさえ、魔法が効きづらい相手なのに……まいりましたわね。ですが、敵に背を向けるのは公爵家の名折れ! ここで食い止めますわよ!」
「デフェフェ!!」
「フレイムランス!」
「くらえ!」
「フゲ?」
「くっ! この威力では効きませんわ!」
厚い脂肪によって弓を弾き、魔法障壁によって魔法防御も高い。
こういう時に、前衛の人がいてくれたら……いえ、従者を巻き込みたくなくて連れてこなかったのは私の責任。
こうなったら、ここまでついてきてくれたニールだけでも。
「ど、どうしますかぁー!?」
「やはり、私がなんとかしますから貴女だけでも……」
「嫌ですよぉ〜! 死ぬ時までお側にいます!」
「貴女って子は……」
「お、お嬢様! 右からゴブリンが!」
その言葉に反応して右を見ると、既に武器を振りかぶっていたゴブリンが視界に入る。
この距離では、もう避けることはできない。
「しまっ……!」
「はっ! 相変わらずの女だなっ!」
私が覚悟を決めた時、突如目の前に男性が現れた。
その男が刀を一閃させると、ゴブリンが消滅する。
それは知っている声だったけど、私が見たことない頼り甲斐のある背中だった。
何故なら……久しく、私が彼に守られることなどなかったから。
そして着替えをすませ、外に出ると……そこには死屍累々の男達がいた。
「ぜぇ、ぜぇ、私を止めるとはやりますね……ご主人様が出てきちゃったじゃないですか」
「あ、兄貴、やりましたぜ……ぐふっ」
「わ、わしもやり遂げたわい……かはっ」
「主人よ、先に逝くことをお許し……ごはっ」
「お前達ー!! しっかりしろ!!」
俺のために、尊い犠牲になった者達に死なせるわけにはいかない!
俺は急いで蒼炎によって傷を癒すのだった。
その後、どうにか皆が立ち上がる。
「ったく、お前も手加減しろ。アイザックはともかく、この二人は戦闘向きじゃないんだぞ?」
「えへへー、ごめんなさい。つい、楽しくなっちゃって。でも、この三人の忠誠心を見ましたね。これなら、ご主人のことを任せられそうです」
「姉御! そこまでのことを考えて……」
「いや、気のせいだよ。ほら、俺の後でよければ入ってこい……ん? そもそも男女共有か?」
「いや、そうではないですな。今回はとにかく、アルス様に一番風呂に入ってもらうことを優先したわい。女風呂は、今は建設中といったところかと。ただ、ユキノ殿が入る分には構わん」
「やったぁー! それじゃ、フーコを連れてきますね!」
そう言い、元気に走り去っていく。
一体、あの体力は何処から来るのだろうか?
俺なんか、今すぐにも眠りにつきたいのに。
「ダイン殿、改めて良い湯だった、感謝する」
「そいつは良かったですわい」
「これを民にも使わせてやりたい、良いだろうか? 木材なら多少持ってきたし、場所はわかったのでこれからも持ってこれる」
「もちろんでさぁ! では、早速女風呂の方を完成をするわい!」
そうして、ダイン殿もその場から去る。
どうやら、女風呂と男風呂の位置は離すらしい。
うんうん、いいことだ……決して残念などと思ってはいない。
「カリオンもアイザックもご苦労だった。さて、二人からは話を聞かんとな。カリオン、先程言っていた怪我人の元に案内してくれ」
「来てくださると……はっ!ありがとうございます!」
「気にするな。アイザック、すまんが腹が減ったから用意を頼む」
「へいっ! お任せくだせい!」
こう見えてアイザックは孤児院で料理も作っていた。
その腕前は庶民的だが、中々美味かった記憶があるから安心だ。
アイザックと別れて、カリオンと一緒に診療所に入る。
そこには包帯を巻いている獣人達がいた。
「これはアルス様!」
「お帰りなさいませ!」
「うむ、立ち上がらないでいい。そのままじっとしていろ」
俺は蒼炎を使い、ベッドに横たわる者達を癒していく。
なにせ、彼らはこの都市の望遠の要だ。
これからも役に立ってもらわねばなるまい。
「おおっ! ありがとうございます!」
「これで、また今夜から仕事にいけます!」
「都市の守りは我々にお任せを!」
「なに、気にするでない。領主として当然のことをしたまでだ」
「「「オォォォー!!」」」
しめしめ、これで好感度も上がるし防衛にも力が入るだろう。
俺は今日こそゆっくりと眠りたいのだ(キリッ)
「主人よ、感謝いたします」
「いや、それはこちらのセリフだ。よくぞ、俺がいない留守を守ってくれたな」
「はっ、勿体ないお言葉です。それで、調査のほどはいかに?」
「どうやら、ダンジョンがあるらしくな。街道整備もそうだが、森を切り開くために戦力も必要になってくる」
「申し訳ありません、我々に力があれば……」
「いや、適材適所というやつだ。お前達は、お前達にできることをすれば良い」
「はっ、都市の防衛と街の治安に専念いたします」
さてさて、だが実際にどうする?
アイザックの手を借りるとして、それ以外にも魔法使いや弓使いがいると助かる。
……いかん、頭がぼーっとしてきた。
このままだと、眠すぎてやばいな。
「主人よ、平気ですか?」
「すまん、平気じゃない。ちょっと疲れすぎた……」
「 無理もないです。さあ、少しお休みになってください。食事ができたらお呼びいたしますので」
「そうだな。悪いが少し休ませて……っ!?」
その時、俺の耳に轟音が聞こえてくる。
「な、なんだ!?」
「これは……外からです!」
「なに? ったく、こっちはクタクタだっていうのに! ……だァァァァ! やったるわ!」
「及ばずながらお手伝いをさせてください!」
「おうよ! 俺の眠りを妨げる奴は許さん!」
俺はカリオンや怪我を治した者を連れ、都市の外へと急ぐのだった。
◇
少しまずいですわね……。
もうそろそろ、魔力が切れてしまいます。
「もう! いきなり瘴気が沸くなんて聞いてませんわ!」
「自分が蒔いた種ですよぉ〜! 引きつけてしまいましたし!」
「う、うるさいですわ! あのままでは、村が危なかったから仕方ありません!」
いざ流刑地である辺境にきてみれば、そこには普通に人々が暮らしていて……確かに人の営みがなされていた。
それにショックを受けつつも、もちろんいいこともあった。
アルスが人助けをしながら、都市に向かったとわかったから。
私も負けられないと思い、途中で村の近くに瘴気が湧いて魔物が現れたので、それを引きつけながら倒してたのですが……。
「グキャ!」
「ブホッ!」
「この数は想定外ですわ——アクアフォール!」
上空から水の滝に呑まれ、魔物が消え去っていく。
しかし、すぐに次の魔物が襲ってくる。
いくら下級とはいえ、数十体を同時に相手にするのは厳しい。
こちらには、後衛タイプしかいないですし。
「ギャキャ!」
「ブホッ!」
「せいっ!」
ニールの弓によって私に近づく魔物が貫かれる。
ありがたいけど、このままでは……。
「お嬢様! なんか建物が見えました! あそこに駆け込みましょ!」
「そんなことはできませんわ! 私達の戦いに関係ない方を巻き込むのは!」
「そ、そうですね……」
「ただ、知らせないのも危険ですわ。ここは私に任せて、貴方はそこの村に知らせてください」
「そんなことはできませんよ! 私はお嬢様の護衛ですから!」
その時、一際大きな瘴気が発生する。
そこから現れたのは……中級であるトロールだった。
体長三メートルに太った身体、人を好んで食らう食人鬼の化け物です。
特に女性を好んで狙うことから、忌み嫌われてる存在。
「デフェフェ」
「ひい!?」
「……ただでさえ、魔法が効きづらい相手なのに……まいりましたわね。ですが、敵に背を向けるのは公爵家の名折れ! ここで食い止めますわよ!」
「デフェフェ!!」
「フレイムランス!」
「くらえ!」
「フゲ?」
「くっ! この威力では効きませんわ!」
厚い脂肪によって弓を弾き、魔法障壁によって魔法防御も高い。
こういう時に、前衛の人がいてくれたら……いえ、従者を巻き込みたくなくて連れてこなかったのは私の責任。
こうなったら、ここまでついてきてくれたニールだけでも。
「ど、どうしますかぁー!?」
「やはり、私がなんとかしますから貴女だけでも……」
「嫌ですよぉ〜! 死ぬ時までお側にいます!」
「貴女って子は……」
「お、お嬢様! 右からゴブリンが!」
その言葉に反応して右を見ると、既に武器を振りかぶっていたゴブリンが視界に入る。
この距離では、もう避けることはできない。
「しまっ……!」
「はっ! 相変わらずの女だなっ!」
私が覚悟を決めた時、突如目の前に男性が現れた。
その男が刀を一閃させると、ゴブリンが消滅する。
それは知っている声だったけど、私が見たことない頼り甲斐のある背中だった。
何故なら……久しく、私が彼に守られることなどなかったから。