俺がいそいそと準備をしていると、後ろによく知る気配を感じた。
振り向くと、そこにはユキノがいた。
銀髪ポニーテールで、忍び装束を身につけている。
スタイルも良く、その立ち姿は見慣れている俺でも目を奪われるくらいだ。
ヴァンパイアいう種族で恐ろしいほど整った容姿、身長も俺より低いが百七十くらいはある。
頭も良く剣技に優れ、相変わらず隙がないって感じだ。
「ご主人様」
「おい、音もなく入ってこないでくれ」
「いえいえー、きちんとドアから入ってきましたから」
「そういうことじゃないんだけど? 俺、一応主人だからね?」
「それとこれとは話が別ですよー」
相変わらず、ノリが軽いやつだ。
まあ、堅苦しいのは嫌いだからいいけど。
「いや、いいけど……というか、いつからいたんだ?」
「うーんと、ご主人様がベッドの上で笑ってる時からです」
「……最初からじゃねえか! えっ!? 何してんの!?」
「いえ、気配を消して眺めてましたよ?」
そう言い、何故がドヤ顔をしていた。
相変わらず、主人を舐めきっている従者である。
「いや、褒めてないからな? というか、いたんなら荷物整理に付き合ってくれ」
「そんなことより」
「そんなことって言った?」
「はい、そんなことですよー」
……まあ、良いや。
こいつは、俺の言うことなんか聞きゃしないし。
……それを望んだのも、俺自身だしな。
破滅する役割を担う俺は、ストレスでどうにかなりそうだった。
そんな時助けてくれたのも、こいつの軽いノリだった。
「へいへい、好きにしな……んで、話はわかるな?」
「はい、予定通りにご主人様が追放されたことは」
ユキノには、俺の前世の話や破滅について教えてある。
流石に協力者の一人も作らずに、このルート回避はできなかった。
他の者が信用できないというわけではなく、ユキノが《《隠しキャラだったからできたことだ》》。
物語に直接関わりがないので、イレギュラーな出来事が起こらない貴重な人材だった。
あとは、数名だけには教えてある。
「そういうこと。とりあえず、ささっと王都を出て行くから。温情として、自主的に出て行って良いってさ」
「私は納得いってませんけど……まあ、仕方がないですねー」
「そうそう、こうしないと世界そのものが危なかったんだ。んで、ユキノはどうする?」
「……どういう意味ですか?」
「いや、そのままの意味だよ。もしあれなら、ここで解放って形にするか?」
そもそも、ヴァンパイア族は人族に忌み嫌われる種族だ。
人の血を吸うとされ、それによって眷属としてしまう能力があるとか。
それは真祖と呼ばれる初代のみで、その後に生まれた者には能力はない。
ただし、それを信じる者も少なく迫害されてきた歴史を持つ。
しかし、仮にも世界を救った立役者の一人だ。
少なくとも、迫害されるようなことにはなるまい。
「な、何故ですか!? ……破滅ルート?を避けた今、私はもうお役御免ですか?」
「いや、そんなことはない。そりゃ、ついてきてくれたら助かるが……」
あの時の俺は不安で、そのためにこの子を利用した。
だが、もう解放してあげても良いだろ。
こんな俺のために、今まで頑張ってくれたし。
「なら断ります! 私は貴方のお側にいますからね!」
「そう? まあ、それならそれで助かる」
まあ、本人が良いって言うなら話は別だ。
ぼっちは寂しいので、心強いのは間違いないし。
「へっ?」
「どうした? ぽかんとして」
「い、いえ! なんでもありません! まったく、何を言うかと思ったら……」
「いや、聞いてみただけだ。ユキノなら、もう一人でも平気だと思ってな。それに、ここを離れることになる。そして、俺は二度と戻ってはこれまい」
ユキノの強さは相当で、場合によっては最強クラスだ。
それだけ強ければ、襲われても人族に捕まる事もない。
「確かに、もう一人でも平気ですけど……ご主人様は生活能力皆無ですので、放ってはおけません。それとも、炊事洗濯掃除に料理などもできるんです?」
「ぐぬぬっ……はい、できません」
「そもそも、らしくないですよ。私が必要なら、命令して下さればいいのです」
「んじゃ、引き続きよろしく頼む」
「えへへ、私にお任せくださいねー」
そう言うと……満面の笑みを浮かべる。
俺としては開放した方が良いかと思っていたが……。
やれやれ、どうやら縁は切れないらしい。
振り向くと、そこにはユキノがいた。
銀髪ポニーテールで、忍び装束を身につけている。
スタイルも良く、その立ち姿は見慣れている俺でも目を奪われるくらいだ。
ヴァンパイアいう種族で恐ろしいほど整った容姿、身長も俺より低いが百七十くらいはある。
頭も良く剣技に優れ、相変わらず隙がないって感じだ。
「ご主人様」
「おい、音もなく入ってこないでくれ」
「いえいえー、きちんとドアから入ってきましたから」
「そういうことじゃないんだけど? 俺、一応主人だからね?」
「それとこれとは話が別ですよー」
相変わらず、ノリが軽いやつだ。
まあ、堅苦しいのは嫌いだからいいけど。
「いや、いいけど……というか、いつからいたんだ?」
「うーんと、ご主人様がベッドの上で笑ってる時からです」
「……最初からじゃねえか! えっ!? 何してんの!?」
「いえ、気配を消して眺めてましたよ?」
そう言い、何故がドヤ顔をしていた。
相変わらず、主人を舐めきっている従者である。
「いや、褒めてないからな? というか、いたんなら荷物整理に付き合ってくれ」
「そんなことより」
「そんなことって言った?」
「はい、そんなことですよー」
……まあ、良いや。
こいつは、俺の言うことなんか聞きゃしないし。
……それを望んだのも、俺自身だしな。
破滅する役割を担う俺は、ストレスでどうにかなりそうだった。
そんな時助けてくれたのも、こいつの軽いノリだった。
「へいへい、好きにしな……んで、話はわかるな?」
「はい、予定通りにご主人様が追放されたことは」
ユキノには、俺の前世の話や破滅について教えてある。
流石に協力者の一人も作らずに、このルート回避はできなかった。
他の者が信用できないというわけではなく、ユキノが《《隠しキャラだったからできたことだ》》。
物語に直接関わりがないので、イレギュラーな出来事が起こらない貴重な人材だった。
あとは、数名だけには教えてある。
「そういうこと。とりあえず、ささっと王都を出て行くから。温情として、自主的に出て行って良いってさ」
「私は納得いってませんけど……まあ、仕方がないですねー」
「そうそう、こうしないと世界そのものが危なかったんだ。んで、ユキノはどうする?」
「……どういう意味ですか?」
「いや、そのままの意味だよ。もしあれなら、ここで解放って形にするか?」
そもそも、ヴァンパイア族は人族に忌み嫌われる種族だ。
人の血を吸うとされ、それによって眷属としてしまう能力があるとか。
それは真祖と呼ばれる初代のみで、その後に生まれた者には能力はない。
ただし、それを信じる者も少なく迫害されてきた歴史を持つ。
しかし、仮にも世界を救った立役者の一人だ。
少なくとも、迫害されるようなことにはなるまい。
「な、何故ですか!? ……破滅ルート?を避けた今、私はもうお役御免ですか?」
「いや、そんなことはない。そりゃ、ついてきてくれたら助かるが……」
あの時の俺は不安で、そのためにこの子を利用した。
だが、もう解放してあげても良いだろ。
こんな俺のために、今まで頑張ってくれたし。
「なら断ります! 私は貴方のお側にいますからね!」
「そう? まあ、それならそれで助かる」
まあ、本人が良いって言うなら話は別だ。
ぼっちは寂しいので、心強いのは間違いないし。
「へっ?」
「どうした? ぽかんとして」
「い、いえ! なんでもありません! まったく、何を言うかと思ったら……」
「いや、聞いてみただけだ。ユキノなら、もう一人でも平気だと思ってな。それに、ここを離れることになる。そして、俺は二度と戻ってはこれまい」
ユキノの強さは相当で、場合によっては最強クラスだ。
それだけ強ければ、襲われても人族に捕まる事もない。
「確かに、もう一人でも平気ですけど……ご主人様は生活能力皆無ですので、放ってはおけません。それとも、炊事洗濯掃除に料理などもできるんです?」
「ぐぬぬっ……はい、できません」
「そもそも、らしくないですよ。私が必要なら、命令して下さればいいのです」
「んじゃ、引き続きよろしく頼む」
「えへへ、私にお任せくださいねー」
そう言うと……満面の笑みを浮かべる。
俺としては開放した方が良いかと思っていたが……。
やれやれ、どうやら縁は切れないらしい。