俺の意思を尊重すると言っていたが、どことなく強くなってほしいという気持ちも伝わっている。
アリミアに関してはずっとわがままを言い引き止めようとしていた。彼女とっての1番の理解者は俺だからという理由もあった。
それでも俺はまだトライン街に行くことを決められないでいた。
――出発当日
「これからも頑張れよ」
「はい……」
俺は結局この町に残ることにした。ケトの意思からトライン街には行きたくないと伝わっていた。あんな扱いされていたところに行くことはそれだけ勇気がいる。
「数年もしないうちにAランクになって帰ってくるさ」
マルクスは俺の頭を撫でた。
「じゃあ、俺の一番弟子をよろしくな!」
マルクスはギルドマスターとロニー、アニーに握手をした。
挨拶が終わり向きを変え商会の馬車に乗り込もうとしていた。
エッセン町には移動馬車はなく、商売に来たスキル【運搬】持ちの人と行くことになっている。
「マルクスさん! 待って!」
「ん?」
俺は自分自身に問いかけた。
お前はこのままでいいのか。奴隷商やお前を生んだ家族、クロスを殺した領主を見返さなくていいんか。
「まぁ、そんな悲しむなよ。俺が行きにくくなるだろう」
「マルクスさん」
「なんだ?」
「僕でも強くなれますか?」
俺は大きな声でマルクス声をかけた。
「使えないスキルしかなくて家族に捨てられた。奴隷商に殺され何も無くなった僕でも大丈夫ですか?」
俺はケトを言い訳にトライン街に行くことをやめた。周囲の優しさに甘えていたのだ。
「おい、周りを見てみろ」
マルクスに言われたように辺りを見渡すと、新しい家族のロニーやアニー、冒険者ギルドのギルドマスターやスターチス、そしてエッセン町で仲良くなった人達がいた。
「お前はもう一人じゃないぞ。強くなれる……いや、強くなるんだ!」
「僕は強くなりたいです!」
「ああ、お前なら強くなれる」
そんな俺の肩をアニーは叩いた。振り返るとそこには大きく膨らんだ鞄を持っている。
「ケント行ってきなさい!」
「えっ?」
「俺達を誰だと思ってたんだ。お前の家族だぞ」
ロニーとアニーは俺が付いていくと予想していた。
「アニーさん……ロニーさん……」
そんな俺を二人は優しく抱きしめた。
「あなたは大丈夫よ」
「お前は俺達の息子だからな」
「ほら、マルクスさんが待ってるわよ。早く行って来なさい」
二人は俺の背中を軽く押した。
「でも……」
「振り返るな! ここで逃げたらいつまでも変わらないぞ」
ここまで応援され俺の気持ちは固まった。
「母ちゃん、父ちゃん……強くなって絶対戻って来るからね!」
マルクスの馬車に向かって走った。
俺は初めてロニーとアニーのことを"父ちゃん"、"母ちゃん"と呼んだ。
「ははは、ケントやっと呼んでくれたな!」
「強くなってあなたが帰って来るのを待ってるわ」
「そうよ、私達ずっと待ってたのに! ケントのお母さんよ」
俺はマルクスとともに馬車でトライン街に向かった。
♢
「うっ……あなた……」
アニーはその場で泣き崩れていた。そう、自分の息子ジョニーを見送った時とケントが重なっていた。
そんなアニーの肩を掴み、俺は抱き寄せた。
「俺達もこれから強くならないといけないんだ。 いつまでもジョニーを引きずっては駄目だ」
「ケントは俺達の息子だぞ。だってあの元Aランク冒険者のマルクスと一緒だぜ! この町唯一のAランク冒険者だ」
「そうね……。ケントはきっと強くなって帰って来るわね」
アニーもどこか吹っ切れてたのかスッキリとした顔になっている。
「さあアリミアちゃんも待ってるから早く帰りましょ!」
「ああ、そうだな」
アリミアは自宅で待っている。俺達が昨日荷物を詰めていたのを見ていたからだ。
「やっとあいつらも吹っ切れたみたいだな」
「さぁ、私達も仕事に戻りましょうか」
「あっ……いやー」
「サボるのは許しませんよ」
スターチスはギルドマスターを引きずって冒険者ギルドに戻った。
アリミアに関してはずっとわがままを言い引き止めようとしていた。彼女とっての1番の理解者は俺だからという理由もあった。
それでも俺はまだトライン街に行くことを決められないでいた。
――出発当日
「これからも頑張れよ」
「はい……」
俺は結局この町に残ることにした。ケトの意思からトライン街には行きたくないと伝わっていた。あんな扱いされていたところに行くことはそれだけ勇気がいる。
「数年もしないうちにAランクになって帰ってくるさ」
マルクスは俺の頭を撫でた。
「じゃあ、俺の一番弟子をよろしくな!」
マルクスはギルドマスターとロニー、アニーに握手をした。
挨拶が終わり向きを変え商会の馬車に乗り込もうとしていた。
エッセン町には移動馬車はなく、商売に来たスキル【運搬】持ちの人と行くことになっている。
「マルクスさん! 待って!」
「ん?」
俺は自分自身に問いかけた。
お前はこのままでいいのか。奴隷商やお前を生んだ家族、クロスを殺した領主を見返さなくていいんか。
「まぁ、そんな悲しむなよ。俺が行きにくくなるだろう」
「マルクスさん」
「なんだ?」
「僕でも強くなれますか?」
俺は大きな声でマルクス声をかけた。
「使えないスキルしかなくて家族に捨てられた。奴隷商に殺され何も無くなった僕でも大丈夫ですか?」
俺はケトを言い訳にトライン街に行くことをやめた。周囲の優しさに甘えていたのだ。
「おい、周りを見てみろ」
マルクスに言われたように辺りを見渡すと、新しい家族のロニーやアニー、冒険者ギルドのギルドマスターやスターチス、そしてエッセン町で仲良くなった人達がいた。
「お前はもう一人じゃないぞ。強くなれる……いや、強くなるんだ!」
「僕は強くなりたいです!」
「ああ、お前なら強くなれる」
そんな俺の肩をアニーは叩いた。振り返るとそこには大きく膨らんだ鞄を持っている。
「ケント行ってきなさい!」
「えっ?」
「俺達を誰だと思ってたんだ。お前の家族だぞ」
ロニーとアニーは俺が付いていくと予想していた。
「アニーさん……ロニーさん……」
そんな俺を二人は優しく抱きしめた。
「あなたは大丈夫よ」
「お前は俺達の息子だからな」
「ほら、マルクスさんが待ってるわよ。早く行って来なさい」
二人は俺の背中を軽く押した。
「でも……」
「振り返るな! ここで逃げたらいつまでも変わらないぞ」
ここまで応援され俺の気持ちは固まった。
「母ちゃん、父ちゃん……強くなって絶対戻って来るからね!」
マルクスの馬車に向かって走った。
俺は初めてロニーとアニーのことを"父ちゃん"、"母ちゃん"と呼んだ。
「ははは、ケントやっと呼んでくれたな!」
「強くなってあなたが帰って来るのを待ってるわ」
「そうよ、私達ずっと待ってたのに! ケントのお母さんよ」
俺はマルクスとともに馬車でトライン街に向かった。
♢
「うっ……あなた……」
アニーはその場で泣き崩れていた。そう、自分の息子ジョニーを見送った時とケントが重なっていた。
そんなアニーの肩を掴み、俺は抱き寄せた。
「俺達もこれから強くならないといけないんだ。 いつまでもジョニーを引きずっては駄目だ」
「ケントは俺達の息子だぞ。だってあの元Aランク冒険者のマルクスと一緒だぜ! この町唯一のAランク冒険者だ」
「そうね……。ケントはきっと強くなって帰って来るわね」
アニーもどこか吹っ切れてたのかスッキリとした顔になっている。
「さあアリミアちゃんも待ってるから早く帰りましょ!」
「ああ、そうだな」
アリミアは自宅で待っている。俺達が昨日荷物を詰めていたのを見ていたからだ。
「やっとあいつらも吹っ切れたみたいだな」
「さぁ、私達も仕事に戻りましょうか」
「あっ……いやー」
「サボるのは許しませんよ」
スターチスはギルドマスターを引きずって冒険者ギルドに戻った。