家に帰ると俺は兄のジョンにスキルのことを聞かれた。

「スキルはどうだったんだ?」

 だが外れスキルのことで頭が回らず返事ができなかった。

「おい!」

「あっ、兄ちゃん……」

「多分落ち込んでるってことは【農民】だったんじゃないか? お前は前から冒険者になりたいって言ってたからな」

 近くにいた父親も俺のスキルを楽しみにしていた。

「父さん……」

「ははは、これでお前も一緒にこの家で畑を耕すんだな」

 父親は優しく俺の頭を撫でていた。
 
「兄が出来なくても僕が冒険者になるよ」

「マニー……」

 弟のマニーは俺に抱きついていた。俺を含み兄弟は六人おりその中で俺は三番目だ。

 二人の兄はスキル【農民】と【木樵】のため村で仕事をしていた。

 ちなみに両親のスキルは父親は【農民】、母親は【裁縫】だった。

「まぁ、【農民】なら俺らには丁度良いからよかったじゃねーか。まぁ、今日はゆっくり休め」

 俺は父に甘え先に就寝することにした。





 次の日、朝起きるとなぜか家族の雰囲気が変わっていた。

「父さんおはよう!」

「出来損ないが……」

「えっ?」

 父に挨拶をしたつもりが突然冷たい返事が返ってきた。

「あっ、親父おはよう!」

「おー、ジョン! お前はやっぱ俺の子だな」

「ははは、当たり前でしょ。そこの出来損ないと一緒にされても困るな。なぁ? 」

 兄のジョンから来る視線はいつもより冷たく、俺を人として扱うような目ではなかった。

「兄さん?」

「……」

 俺の兄を呼ぶ声は全く届かず無視し部屋から出て行った。
 
「おはよう!」

 扉を開けて弟のマニーが朝食を取りに来た。

「話しかけないで!」

「えっ?」

 俺は弟のマニーにも話しかけたが昨日までの優しい弟はそこにはいなかった。

「僕に話しかけたら僕のスキルも外れスキルになるからって父さんと母さんが言ってた」

 弟のマニーまで俺に対してあたりが強くなっていた。

「おい、ダメ息子! いや、今日から奴隷か?」

「父さん……?」

「お前は今日から奴隷として売られるんだよ」

「えっ?」

 俺はその言葉が信じられず外にいる母親の元まで走って行った。

 母親は外で洗濯物を干していた。その後ろ姿はいつもと違い震えていた。

「母さん! 母さん!」

「来ないで!」

 俺は母さんに声をかけるがこっちを振り向いてもらえなかった。

「えっ……」

「あんたがあんなスキルをもらったから、私がこんな目にあうのよ」

「母さん……? いたっ!?」

 俺は母親に近づこうとすると近くにあった木の棒を投げつけられた。

「あんたのせいで私が浮気していたと勘違いされたのよ。私はずっとあの人を愛していたのになんでこんな目になるのよ!」

 振り返った母親の姿は酷く、所々に青あざができていた。頭には軽い出血痕があり血が固まっていた。

「あんたが【理学療法】って外れスキルをもらったからこんなことになったのよ」

 一般的にスキルは血統で引き継ぐことが多いと言われている。

 例えば【農民】と【裁縫】のスキルを待つ両親からは両親と同じスキルか、似たスキルとして【農民】からは【木樵】や【牧師】、【裁縫】からは【調理】が出現しやすい。

 また、まれに戦闘スキルの【魔術師】や【剣士】などが過去に血統であればスキルを引き継ぐこともあるがかなり珍しい。

 今まで家系にはいなかった【理学療法】という訳のわからないスキルはどこから生まれたスキルなのかわからなかった。

 だから母親は浮気したと勘違いされ、俺は他の男とできた子だと思われていた。

 俺はその場で頭が真っ白になり、しゃがみこんだ。

 数時間後には太った男が家まで来た。

 遠くで見ていた俺は両親が男からお金をもらっていたのが見えた。

 俺は呼ばれるまま行くと男に手枷をつけられ、連れられるまま檻のような馬車に乗せられた。

 そこには同じぐらいの年齢の子や少し歳をとった男がいた。

「ははは、お前の味方は誰もいないんだよ! じゃあな小僧」

 俺は家族の方を見るとそこにはもう自分の知る家族はいなかった。

 あの時までは優しかった母、頭を撫でてくれた父はもういなかった。

 俺の目に映るのは目の前の俺をゴミのように見る兄弟、怨念がこもった母、嘲笑う父がいた。