ある日、怜央が深空を起こしに行くと珍しく部屋に鍵がかかっていた。何度深空を呼んでも返事が無く、怜央は、十円を使って外から鍵を開けた。そこには、高熱にうなされている深空がいた。
怜央「深空。大丈夫か!?」
深空「お母さん。ようやく私を連れてってくれるの?」
怜央「しっかりしろ。深空。僕だよ。まず薬飲もうか。」
深空はかなり喉が痛いようで、水を飲むことを拒否する。口移しで薬を飲ませた。意識がしっかりしないので、怜央は救急車を呼ぶ事にした。救急車が来る間、深空の身体を拭いたり世話をした。救急車が到着し、病院に着いて、診察を受けると一週間弱の入院が必要との事だった。深空のいない一週間は、怜央にとって苦痛だった。深空が入院したと会社に報告した事により、一緒に住んでいる事がバレて親族からいつ結婚するのかと急かされる。それは、まだ良いが深空がいない家が、光を失った様なそんな感じだった。怜央は自覚した。深空の事が好きだと。そして、深空がうわ言で言った母と連絡が取れた。実母だ。どうやら深空は、死んでいると思っているようだがそんな事はない。離婚のとき深空に会わない事を条件に離婚したらしい。深空が大人になったら、会う事は許されるのでいつ会おうかタイミングを見計らってたようだ。深空も退院した事なので、せっかくなので言う事にする。
怜央「深空。深空のお母さんと合わないか?」
深空「え。嫌だ。あんな事する人には会いたくない。」
怜央「別れたのは、2歳だろ。何をされたんだ?」
深空「え?何言ってるの?実母は死んだはず。」
怜央「死んでない。なら、写真みる?」
そこには唯一思い出せる実母の笑顔だった。深空は、子供の様に顔を歪めて泣き出す。
深空「お母さんっっ……。」
怜央「どうする?会う?」
深空「会う。」
怜央「じゃあ、泣き止もうか。僕も悲しくなってくる。」
深空「ゔん。ありがとう。」
怜央は気になっていた。『あんな事する人には会いたくない。』という深空の言葉が。恐らく義母の事だろうが、何をされたというのか。