真夏の日。俺達は炎天下の中、練習をしていた。
「バッター!もっと速く!そして、強く振るんだ!」
今、監督から指示のあった俺
相川祥太(あきかわしょうた)は高校2年の野球部員だ。
今は、夏の甲子園に向けて練習をしている。
「次!相川!お前は、ファーストに入れ!」と、監督に言われ俺はファースト位置に立った。本来はサードなのだが、今日はファーストが欠員のためにやらされているのだ。

1週間後

俺達は、他校の生徒と練習試合をしている。欠員したメンバーは夏風邪を引いたらしく、まだ、俺はファーストにいたのだ。
そうして、守備をしていると
カキーンッ!
と他校の生徒打った球が飛んだ。
そうして、走り出す
俺達の守備は守りきった。と、思ったがしかし…相手がスライディングをし、それが俺に当たり
「うわぁぁあああ!!」
バンッ!!!
俺は激しく吹き飛んだ。
チームメイトと監督がよってくる中で俺は意識を失った。
「ん…?ここは…?」
目が覚めるとそこは、無機質で白色の天井だった。
「祥太!祥太!良かった〜!先生呼ばなきゃ!」
母さんが号泣し、顔をクシャクシャにしながらもナースコールで看護師を呼び医者も呼んだ。
俺の病室に来た医者はおもむろに口を開け、こう言った。
「祥太君、君には今から辛いことを言うけどどうか、受け止めてほしい。」
「はい…。」
「君は、練習試合中にぶつかったんだよね?」
「はい」
何か、嫌な予感がする。
「それで、君の左足は膝の靭帯などを大きく損傷する大怪我をしたんだ。手術をしたんだけど…足は治るかどうか…」
「そ、そん…な…う、うそ…」
俺は意外なことを言われ、頭が真っ白になっていた。嘘だ!嘘だ!嘘だ!そう響きかせても俺の足は治ることはない。
「ぐぅ…クソぅ…畜生…なんでだよぉ…」俺はただただ、泣くことしかできなかった。
そこから、俺はリハビリを頑張りようやく一人で支え無しで歩けるようにはなった。
そうして、退院が近づいてきた時、医者に更にどん底に陥れられることを言われた。
「君は…もう、一生、運動はできない」
「…え?」
一生運動できないということを言われたのだ。
君の足には金具が入っている。それ故に、走ったりすると金具が外れてしまうことがあるんだ。」
「そ、そうですか…わかりました…」
自分の病室に戻り俺は一人泣いていた。
「うぅ…クソぅ…俺には…俺には…野球しかないのに…なんでこんな…うぅ…」
俺がこの高校に入ったのは野球の強豪校だったためなのだ。その為に中学の頃は、練習に練習を重ね努力をしてきて、やっと手に入った推薦はこの年に崩れ去ったのだ。
俺は、退部しざるを得なかった。
幸い、勉強はできるので学校生活にはそれほど、支障はない。がしかし、野球一筋だった俺からすると胸にポッカリと穴が空いてしまった感じだ。

翌日
教室に行くと心配したクラスメイトが俺のところに駆け寄ってきた。
「相川。お前…大丈夫…なわけないよな」や「困ったことがあったら私に言ってね!」とかなど俺のことを気遣って行ってくれている。
本当に俺は良いクラスメイトと巡り会えたなと実感した。 

放課後
俺は中学の近くにある公園に来ていた。
「はぁ〜…」俺はため息をついてこれからどうしようかと悩んでいた。
と、そこへやってきたのは
「相川君。久しぶり」
「片瀬(かたのせ)久しぶりだな」
俺に声をかけてきたのは片瀬恵波(かたのせえなみ)だった。さらりとした黒髪ロングで容姿端麗、成績優秀おまけにスタイルもいいし、性格もいい。
そんな彼女と俺は中学3年間同じクラスだった。
「どうして、片瀬がここに?」
「私もね、この公園懐かしいなぁ〜と思ってね、寄ってみたのそしたら、相川君がいたの」
「なるほど、」
「相川くんはどうしたの?なんか、顔色も悪いし、元気がなさそうな感じがしてね」
「全く…察しの良さは変わらないな」
俺は片瀬に経緯を話した。大怪我をしたことや、運動ができないこと、部活をやめざるを得なかったことなどを気付けば全部話していた。
「そっか…そんな事が…辛かったし、苦しかったよね…」
そう言うと、片瀬は俺の方に手を伸ばし彼女に抱きつかれた。
「え…?片瀬…?」
「相川君さ、私に嬉しそうに推薦受かった!って言ってたよね?あの時ね、私も自分のように嬉しかったの。でも、今は運動もできなくて、部活も辞めて悔しかったんだよね?突然、怪我をして大好きだった野球も辞めなきゃいけなくなったしで、でも、そんな事があっても私は相川君を応援し続けるよ?」 
「え?今の俺には何も…」
「なくはないよ?」
と片瀬はそう言うと、
「また、新しいことを始めたらいいと思うよ。けど、君が野球を捨てきれないのはわかるよ。でも、これから先進んでいかなきゃならないよ。」
「そうは言っても、どうすれば…俺、野球しかやってこなかったし、これと言って趣味もないし、好きな事もないのに」
と、言うと片瀬は、あ!といい俺にとある提案を進めてきた。
「私と料理しない?」
「料理?俺、やったことないし、作れるかどうか…」
「私が1から教えるよ?だから、頑張ろ?」
「う、うん…」
「だから、今は…私に甘えていいよ?」
俺には彼女に会えたことと、励まされたことに俺に込み上げるものがあり、俺は彼女の胸で思い切り泣いた。こんなに泣いたのは小学生ぶりだろうか?
しかも、片思いの相手だ。嬉しいのは必然だろう。
そこから、片瀬の料理講座が始まり色々料理を作った。サラダから始まり、オムライスやカレー、親子丼などを作り俺の料理の腕前は上達していった。
そんなこんなで片瀬に料理を習い始めてから1年が経った。 
「なぁ、片瀬」
「何?」
「今日でさ、俺達が久々にあって1年が経つな」
「そうだね…!あのときは相川君のあんな姿見たことがなかったからびっくりしたよ!」
「それでさ、片瀬に俺は救われたんだ。」
「え?いやいやそんな大げさな」 
「いや、本当だ。あのときは人生どん底だった俺に一つの光が差し込んできたような感じだったんだ。だから、その…俺と、結婚してください!」
「えぇ!!け、けけ結婚!?そ、そんな気が早いよ…」
「ご、ごめん…」
「だけど、結婚を前提にしたお付き合いならいいよ?」 
「え?いいの?」
「うん、だって、相川君。野球のことしか考えてなかったじゃん?中学生の時」
「そ、そうだな…」
「あんなにずっ〜と、野球のことを考えている人を見たことがなかったからさ…一途なんだな〜って思って野球愛が伝わってきたのそこからいいなって思って好きになったの」
「じゃあ…」
「はい!不束者ですが、よろしくお願いします!」
こうして、俺と片瀬…恵波と付き合うことになった。
俺は、野球を失って挫折をした。しかし、俺のことを救ってくれた女神は今は2人の子供の母親だ。