「オレのこと、好きだって言ってたよな」
スマホから開登(かいと)の声がする。
「……うん」
「嫌いになったっていうことか?」
そう……そういうことだ。
開登を嫌いになった。そういう、ことだ。
いったんスマホを離して、私は息を吸い込んだ。
スマホをまた口元に当てる。
「そうよ! 嫌いよ! 開登なんか、大嫌い!」
言った。思い切って、そう言った。

「わかった」
開登の声。
「そこまで言うなら、オレも、もう会わない。話もしない」
「……」
「窓花のLINEも、電話番号も消す。それでいいな?」
「……はい……」
「じゃな!」
通話が、切れた。

私はそのままベッドに座り込んでた。
開登と、別れた。
開登に、嫌いって、言った。
これでいい。これで……いいんだ。
そう、自分に言い聞かせた。
でも……

私はベッドに上がり込んだ。
敷布団の上にいったん正座してから、背中を丸めて、頭から布団を被った。
それから、枕を布団の中に引っ張り込んだ。
枕に、顔を埋めた。
声が、外に漏れないように。
そして、叫んだ。
枕に向かって、思いっきり、叫んでた。

「開登おおおおおおおおおおおおおおおお! 
 開登おおおおおおおおおおおおおおおお‼」

「好きだよおおおおおおおおおおおおおお! 
 大好きだよおおおおおおおおおおおおお‼」

泣いた。子供みたいに、泣いた。

「うわああああああああああああああああん」

泣きながら、叫んでた。

「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ 
 好きだよおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「開登おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
 大好きだよおおおおおおおおおおおおお‼」