魔石は魔物であれば必ず体のどこかに入っている。日常生活や魔法の威力をあげる媒介になったりなど使い方は様々あるため、魔物の討伐の必要性は単に襲われないようにするため以外にもあった。
そんな魔石をゴブリンから取り出すと、出てきたのは俺が知っている魔石ではなかった。
「なんか色が濃いな」
前のパーティーの時に何度も魔物の解体を行っているため、ゴブリンの魔石がどこにあるのかは分かっていた。しかし、今まで見てきたゴブリンの魔石の中でも明らかに色が濃くてどこか黄色がかっている。
「まるで中級以上の魔物から出てくる土属性の魔石だな」
魔石は中に入っている魔力の濃度と属性で価値が決まる。属性が含まれた魔石は魔法使いにとっては必需品と言われている。
手に取った魔石はどこか高価な上位種の魔物から出てくる魔石に似ていた。きっと勘違いだと思った俺は、とりあえず魔石を袋に入れて街へ戻ることにした。
いくら回復魔法をかけたからと言って体に傷はなくても疲労は残ったままだ。
「ウォーくんおかえり」
早めに帰ってきたため、冒険者ギルドにはあまり人がいなかった。俺は抱えていた袋をリーチェに渡す。
中は薬草と毒消し草をそれぞれ短剣と手で刈り取ったものに分けている。一般的に種類毎で分けた方がいいが今回は検証も含めていた。
「えっ……うそ!? こっちは……あれれ?」
リーチェの反応は俺が思っていた通りだった。初めに短剣を使って採取した方を鑑定して、その後に手で切り取った方の袋を開けていた。
「ウォーくん残念でしたね。量が多かったからごちゃ混ぜでしたけど、半分は良い薬草と毒消し草でした」
どうやら袋の中で分けたように鑑定結果も同じだった。大体同じ数ぐらいで袋に入れたが、値段が5倍以上も違うらしい。
「あと、この魔石も売れますか?」
偶然ゴブリンで手に入れた魔石をリーチェに渡した。今はとにかくお金が必要なため売却することにした。
「こっ、これは中級の魔石!? ウォーくん怪我していない?」
リーチェは俺の体を心配していた。確かに急に中級の魔石を出せば驚いてしまう。本当に中級の魔石だとは思いもしなかった。
「偶然拾って運がよかったのかな?」
とりあえず拾ったことにしておいた。ここで自分が倒したことにすれば、実力がないのに冒険者として目立ってしまう。
「じゃあこれも鑑定しておくね」
後ろで魔石を鑑定しているリーチェの声はどこか興奮していた。しばらく待っていると、リーチェは重そうにお金を持ってきた。一目見ただけで大金貨があることに気づく。
「じゃあ、合計の内訳だけど薬草と毒消し草が350Gで魔石が1500Gです」
「そんなにですか!?」
あまりの額に驚いた。魔石の値段が高いことは予想ついていたが、ここまで稼げるとは思ってもなかった。冒険者は命がけだが、貴族達のようにお金持ちになる理由がわかった。
「特に魔石の純度が良くて、これぐらいならゴーレムを倒した時に稀に手に入るぐらいだよ」
ゴーレムとは全身が硬い岩でできた中級の魔物だ。分類としてそこそこ強い魔物になるが、ゴーレムを倒すことが出来たら立派な冒険者として胸を張ることができるだろう。
「本当に運が良かったです」
「これも日頃の行いが良いウォーくんだからだよ」
リーチェはそう言っていたが、俺の運が良いわけではなく、単に短剣の効果が想像以上に発揮されていたのだろう。
俺は大金を受けとると急いで証券口座に入れる。誰に見られているかわからないところで、見つかったら俺の金はすぐ取られてしまう。
それだけポーターは冒険者なのに、居場所がない弱者だ。
さらに俺にはアドルや年下の冒険者といい、冒険者ギルドには信じられる人がいない。
俺はそのまま冒険者ギルドの部屋に戻りベットに横になった。
「今日は死ぬかと思ったよ」
俺は天井を眺めながら今日のことを振り返る。
今までは守ってくれる存在がいたが、自分で命を守れるだけの力が必要だと改めて再認識した。
一人で活動するなら、全て自分でどうにかしないといけない。
「俺のスキルが戦闘系なら良かったのにな」
俺は証券口座を開くと今まで何も書いていなかった欄に"1"と書いてあった。
「配当が1になってるぞ?」
見ていたのは"ルドルフの鍛冶屋"と書かれた板だった。正確に言えばまだこれだけしか証券口座の中に出現していない。
「そういえば、お前に金を取られた時はびっくりしたよ」
俺のスキルはお金を入れておくと増えたり、減ったりする変わったスキルだ。
その日は偶然"ルドルフの鍛冶屋"という見たこともない新しい表示が出てきていたため、普段と同じようにお金を入れたのがきっかけだった。
気づいた時には1000Gが取り出せなくなっていたのだ。
「まぁこれが俺の運命だったのかもしれないな」
それがきっかけでアドルに殴られたが、あいつの本性に気づけたのはよかった。もうあいつとも会うことはないだろう。
次第に眠気に襲われ、知らぬ間に夢の中に落ちていた。
証券口座を閉じることを忘れて、寝相の悪い俺が朝に再び貧乏になっているとはこの時は思いもしなかった。
そんな魔石をゴブリンから取り出すと、出てきたのは俺が知っている魔石ではなかった。
「なんか色が濃いな」
前のパーティーの時に何度も魔物の解体を行っているため、ゴブリンの魔石がどこにあるのかは分かっていた。しかし、今まで見てきたゴブリンの魔石の中でも明らかに色が濃くてどこか黄色がかっている。
「まるで中級以上の魔物から出てくる土属性の魔石だな」
魔石は中に入っている魔力の濃度と属性で価値が決まる。属性が含まれた魔石は魔法使いにとっては必需品と言われている。
手に取った魔石はどこか高価な上位種の魔物から出てくる魔石に似ていた。きっと勘違いだと思った俺は、とりあえず魔石を袋に入れて街へ戻ることにした。
いくら回復魔法をかけたからと言って体に傷はなくても疲労は残ったままだ。
「ウォーくんおかえり」
早めに帰ってきたため、冒険者ギルドにはあまり人がいなかった。俺は抱えていた袋をリーチェに渡す。
中は薬草と毒消し草をそれぞれ短剣と手で刈り取ったものに分けている。一般的に種類毎で分けた方がいいが今回は検証も含めていた。
「えっ……うそ!? こっちは……あれれ?」
リーチェの反応は俺が思っていた通りだった。初めに短剣を使って採取した方を鑑定して、その後に手で切り取った方の袋を開けていた。
「ウォーくん残念でしたね。量が多かったからごちゃ混ぜでしたけど、半分は良い薬草と毒消し草でした」
どうやら袋の中で分けたように鑑定結果も同じだった。大体同じ数ぐらいで袋に入れたが、値段が5倍以上も違うらしい。
「あと、この魔石も売れますか?」
偶然ゴブリンで手に入れた魔石をリーチェに渡した。今はとにかくお金が必要なため売却することにした。
「こっ、これは中級の魔石!? ウォーくん怪我していない?」
リーチェは俺の体を心配していた。確かに急に中級の魔石を出せば驚いてしまう。本当に中級の魔石だとは思いもしなかった。
「偶然拾って運がよかったのかな?」
とりあえず拾ったことにしておいた。ここで自分が倒したことにすれば、実力がないのに冒険者として目立ってしまう。
「じゃあこれも鑑定しておくね」
後ろで魔石を鑑定しているリーチェの声はどこか興奮していた。しばらく待っていると、リーチェは重そうにお金を持ってきた。一目見ただけで大金貨があることに気づく。
「じゃあ、合計の内訳だけど薬草と毒消し草が350Gで魔石が1500Gです」
「そんなにですか!?」
あまりの額に驚いた。魔石の値段が高いことは予想ついていたが、ここまで稼げるとは思ってもなかった。冒険者は命がけだが、貴族達のようにお金持ちになる理由がわかった。
「特に魔石の純度が良くて、これぐらいならゴーレムを倒した時に稀に手に入るぐらいだよ」
ゴーレムとは全身が硬い岩でできた中級の魔物だ。分類としてそこそこ強い魔物になるが、ゴーレムを倒すことが出来たら立派な冒険者として胸を張ることができるだろう。
「本当に運が良かったです」
「これも日頃の行いが良いウォーくんだからだよ」
リーチェはそう言っていたが、俺の運が良いわけではなく、単に短剣の効果が想像以上に発揮されていたのだろう。
俺は大金を受けとると急いで証券口座に入れる。誰に見られているかわからないところで、見つかったら俺の金はすぐ取られてしまう。
それだけポーターは冒険者なのに、居場所がない弱者だ。
さらに俺にはアドルや年下の冒険者といい、冒険者ギルドには信じられる人がいない。
俺はそのまま冒険者ギルドの部屋に戻りベットに横になった。
「今日は死ぬかと思ったよ」
俺は天井を眺めながら今日のことを振り返る。
今までは守ってくれる存在がいたが、自分で命を守れるだけの力が必要だと改めて再認識した。
一人で活動するなら、全て自分でどうにかしないといけない。
「俺のスキルが戦闘系なら良かったのにな」
俺は証券口座を開くと今まで何も書いていなかった欄に"1"と書いてあった。
「配当が1になってるぞ?」
見ていたのは"ルドルフの鍛冶屋"と書かれた板だった。正確に言えばまだこれだけしか証券口座の中に出現していない。
「そういえば、お前に金を取られた時はびっくりしたよ」
俺のスキルはお金を入れておくと増えたり、減ったりする変わったスキルだ。
その日は偶然"ルドルフの鍛冶屋"という見たこともない新しい表示が出てきていたため、普段と同じようにお金を入れたのがきっかけだった。
気づいた時には1000Gが取り出せなくなっていたのだ。
「まぁこれが俺の運命だったのかもしれないな」
それがきっかけでアドルに殴られたが、あいつの本性に気づけたのはよかった。もうあいつとも会うことはないだろう。
次第に眠気に襲われ、知らぬ間に夢の中に落ちていた。
証券口座を閉じることを忘れて、寝相の悪い俺が朝に再び貧乏になっているとはこの時は思いもしなかった。