俺達は無事倒れてきたゴーレムを避けることができた。

「大丈夫か?」

 俺の胸元にはしっかりしがみついているロンとニアがいた。

「大丈夫です!」
「にいちゃ、今の楽しかったね!」

 俺が出せる一番の最速で飛び込んだからか、ロンは楽しんでいた。

「ゴーレムは倒せたか?」 

 俺は振り返るとゴーレムはまだ動いていた。立ち上がろうとしても片脚のため動きづらそうだ。

「お兄ちゃんスキル玉貸して!」

「スキル玉か?」

 俺は雷属性のスキル玉を渡すが、首を横に振っていた。

「そっちじゃなくて凍らせたやつの方が使ってみたい」

 どうやら氷属性のスキル玉が気になっているらしい。雷属性と同じで回数制限があるスキル玉だが、ニアのキラキラとした目にはお手上げだ。

「回数があるからあんまり近づかないように気をつけて」

 俺がスキル玉を渡すとニアがゴーレムに近づきスキル玉を使った。

「アイシングバースト」

 ニアが使った氷属性のスキル玉はゴーレムを足元から氷漬けにしていた。

 モーリンが言うにはスキルが魔法系統なら魔法に才能がある人と言われており、スキル玉を使おうとしたら頭に呪文が浮かぶらしい。

 呪文の種類と強さも唱える人によって全く違うのがスキル玉の不思議だ。魔石から使ったスキル玉には魔力が含まれているため、その魔力と自身の魔力を合わせて発動するから個人に差が出るとは言っていたが、俺には何を言っているかさっぱりわからなかった。

 ええ、俺には回復魔法があっても魔力が低いから武器に属性を付与するぐらいしかできない。

 ロンもどちらかというと俺とタイプが似ていて、属性のスキル玉を使うと体に影響されていた。

 例えば風属性のスキル玉を使うと瞬発力が上がるとかが良い例だ。

「お兄ちゃん! ゴーレムを凍らせておいたよ」

 スキル玉を数回使うとゴーレムは凍って動けなくなっていた。笑顔で帰ってきたニアは可愛かったがどこか俺の背筋はヒヤリとした。

 やはり間近で見るとニアの魔法の才能は俺とは全く違っていた。なぜ獣人が人間より才能がないと言われているのか俺にはわからなかった。

 しかも、こんなにモフモフして可愛いのになぜそんなに悪く言われるのだろう。全く不思議で仕方ない。

 俺はゴーレムに近づき雷属性と短剣術のスキル玉を使ってゴーレムを砕き始めた。中からしか砕けれないと思っていたが、どうやら凍らせると体を砕くことができるらしい。

『スキル【雷属性】を吸収しました』
『スキル【短剣術】を吸収しました』

 いつものように俺の脳内ではスキル玉が吸収されていた。

 このスキル【吸収】の仕組みもわからないが、魔力をスキル玉から受け取った時に吸収しているのだろう。

 その考えだと短剣術とかも何か出ていることになる。

「ん? なんだこれ」

 俺がゴーレムを砕き終わると、胸の辺りから一際大きな魔石が出てきた。

「にいちゃ大きな魔石だね!」
「これで何のスキル玉が出来るのかな?」

 大きな魔石は真っ黒で輝きは一切なかった。俺は魔石が気になり鑑定を発動させた。

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《ゴーレムのコア》
レア度 ★★★★★★
説明 魔物ゴーレムの魔力が込められた異質的な魔石。鉱物や金属に与えるとゴーレムの意思が宿る。

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 魔石だと思っていた物はどうやらゴーレムのコアらしい。なぜかメジストには見せてはいけないと思った俺はそっとアイテムボックスの中に入れた。

「にいちゃ! これは持って帰れる?」

 ロンがゴーレムを砕いた一部分を持ってきた。ロンはスキルの影響か色々なものを集めるコレクターのようになっている。

 この間はマンドラゴラの歌を持ってくると言って、必死にポーションの瓶をマンドラゴラの口に当てて蓋をしていた。

 帰ってから蓋を開けた時に何も聞こえなくて、大泣きしていたのがまだまだ子供なんだと実感した。

「あー、これなら――」

 俺は鑑定を発動したままゴーレムの一部を受け取るとその鑑定結果に驚いた。

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《魔剛アダマンタイン》
レア度 ★★★★★★
説明 アダマンタインより非常に強固な金属。スキル【金剛】が付与されている。

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 まさかのスキル玉ではないただの金属にスキルがついていた。

 俺はそのままスキル玉のように使ってみるが、脳内ではいつもの声は聞こえず、スキルも発動することはなかった。

「とりあえず全部回収するか!」

 俺はスキル玉の【アイテムボックス】に全部詰めるといっぱいになっていた。

 俺自身も吸収で得たスキルのアイテムボックスを使うが、まだ空間が狭いため軽くて小さいものしか入らない。

 俺達は持っていけるだけ回収し終えると、都市ガイアスへ帰ることにした。

 今回も本当に命懸けの戦いだったが、自分が少しずつ強くなっているのを感じた良い経験だ。

 ただ一つだけ言いたいことがある。もう暗闇だけは行きたくないと切実に思った。