翌朝。
「樹生、いつまで寝てんの! 早く起きなさいっ」
 オレは母さんの一喝にたたき起こされた。
 んだよ、もう朝かよ。
 まったくもう、クソねみぃな。
「父さんは?」
「もう会社に出かけたわよ。樹生も早く朝ごはん食べちゃいなさい」
 マジで!? 父さん起きんのはえーな。同じ親子とは思えねーや。

 寝ぼけまなこで朝メシ。
 ねみぃから、味もボンヤリしてる。
「ちょっと、お兄ちゃん! それあたしのパン!」
 オレのとなりで妹の美波(みなみ)がキーキー騒いでる。
「るせーな、自分のモンだっていうなら名前くらい書いとけよ」
 モソモソッとロールパンを噛みしめて、コーヒーで流しこむ。
 眠気は全然ふっ飛ばねぇけど。
「樹生、あんたもう平日に天体観測に出かけるのはやめなさいよね。いつも夜遅くまで帰ってこないんだから」
 母さんがジロッとオレに視線を向ける。
「そんなんムリ。今度流星群があんだもん」
 休みの日まで待ってられっか。
「お兄ちゃんいいかげんにして。まわりからなんて呼ばれてるか知ってんの?」
「は? オレ、なんか有名なの?」
 美波は眉をつり上げて、
「『星バカ汐谷(しおたに)』よ! うちの学年でも広まってるんだから。汐谷のアニキ、夜になったらいつでもどこでもフラフラ星見てるって。もう、あたし恥ずかしくって……」
 と、両手で顔をおおった。
「星バカだぁ? 星見ることのどこが恥ずかしいってんだ。パンツ干してるベランダのぞいてるわけじゃねーのに」
「はいはい、ふたりとも、もうケンカしない! 早く学校いってらっしゃい」