鏡の中から見返すのは、疲れた顔をした自分だった。

 仕事に行かなきゃ。

 目の下の隈をファンデーションで隠し、真っ赤な口紅を塗った。

 そして、笑顔。いつだって格好いい自分でいられるように、情けない顔なんて見せない。

 ──そんな私を好きだと言ってくれた君は、もう傍にはいないけれど。

 少しだけ過ぎた日への懐古の念が胸を(よぎ)るも、それを振り払って私は今日も会社に向かった。

 ──まさか、その日の夜に、自分の人生があっさりと終ってしまうとも知らないで。