======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
渡伸也一曹・・・陸自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当の事務官。
草薙あきら・・・警視庁からのEITO出向。特別事務官。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
天童晃(ひかる)・・・EITO東京本部剣道顧問。EITO準隊員待遇。闘いに参加することも。
本郷隼人二尉・・・EITOシステム部。弥生の弟。EITO秘密基地勤務。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。時々、伝子から「クソババア」と言われる。
藤井康子・・・伝子の隣人。モールで料理教室をしている。EITO準隊員待遇。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。蘇我と結婚した逢坂栞も翻訳部同学年だった。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
鳥居真一郎・・・国賓館SP隊長。
橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。
中津敬一警部・・・警視庁特命刑事。
久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
久保田警部補・・・あつこの夫。以前、愛宕の相棒だった。
利根川徹・・・元テレビ局コメンテーター。今は、MCをしている、EITOの協力者。
市橋早苗総理・・・我が国初の女性総理。伝子は個人的にSPにつくこともある。
南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。
小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。
愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。
芦屋一美警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。
芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。
芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。
大波一郎・・・異種違憲党。政治に大波を起すと言っていたが、大したことが無かった為「さざ波さん」と揶揄された。第一線からは退いたが、離党も議員辞職もしていない。
山西あつこ・・・元参議院議長。
本庄虎之助・・・本庄病院院長。
本庄映子・・・本庄院長の娘。独立して、クリニックを開業している。
中山ひかる・・・以前、愛宕のお隣さんだった。謎解きが得意な大学生。伝子達の後輩。
青木新一・・・Linenを使いこなす大学生。友人の致傷事件の関係者。後に伝子達の協力者になる。
枝山事務官・・・警視庁プロファイリング担当事務官。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
=EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズ後方支援部隊である。=
==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

翌日。午前9時。EITO本部。会議室。
「朝イチで、天童さんから連絡があったよ。文面には、『さざ波一郎』、午前11時。とある。大波一郎の事だろうが、誘拐でもするのかな?今日は議事堂にも議員会館にも行かない日だそうだ。野口元総理のルートからも何とか助けて欲しい、と言って来た。実は、脅迫状が一昨日来ていたらしい。」
理事官の言葉に、「警護しろ、ということですか?草薙さん、今日、その時間にイベントは?」と、伝子は尋ねた。
「ありません、と言いたいところですが、ありすぎて特定しにくいですね。もう『夏休み』ですから。国会も閉会中ですし。」
「隊長。私が財前と仁礼を連れて行きましょう。」と、日向が言った。
「おねえさま。私も行きますわ。あつこ。留守をお願いね。」と、なぎさが言った。
「分かった。4人で取り敢えず行ってみろ。2人1組で行動。後の者は待機だ。理事官。これが仮に3つ目だとすると、4つ目がいつ襲って来るかもしれません。総子達も待機してくれ。」
「了解した。野口元総理には私から話しておこう。解散!」
午前10時半。大波邸。
外には警備員が数名立ち番していた。警察官はいない。応接室の前にも警備員がいた。
応接室。エマージェンシーガールズ姿の4人がいた。
「たった4人かね。国賓館にSPを頼んだが、断られた。野口さんと違って元総理じゃないからか知れないが・・・。」と、大波はふくれっ面で言った。
「そんなことはないでしょう。野口元総理のお陰でEITOのSPも来て下さったし。何か、作戦がおありなのでしょう?」と女秘書の松永みずほは言った。
「松永さんのおっしゃる通りです。まずは大波さんの命が大事ですから、大波さんの身辺警護を致します。我々は、いつも一団で行動している訳ではありません。例えばそうですね。大波さんが襲われている時または襲われた後、大波さんのご家族が誘拐もしくは危険な状態にあると判明した場合、別動隊が対処します。場合に寄っては、『闘争』も致します。」
「そうか。取り敢えずは、敵の出方を見る訳だね。あなた、お名前は?」「副隊長で結構です。」
そうこうしている内に、午前11時になった。松永はトイレに行ったまま、帰って来ない。「作戦A。」と、なぎさは日向に合図をした。
日向は、応接室を出て、警備員が倒れているのを確認し、トイレを確認した。誰もいない。
すると、どこからかOL風の女達が、日向と財前に向かって来た。電磁警棒だ。
2分もしない内に、2人は、10人のOLを倒した。
外に向かって走ると、警備員以外に30人のOLが家の内外に倒れていた。
急いで、応接室に戻ると、3人の賊がOL風の服の上に目出し帽を被り、大波に向けて拳銃を突きつけていた。
日向と財前は、なぎさと仁礼が対峙しているのを見て、2人の背後に隠れて、ブーメランを投げた。
咄嗟に避けたのを見た、なぎさと仁礼もブーメランを投げた。
狭い室内でブーメランは舞い、目出し帽を撥ねた。
顔が露わになった、松永が言った。「大波に拳銃が向いているのを忘れたのか?」
なぎさが言った。「何の為にブーメランを多用したのか、分からないのか?やはり、那珂国のマフィアは間抜けが多いようだな。」
「何?」松永はなぎさを見て、拳銃を見た。
仁礼と財前は、3人の脚にシュータを放った。
なぎさは、フリーズガンでフリーズ弾を、松永達の手首に撃った。
松永達は足首だけでなく、手首を麻痺して、拳銃を落した。
なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。
愛宕達警官隊がやってきて、のびている連中を逮捕連行した。
「副隊長。外のOLは?」「オクトパスね。恐れ入るわ。助っ人要らない案件なのに。」
「意外と律儀ですね。」「おねえさまなら、そういう奴らさ。」って言うわね。
愛宕は、なぎさの分析力に『姉妹愛』を感じた。
午後3時。EITO会議室。
なぎさ達が、おやつを兼ねた、襲い昼食を取っていると、理事官は言った。
「一佐達は食べながらでいい。大波氏を襲った奴らは、やはり4つの内の3つ目だった。秘書の松永みずほが自供した。違憲異種党がまだ、異種党だった頃かららしいから、かなり以前から潜入していたらしい。異種党の多くの議員は政権を取った時、所謂ハニトラで絡められた者が多いと聞くが、やはり大波もその1人だった。政権奪取したのに、また移民党が復権した為、用済みで放置されていたらしい。大波は、ハニトラにかかったにも関わらず、精力絶倫の為に、送り込まれた女達は、表向きは職員、実際は愛人にしていた。組織は逆に、迂闊に大波を暗殺しにくくなった。そこで、今回本国から依頼を受けた松永は、大波を巻き込んでEITOに仕掛けて来た。ダークレインボーとは別組織だから、諸君の実力を甘く見ていた。それと、一佐が睨んだ通り、オクトパスの配下は陰ながら助けていたようだ。何発かボディを叩いただけで気絶させている。以上だ。」
食べ終わった、なぎさは言った。「やっぱりカレーが一番ね。」
皆は笑った。
その日は、何事も無く終った。
翌日。午前9時。本庄病院。
火のない所から、煙が上った。放火である。動ける患者はすぐに屋外に退去し、転院可能な患者は、隣のビル駐車場から、池上病院と、他の救急病院に運ばれた。
病院から少し離れた所で、久保田管理官がマスコミに説明をしている。
TVのニュースで知った物部は、すぐに伝子に電話したが、出ない。何度かかけ直して、高遠が出た。
「ああ。副部長。大変なことです。今、伝子は出撃したそうです。MAITOが出撃したそうですから、鎮火は時間の問題ですが、元参議院議長の山西あつこ氏が人間ドックで健診の入院をしていたそうですが、今行方不明だそうです。」
「何だって?じゃ、誘拐か?そうか、偽救急車か。青木君にも捜索応援を頼め。不審な動きの救急車を探すんだ。」「了解しました。」
午前9時。EITO本部。司令室。
「と言う訳だ、大前君。恐らく火事は陽動だ。チーフが率いているチームが乗って来たオスプレイを、逃走中の救急車捜索に使ってもいいかね?」
「勿論です、理事官。総子。見つけ次第、伝子さんと連携取って行動。幸い、大きな事件不審な事件は大阪では今の所起こってない。」
「兄ちゃん、安心したわ。新婚ぼけしてへんかと思ってたけど。」「余計なお世話や。ちゃっちゃと出撃せんかい!」「了解。」
総子は、理事官に、にっこり笑って司令室を出て行った。総子は、走りながら、長波ホイッスルを吹いた。
「弥生。本庄病院から半径2キロ以内を旋回。不審な救急車または車両を特定。」オスプレイに到着し、シートベルトを締めながら、総子は指示を出した。
「了解。」
午前9時20分。司令室。
「理事官。天童さんから電話です。」渡が指示を仰いだので、理事官は「繋いでくれ。」と短く言った。
「理事官。ニュースを観て不思議に思ったので家の中を見回ったら、矢文を抜き取った後があります。先が変形しているので、簡単には抜けないんです。恐らくオクトパスからの警告の文章が書かれた矢文です。気づくのが遅くて申し訳ない。」
「いや、天童さんの責任ではない。」
「4番目のマフィアは、3番目と違って賢いようですね。オクトパスを出し抜くとは・・・。」と、夏目警視正は2人の会話を聞いて呟いた。
「誘拐だとすると、その内、何か要求してきますね、総理宛か、警察宛か、EITO宛に。」と、枝山事務官が言った。
枝山事務官は、警視庁のプロファイリング担当の事務官だ。
「白状しますが、4番目のマフィアの動きは読めなかった。プロファイラー失格ですね。」
「理事官。MAITOが現着したと連絡がありました。」と、河野事務官が言った。
「陽動だから、大きな火事は仕込んではいないだろうが、本庄病院が早く鎮火するのは有り難い。MAITOの消火弾は、前のより効果が大きいそうだ。
午前10時半。本庄病院の玄関外。
野次馬が、100メートル先で騒いでいる。愛宕達が野次馬整理をしている。
数分前。MAITOの新しい消火弾が落され、去って行った。消防は去って行った。
本庄院長は、じっと見守っている。事務員が院長に駆け寄り、「池上病院の転院収納は完了したそうです。」と言った。その後ろから、やって来た女性が言った。
「父さん、後片付け、手伝うわ。ウチは予約を調整して、休診にしてきた。」
「映子。済まんな。」「どさくさで誘拐されたって?ウチは陽動の為に利用された訳ね。尚子もカンカンだったわ。」
本庄映子は、暫く本庄病院で働いていたが、今は独立してクリニックを開業している。
尚子とは、弁護士をしている、本庄虎之助院長の姪、即ち、映子の従妹である。
本庄病院。玄関ロビー。
エマージェンシーガールズ姿の伝子に、物部が近づいた。
「隊長さん、サイン貰えませんか?」と言いながら近寄り、「近くの建物の近くで南原氏、文子さん、蘭ちゃんが野次馬を撮影している。青木君が、Linen仲間に不審な車の目撃情報を集めている。」と、小声で言った。
「済みません、規則でして。サインは出来ないんです。」と大声で言ってから、「了解した。」と、伝子は小声で物部に言った。
今度は、EITOガーディアンズの姿の筒井がやって来て、小声で報告をした。
「やはり乗り換えている。150メートル先の廃校後に、偽救急車が発見された。丁度その先に高速入り口がある。白バイ隊がその入り口から入って、追い越して行った車の中に不審な感じがした車が無かったか?とトラックドライバーに尋ねて回ったら、見つかった。トラックのドライブレコーダーで確認したところ、窓ガラスにスモークを貼った車が、スピードを加速しながら走っていた。黒いEVハイブリッド車だ。青木君のLinen仲間の情報とも一致する。大阪から来たオスプレイで捜索範囲を半径2キロに拡大して巡回捜査をしている。」
「了解した。我々は、当面、『後片付け』の応援だ。」「うむ。」と言って、筒井は去って行った。物部の肩をポンと叩いて。
午前11時。伝子のマンション。
物部からの連絡を聞いていた高遠は、「秘密基地からも本郷君が、マセラティで出動しましたよ、副部長。我々の人海戦術の見せ所ですね。」と言って笑った。
「でも、どうして分かったの?オクトパスが情報を渡したことを、そのマフィアは。」と、綾子が言うと。、「2重スパイよ、綾子さん。ねえ、高遠さん。」と藤井は言った。
「まあ、その可能性はなくは無いけど・・・。捕まえてから聞けばいいですね。」と、高遠は昼食の準備を始めた。
「あれ?おかしいな。あ!」「どうしたの、婿殿。」「僕としたことが・・・空だきしちゃったみたい。湯沸かしポット、壊れちゃった。」
「余ってるのがあるから、持って来るわ。」藤井が出て行った後、高遠は言った。
「とにかく早く終って欲しいな。伝子は体調が良くないんですよ、お義母さん。」
正午。
炊き込みご飯を食べていた3人は、TVのニュースを見て驚いた。
「元参議院議長の山西あつこ議員の誘拐は、総理官邸に届けられた手紙で明らかになりました。ここからは、総理官邸からのリモート記者会見を放送します。」
「全くの想定外の事件です。対テロ犯罪のエキスパートであるEITOによりますと、ダークレインボーとは別の組織だそうです。まだ、誘拐されたことが判明しただけで、犯人側からの要求はまだ出ていません。第2報で具体的な要求をするものと思われます。」と、市橋総理は言った。
TVを消して、「何を要求する積もりかしら?やっぱり身代金かな?」と綾子は言った。
「議員としてはイマイチだったけど、議長としては有能だったらしいわね。荻妙子程じゃなかったけど。」
「誰でも良かったんじゃないですかね、野党は揉めてるけど。今はそれどころじゃない。と、高遠は、珍しく憤慨し言った。
午後1時。EITO本部。会議室。
「正午に、矢文があったようだ。そして、すぐに抜き取られた。」と天童は言った。
「天童さんに矢文を撃った人間は分からないが、抜いた犯人は警視庁のデータにありました。臨時雇いかも知れませんね。」と筒井は切り出した。
「相馬一太。38歳。空き巣の前科が幾つもあります。前に抜き取った犯人と同一かそうかはまだ分かりませんが、広域捜査に切り替わりました。そして・・・。」
「0時半。また矢文があった。これです。」
伝子は天童から渡された紙片を読んだ。「『午後3時。靖国神社 第一鳥居前。鳥居が危ない。』重機が必要ですね。これは、墨やペイントのいたずらどころじゃない。議長誘拐も大事だが・・・。そうか。オクトパスは、議長の方は、簡単な問題だと思ったんだ。」
「我々には、行方をすぐに見付けるだろうと踏んだ。実際、突き止めたよ。葡萄館裏の空きビルだ。目立たない場所だ。本郷君が、念の為逃走車に追跡装置を着けて来たそうだが・・・。」
「すぐに、向かおう。なぎさ。EITOエンジェルスを連れていけ。」「了解しました。」
午後2時半。靖国神社。第一鳥居。
2台のショベルカーが、やって来て、鳥居の柱ごと押し倒そうとしていた。
観光客が、工事か何かと思い、撮影したりしている。
2台のホバーバイクがやって来た。EITOガーディアンズ姿の馬場、高木、青山、筒井だった。
馬場と高木、青山と筒井が、そのショベルカーの後ろに牽引ロープを巻き付けた。馬場と筒井は、ホバーバイクの自重を下げる為、降りた。
筒井は、長波ホイッスルを吹いた。
EITOのオスプレイ経由で、信号を受け取ったMAITOがやって来た。
ホバーバイクがショベルカーの後ろ方向から引くと同時に、MAITOの大きな爪が降りて来た。トングのような爪は鳥居の梁の部分を鷲づかみにして動かなくなった。
ショベルカーが前進不可能と知ったドライバーは、急発進でバックした。普通なら激突するところだが、高木と青山は文字通り宙に浮かせた。
ショベルカーのドライバーは、すぐに飛び降り、待ち構えていた馬場と高木が一本背負いで投げた。
観光客は拍手した。
怒声が走った。棍棒、鍬、鎌を持った、一見工事関係者のような一団が、辺り構わず暴れだした。ざっと50人か。どうやら工事関係者を装って入り込んでいたらしい。
観光客は逃げ惑った。観光客に混じって物部達は観光客を誘導した。
そこへ、伝子達エマージェンシーガールズが現れた。
「野蛮な奴らだ。ダークレインボーとはえらい違いだな。」伝子が言うと、どこからか現れた黒装束忍者のリーダーが言った。「それは、俺達を褒めてるのか?」
「鈍くないようだな。」と、伝子は笑った。
一瞬の間の後、エマージェンシーガールズとオクトパスの配下は、新参者のマフィア下っ端を片づけた。
「議長はどうした?」「別動隊が向かった。」「そうか。じゃ、後は任せる。」
黒装束忍者が去ると、伝子は長波ホイッスルを吹いた。
筒井達は、牽引ロープを解いていた。「俺は付近をパトロールしてからオスプレイに戻る。」そう報告した筒井に、伝子は頷いた。
中津警部、警察官姿のあつこと結城が警官隊を連れてやって来た。
警官隊が逮捕連行を始めると、「その鳥居の保全は?」「靖国神社提携の建設業者が間もなく来るわ、おねえさま。」と、あつこは報告した。
「ふうちゃんの方はどうかな?」と中津が言った。「ふうちゃん?」
あつこの問いに、「弟が、よく言ってんだ。時々一緒に仕事してたし。」と中津警部は言った。
「ああ。興信所繋がりね。」とあつこは納得した。
午後3時。葡萄館裏の空きビル。
反社の住みかになっているビルの一室のドアが開いた。
「遅いぞ。金は持って来たか?」中の男は言った。
「あ。忘れた。取って来るわ。」と入って来た、スーツ姿の女は出て行った。
異変を感じた男は部下を呼んで、一緒に追った。
その隙に、なぎさは、隣の部屋に忍び込んだ。
空きビルの外。女は意外に早い。陸上競技でもやっていたのか?と反社の男が考えたことは正解だった。
芦屋二美は、陸自に入る前、陸上選手だった。
ビルから廃校に出てきたところで、女、芦屋二美は止まった。
「ここよ。」男達は驚いて止まった。
「ここよ。」国旗掲揚台の上にいた女がいた。そっくりだ。
「ここよ。」朝礼台の上から声がしたが、またまた、そっくりな女がいた。
男達は三方に別れて、銃を撃ちながら突進した。
EITOエンジェルスが現れ、シュータとフリーズガンの攻撃で、20人の敵を数分で倒した。
「総子。私たちって、罪な女?」三美が言った。
「うん。でも、3人とも大好きやで。」と総子は笑った。
なぎさが、議長を連れて来た。
「どういうことなの?」と尋ねる議長に、「総理がEITOに依頼したんです。大事な政治家の命を守って欲しい、と。」と、なぎさは言った。
「どうもありがとう。」と、議長は言った。
総子は、長波ホイッスルを吹いた。
数分で、愛宕と橋爪警部補が警官隊を連れてやって来た。
「これがEITOエンジェルスのユニフォームですか。エマージェンシーガールズとは一味違うなあ。」と、橋爪警部補は感心した。
「変な感心の仕方ですね。言っておきますよ、カッコ良かったって。」と、愛宕はにっこり笑った。
午後5時。EITO本部。オスプレイのカタパルト。
「名残り惜しいが、やはり事件は待ってくれないな、君たちを。大前君から連絡があったよ。急いで帰ってくれ。本郷弥生君、本郷隼人君とはなかなかゆっくり話ができないな。」
「大ジョブですよ、理事官。私は強い姉が自慢です。」と、本郷隼人が言った。
「大丈夫、大丈夫、大丈夫。昔、私が隼人に教えた、魔法の呪文です。」と、本郷弥生は言った。
「効き目あるのかね?」「大丈夫!!」と2人は叫んだ。
皆は大笑いした。
―完―