＝＝＝＝＝＝＝＝ この物語はあくまでもフィクションです ＝＝＝＝＝＝＝＝＝
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字（高遠）学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬（橘）なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」と呼ばれている。
久保田（渡辺）あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
愛宕（白藤）みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
藤井康子・・・伝子マンションの隣に住む。料理教室経営者。
みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。
金森和子二曹・・・空自からのEITO出向。
増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向さやか（ひなたさやか）一佐・・空自からのEITO出向。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音（しずね）・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
江南（えなみ）美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目警視正・・・EITO副司令官。
愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。警部。丸髷警察署に普段は勤務している。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。伝子と一時付き合っていた。警視庁副総監直属の警部。EITOに出向。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進んでいたが、現在は建築事務所非正規社員。
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==
午前11時。EITO用のPCが起動した。
「敵が動きを見せた。連日誘拐が多発しているから、大文字君の提唱した囮作戦は成功した。ブラックスニーカーのNew tubeチャンネルに確認した時に、自分は『姑息な作戦は嫌いだ、チンピラのやることなんか知らん。』というのは、本当だろう。」
理事官は言った。「何人誘拐したか、どれだけの金を強請る積もりかは知らないが、『えだは会』の仕業であることは間違いない。金森隊員の靴に仕込んであった、追跡用ガラケーのお陰で、誘拐監禁場所は突き止めた。後は、じれったいが、誘拐された人の身内からの通報待ちだ。」
高遠は言った。「理事官、誘拐された場合、警察に連絡することを躊躇うことが多いんですよね。」「そうなんだよ、高遠君。誘拐があったらしいと知ったのは、誘拐された本人の友人などが目撃者だった場合だ。本人の家族に問い合わせると、知らない、と言う。張り込みは、それぞれ付けてあるけれどね。」
夏目警視正が、横から顔を出して言った。「こういう場合、被害者の家族は、空想の方を優先してしまいがちなんですよ。警察に知らせたばっかりに惨殺されてしまう、とか。そういうことも起こりうるけれど、助ける手段・選択肢が狭められてしまう。特に、お金持ちの場合、金払えばすぐに解決出来ると思い込む。マスゴミが絡むと、碌なことにはならないし。」
「理事官。誘拐された人達の共通点は？」「ない。いや、分からない、というべきか。ただ、間違い無く成人男性は誘拐されない。子供もだ。中津興信所にも夏目リサーチにも調べさせたが、女性達の特徴、住所、仕事、友人関係に共通点はない。ああ、誘拐された場所が大田区。それだけだ。」
「それで、ウーマン銭湯ですか。」「それで、ウーマン銭湯の近くに防犯カメラを増やし、早乙女元隊員にも協力して貰った。」
「多分、えだは会なんだろうけど、ブラックスニーカーは、あのNew tube映像を観て、どう思うでしょうね？」
「苦々しく思っているだろうね。切り札に使えればいいが。」
河野事務官が叫んだ。「理事官。身代金要求が、警視総監宛に届きました。一般公開している『相談窓口』のメールです。」
「画面に出してくれ。」
画面に出たメールの文面には、総額2億円と書いてある。
「個別だと回収出来ない場合がある、と考えたか。取引相手には警察代表者とあるな。」
「おねえさま。私が行きます。」と、あつこが言った。
午後3時。EITO本部。会議室。
「20人だから、2億円・・・。1人1000万円は多いよな。」渡がポツンと独り言を言った。
「日本人は金持ち。そんな発想かも知れないし、警察が用意すれば、不足分を補えるとでも考えたのかもな。」隣の草薙が言った。
「身代金の運搬を警察にやらせるとしても、家族には・・。」と馬越が言った。
「勿論、知らせるだろうさ。金森隊員達には、偽の身分証を持たせ、家族ではなく、会社の方が確実と答えるように言ってある。その会社の電話は、芦屋財閥の事務代行会社に行く。後は、芦屋総帥がやってくれる。どうした、新町。トイレか？」
「あ。はい。」「行ってこい。」理事官に言われて、あかりはトイレに入ったものの、どうしていいか、途方に暮れた。
「増田と大町は、いざという時の編成を考えてくれ。」と伝子が言うと、「戦闘になるんでしょうか、隊長。」と日向は言った。
「EITOが絡んでくる事は百も承知だろう。だから、自信の持てる人数や攻撃力を駆使してくるに違いない。だから、『見せ金』も本物を用意しておくように、あつこに言ってある。」
その時。マルチディスプレイに、大蔵が映った。「理事官。New tubeにブラックスニーカーがアップロードしました。切り替えます。」
《
大変だねえ。2億円と500人かあ。つまんない取引だなあ。今度の作戦は、近日中に公開するよ。約束だ。
》
「つまり、500人行くから気をつけろ、と？味方してくれるのかな？」と伊知地が言うと、「目の上のたんこぶだから、お前らでやり合えば助かるって意味よ。」と田坂が言った。
「増田、大町。今回は田坂達に弓矢の後方支援を任せよう。」と伝子は言った。
「青山、高木、本郷もホバーバイク隊として待機。総力戦だ。」伝子が言うと、3人は頷いた。
午後5時。秩父宮ラグビー場。
少し離れてはいたが、国会議事堂や国会図書館東京本館の厳重警備を警視庁に、そして総理に伝子は依頼した。
パトカーが到着した。女性警察官姿のあつこ、結城、あかりが大きなジュラルミンケースを持って現れた。
ラグビー場のどこから、スピーカーを通じて男の声が聞こえた。「用意したケージに入れろ！」3人は、何故か用意されていた、バレーボールのケージにジュラルミンケースを入れた。
同じ頃。EITO司令室。
モニターを見ていた、伝子は金森のイヤリングに指令を送った。
エマージェンシーガールズのユニフォームと共に身に着けるイヤリングは、実は受信専用の通信器具になっている。
「今だ、金森。脱出しろ！」
金森達は、既に捕縛されていたロープを切っていた。ドアを明けて、裏門に向かった。
敵の見張りが倒れていた。いや、元見張りか。裏門に続く道を筒井と夏目がリードした。
外には、愛宕が運転してきたマイクロバスが止まっていた。
「貴方たちは、警官の誘導に従って、ご自宅に帰って下さい。」と、夏目が言った。
「お前達は。100メートル先に駐まっているオスプレイで着替えろ！」と、筒井は言った。
ラグビー場。犯人からの指示で、あつこ達は、パトカーで待避した。
ヘリコプターが現れた。どこからか現れた集団の数人が、ヘリコプターから降ろされたロープをケージに括り付けた。
括り付けた瞬間、どこからか飛んできた矢でロープが切れてしまった。
ガルウイングを明けた、マセラティが静かに駐まった。田坂、安藤、浜田が弓矢をつがえ、待ち構えている。
ヘリコプターは、何処かへ去って行った。
集団は、ケージを諦め、全員でマセラティに向かって来た。
集団に向かって、方々からシューターが跳んできた。シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。
「こっちにもいるぞ！」と言ったのは日向だった。
集団は分散して、ほとんどが、増田と共に走ってきたエマージェンシーガールズに向かって行った。
「こっちもいるぞ！」言ったのは、なぎさだった。
集団はまた分散して、大町と共に走って来たエマージェンシーガールズに向かって行った。
また違う方向から、何やら跳んできた。敵はまた混乱した。
今度は、ブーメランだ。金森は、後輩の小坂、下條と共にブーメランを一心不乱に投げ続けた。
敵の何人かは、途中から銃や機関銃を持ち出した。この者達は、ガスマスクをしている。
今度は、違う方向から、ホバーバイク隊がやって来た。
ホバーバイクとは、『宙に浮くバイク』のことである。本郷は、ホバーバイクに自身の脚を固定し、きりもみ状に飛んで、水流ガンを打ち続けた。水流ガンとは、圧縮した水を打ち出す銃であり、空気に触れるとグミ状の水に変化する。
高木は、メダルバズーカを撃った。単にメダルを乱射するだけで、弾はあまり入っていない。後から来た青山と交代して、高木はオスプレイに帰って行った。
青山は、彼の為に開発された、スペシャルフルーレで、敵の中核を崩していった。
その時、エマージェンシーガールズ姿に着替えて戻って来たあつこ、結城、あかりが馬に乗ってやって来た。あつこはブーメランを、あかりと結城ははシューターを放った。
裏門から、金森達が伝導スケーターで救援に来た。金森は、葉月と越後の肩に乗り、2つのブーメランを操り、敵を翻弄した。
同じ頃。EITO司令室。
モニターを見ていた伝子は窓から逃げようとするリーダーを発見した。
「リーダー発見！筒井、オスプレイで追いかけてくれ！南方向だ。ジョーンズ、オスプレイ発進！！」
午後6時半。青山公園。
へたり込んでいる、集団のリーダーに筒井は特殊なスマホを差し出し、言った。
「ウチのリーダーの話を聞いてくれ。」と、筒井は言った。
画面の伝子が言った。「お前らはブラックスニーカーじゃないな。えだは会か？」
「だとしたら、どうなんだ？」「どうもしない。犯人Aじゃ、かっこ悪いと思ってな。」
午後7時半。伝子のマンション。
EITOメンバーとDDメンバーの懇親会が開かれていた。
「会の前に、確認することがある。金森が誘拐された、と秘密漏洩したものがいる。なぎさ、どう思う？」「「懲罰モノですわ、おねえさま。」「あつこは？」「同じく。」
「準備！！」あつこ、みちる、なぎさは、さっさと奥の部屋の準備をし、高遠は「お手当セット」を用意した。
伝子は、あかりを奥の部屋に連れて行き、なぎさは高遠からセットを受け取ると、奥の部屋に消えた。
編集長と藤井が入って来た。
「なあに、この不穏な雰囲気は？」と編集長が言うと、「誰か何かやらかした？」と藤井が聞き、福本と依田と高遠が無言で頷いた。
「ごちそう並んでいることだし、暫く待ちましょうか？」「そうね、それがいいわ。」
編集長は藤井に同意した。
新人のメンバーは、クビをすくめて萎縮していた。
宴は深夜まで続いた。
―完―
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字（高遠）学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬（橘）なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」と呼ばれている。
久保田（渡辺）あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
愛宕（白藤）みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
藤井康子・・・伝子マンションの隣に住む。料理教室経営者。
みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。
金森和子二曹・・・空自からのEITO出向。
増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向さやか（ひなたさやか）一佐・・空自からのEITO出向。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音（しずね）・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
江南（えなみ）美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目警視正・・・EITO副司令官。
愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。警部。丸髷警察署に普段は勤務している。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。伝子と一時付き合っていた。警視庁副総監直属の警部。EITOに出向。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進んでいたが、現在は建築事務所非正規社員。
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==
午前11時。EITO用のPCが起動した。
「敵が動きを見せた。連日誘拐が多発しているから、大文字君の提唱した囮作戦は成功した。ブラックスニーカーのNew tubeチャンネルに確認した時に、自分は『姑息な作戦は嫌いだ、チンピラのやることなんか知らん。』というのは、本当だろう。」
理事官は言った。「何人誘拐したか、どれだけの金を強請る積もりかは知らないが、『えだは会』の仕業であることは間違いない。金森隊員の靴に仕込んであった、追跡用ガラケーのお陰で、誘拐監禁場所は突き止めた。後は、じれったいが、誘拐された人の身内からの通報待ちだ。」
高遠は言った。「理事官、誘拐された場合、警察に連絡することを躊躇うことが多いんですよね。」「そうなんだよ、高遠君。誘拐があったらしいと知ったのは、誘拐された本人の友人などが目撃者だった場合だ。本人の家族に問い合わせると、知らない、と言う。張り込みは、それぞれ付けてあるけれどね。」
夏目警視正が、横から顔を出して言った。「こういう場合、被害者の家族は、空想の方を優先してしまいがちなんですよ。警察に知らせたばっかりに惨殺されてしまう、とか。そういうことも起こりうるけれど、助ける手段・選択肢が狭められてしまう。特に、お金持ちの場合、金払えばすぐに解決出来ると思い込む。マスゴミが絡むと、碌なことにはならないし。」
「理事官。誘拐された人達の共通点は？」「ない。いや、分からない、というべきか。ただ、間違い無く成人男性は誘拐されない。子供もだ。中津興信所にも夏目リサーチにも調べさせたが、女性達の特徴、住所、仕事、友人関係に共通点はない。ああ、誘拐された場所が大田区。それだけだ。」
「それで、ウーマン銭湯ですか。」「それで、ウーマン銭湯の近くに防犯カメラを増やし、早乙女元隊員にも協力して貰った。」
「多分、えだは会なんだろうけど、ブラックスニーカーは、あのNew tube映像を観て、どう思うでしょうね？」
「苦々しく思っているだろうね。切り札に使えればいいが。」
河野事務官が叫んだ。「理事官。身代金要求が、警視総監宛に届きました。一般公開している『相談窓口』のメールです。」
「画面に出してくれ。」
画面に出たメールの文面には、総額2億円と書いてある。
「個別だと回収出来ない場合がある、と考えたか。取引相手には警察代表者とあるな。」
「おねえさま。私が行きます。」と、あつこが言った。
午後3時。EITO本部。会議室。
「20人だから、2億円・・・。1人1000万円は多いよな。」渡がポツンと独り言を言った。
「日本人は金持ち。そんな発想かも知れないし、警察が用意すれば、不足分を補えるとでも考えたのかもな。」隣の草薙が言った。
「身代金の運搬を警察にやらせるとしても、家族には・・。」と馬越が言った。
「勿論、知らせるだろうさ。金森隊員達には、偽の身分証を持たせ、家族ではなく、会社の方が確実と答えるように言ってある。その会社の電話は、芦屋財閥の事務代行会社に行く。後は、芦屋総帥がやってくれる。どうした、新町。トイレか？」
「あ。はい。」「行ってこい。」理事官に言われて、あかりはトイレに入ったものの、どうしていいか、途方に暮れた。
「増田と大町は、いざという時の編成を考えてくれ。」と伝子が言うと、「戦闘になるんでしょうか、隊長。」と日向は言った。
「EITOが絡んでくる事は百も承知だろう。だから、自信の持てる人数や攻撃力を駆使してくるに違いない。だから、『見せ金』も本物を用意しておくように、あつこに言ってある。」
その時。マルチディスプレイに、大蔵が映った。「理事官。New tubeにブラックスニーカーがアップロードしました。切り替えます。」
《
大変だねえ。2億円と500人かあ。つまんない取引だなあ。今度の作戦は、近日中に公開するよ。約束だ。
》
「つまり、500人行くから気をつけろ、と？味方してくれるのかな？」と伊知地が言うと、「目の上のたんこぶだから、お前らでやり合えば助かるって意味よ。」と田坂が言った。
「増田、大町。今回は田坂達に弓矢の後方支援を任せよう。」と伝子は言った。
「青山、高木、本郷もホバーバイク隊として待機。総力戦だ。」伝子が言うと、3人は頷いた。
午後5時。秩父宮ラグビー場。
少し離れてはいたが、国会議事堂や国会図書館東京本館の厳重警備を警視庁に、そして総理に伝子は依頼した。
パトカーが到着した。女性警察官姿のあつこ、結城、あかりが大きなジュラルミンケースを持って現れた。
ラグビー場のどこから、スピーカーを通じて男の声が聞こえた。「用意したケージに入れろ！」3人は、何故か用意されていた、バレーボールのケージにジュラルミンケースを入れた。
同じ頃。EITO司令室。
モニターを見ていた、伝子は金森のイヤリングに指令を送った。
エマージェンシーガールズのユニフォームと共に身に着けるイヤリングは、実は受信専用の通信器具になっている。
「今だ、金森。脱出しろ！」
金森達は、既に捕縛されていたロープを切っていた。ドアを明けて、裏門に向かった。
敵の見張りが倒れていた。いや、元見張りか。裏門に続く道を筒井と夏目がリードした。
外には、愛宕が運転してきたマイクロバスが止まっていた。
「貴方たちは、警官の誘導に従って、ご自宅に帰って下さい。」と、夏目が言った。
「お前達は。100メートル先に駐まっているオスプレイで着替えろ！」と、筒井は言った。
ラグビー場。犯人からの指示で、あつこ達は、パトカーで待避した。
ヘリコプターが現れた。どこからか現れた集団の数人が、ヘリコプターから降ろされたロープをケージに括り付けた。
括り付けた瞬間、どこからか飛んできた矢でロープが切れてしまった。
ガルウイングを明けた、マセラティが静かに駐まった。田坂、安藤、浜田が弓矢をつがえ、待ち構えている。
ヘリコプターは、何処かへ去って行った。
集団は、ケージを諦め、全員でマセラティに向かって来た。
集団に向かって、方々からシューターが跳んできた。シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。
「こっちにもいるぞ！」と言ったのは日向だった。
集団は分散して、ほとんどが、増田と共に走ってきたエマージェンシーガールズに向かって行った。
「こっちもいるぞ！」言ったのは、なぎさだった。
集団はまた分散して、大町と共に走って来たエマージェンシーガールズに向かって行った。
また違う方向から、何やら跳んできた。敵はまた混乱した。
今度は、ブーメランだ。金森は、後輩の小坂、下條と共にブーメランを一心不乱に投げ続けた。
敵の何人かは、途中から銃や機関銃を持ち出した。この者達は、ガスマスクをしている。
今度は、違う方向から、ホバーバイク隊がやって来た。
ホバーバイクとは、『宙に浮くバイク』のことである。本郷は、ホバーバイクに自身の脚を固定し、きりもみ状に飛んで、水流ガンを打ち続けた。水流ガンとは、圧縮した水を打ち出す銃であり、空気に触れるとグミ状の水に変化する。
高木は、メダルバズーカを撃った。単にメダルを乱射するだけで、弾はあまり入っていない。後から来た青山と交代して、高木はオスプレイに帰って行った。
青山は、彼の為に開発された、スペシャルフルーレで、敵の中核を崩していった。
その時、エマージェンシーガールズ姿に着替えて戻って来たあつこ、結城、あかりが馬に乗ってやって来た。あつこはブーメランを、あかりと結城ははシューターを放った。
裏門から、金森達が伝導スケーターで救援に来た。金森は、葉月と越後の肩に乗り、2つのブーメランを操り、敵を翻弄した。
同じ頃。EITO司令室。
モニターを見ていた伝子は窓から逃げようとするリーダーを発見した。
「リーダー発見！筒井、オスプレイで追いかけてくれ！南方向だ。ジョーンズ、オスプレイ発進！！」
午後6時半。青山公園。
へたり込んでいる、集団のリーダーに筒井は特殊なスマホを差し出し、言った。
「ウチのリーダーの話を聞いてくれ。」と、筒井は言った。
画面の伝子が言った。「お前らはブラックスニーカーじゃないな。えだは会か？」
「だとしたら、どうなんだ？」「どうもしない。犯人Aじゃ、かっこ悪いと思ってな。」
午後7時半。伝子のマンション。
EITOメンバーとDDメンバーの懇親会が開かれていた。
「会の前に、確認することがある。金森が誘拐された、と秘密漏洩したものがいる。なぎさ、どう思う？」「「懲罰モノですわ、おねえさま。」「あつこは？」「同じく。」
「準備！！」あつこ、みちる、なぎさは、さっさと奥の部屋の準備をし、高遠は「お手当セット」を用意した。
伝子は、あかりを奥の部屋に連れて行き、なぎさは高遠からセットを受け取ると、奥の部屋に消えた。
編集長と藤井が入って来た。
「なあに、この不穏な雰囲気は？」と編集長が言うと、「誰か何かやらかした？」と藤井が聞き、福本と依田と高遠が無言で頷いた。
「ごちそう並んでいることだし、暫く待ちましょうか？」「そうね、それがいいわ。」
編集長は藤井に同意した。
新人のメンバーは、クビをすくめて萎縮していた。
宴は深夜まで続いた。
―完―
