「もうこの国でも魔法が使えるのはごく一部の魔術師のみだ。皆は魔法の恩恵を忘れないよう、そしてこの国のはじまりを忘れないようにとできた祭が『コーデリア国魔法祭』だ」

 ディアナも確かそんなこと言ってたな。
 魔法ってこの国で大事なことなんだ。
 じゃあ、聖女は?
 聖女も特別な存在? でも私はなんにも魔法も使えない。
 クリシュト国で聖女様って呼ばれたけど、いまだに私は自分の力がわからない。
 私はホントに聖女で特別な存在なの?

 考え込む私の頭にポンと手が置かれる。

「レオ様?」
「昔、王宮を抜け出して一緒に祭に行った子がいた。そして……」

 レオは言わなくていいことをいったように口元をぎゅっと結びながら立ち上がる。

「いや、とにかく、お前は特別だよ。力が今はなんなのかわからなくても」
「レオ様……」

 クレープを急いで食べるように私に促すと、また手を取って屋台の方に連れて行ってくれる。
 ああ、なんかこの人は口は悪いけど優しい人なんだな。
 感覚的だけどそんな感じがする。
 ほら、こうやって屋台にある自分の国の名産とか珍しいものとかいろいろ説明してくれる。