アルベルトは隣国コーデリア国へ密偵を送り、引き続き情勢の調査をおこなっていた。

「ユリエ様が?!」
「はい、この国にいます」
「まさか誘拐か?」
「可能性はあります。しかし……」

 状況を報告する密偵は口ごもって慎重に報告を続ける。

「どうやら第一王子のもとにいるようで」
「第一王子というと、レオ・シェベスタか」
「はい」
「なぜその方のところに……」
「少し様子を探ってみます」
「ああ、頼んだ」

 アルベルトは早馬でユリウスに「ユリエが隣国にいること」と「誘拐された可能性がある」ことを伝えた。

「無事でいてください、ユリエ様……」



◇◆◇



 クリシュト国では聖女様──ユリエがいなくなったことによって王宮内は大騒ぎとなっていた。

「アルベルトっ! ユリエは?!」
「話しますから落ち着いてください」
「あ、ああ……」

 ソファに浅く腰をかけてアルベルトに言われたように、落ち着かせようとする。
 目を一度閉じてゆっくりと呼吸したあと、目を開いてもう一度アルベルトを見た。

「報告を頼む」