私はいつも通りイレナに外出の支度を手伝ってもらうと、二人で馬車に乗って街に出た。



◇◆◇



「はあ~! やっぱりこの街の雰囲気好き!」
「そうですか、気に入っていただけて何よりです」

 イレナの淡いピンクの髪は日の光を浴びて艶めかしく輝く。
 そんな彼女の薄いブラウンの瞳はどこか私とも似ていて、親近感がわいて安心する。

「ユリエ様、あまり離れないでくださいね」
「わかってる!」

 私は久々の街の空気に酔いしれていた。
 だからかもしれない、あまりにもこの時の私は無防備だった。

「ねえ、イレナ! この髪飾りって……──っ!!!!」

 私は突然後ろから口元に布を当てられて、身体を拘束される。
 声にならない声がイレナと叫ぶが、その声は届かない。

 何これ、何この変な匂い……え? 視力悪くなった? イレナの姿が……見えな……い。

 私はそのまま力が抜けて意識を手放した──


 目が覚めた時、私はベッドにいた。
 夢? 私寝ちゃってたの?
 でも、そのベッドの香りがいつもと違うことに気づき、自分に何が起こっているのかわからなかった。


「やっと目が覚めたか」