ここは王宮の裏庭のさらに奥の一角で聖樹と呼ばれる立派な木が立っている場所だった。
 そこにはよく元王妃である母と行っていた思い出の場所であり、私は何かあるとここに来て心を落ち着かせた。
 すると、そこになんと彼女が現れた。

「リーディア?」
「ユリウス様っ!」

 彼女は薄い格好で現れた。
 ああ、どうしてあなたはいつも私の気持ちをこんなにも熱くするのだろうか。

「寒い中どうしたんですか、こんなところで」
「いえ、その。この木を見ていると懐かしくなって……」

 この木が懐かしいとは、なんと不思議な縁というか、気が合うのでしょうか。

「ここは私のお気に入りの場所で、この木を見るとなんだか落ち着くのです」

 私はそっと目を閉じて聖樹に触れました。

「この木は『聖樹』と呼ばれる王家の宝の一つです。初代の聖女が植えた神々しい木で、名前を“サクラ”というそうです」
「えっ?」
「サクラはこの国でよくある木ですか?」
「いいえ、この国どころか、この世界には他にない唯一無二の木らしいです」
「──っ!」
「その“サクラ”はもしかして春に淡いピンクの小さな花を咲かせますか?」